久しぶりに「憲政の常道」の蹂躙

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 鳩山由紀夫総理、小沢代表に「検察と思う存分戦ってください。」と激励したのは、党代表としての発言であって、総理としての発言ではない、と官房長官が弁明。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100118-00000514-san-pol

 平野官房長官、「憲政の常道」をご存知か。と言いつつ情けなくなった。
 では「幹事長」の英語と中国語でも聞きましょうか。
「a chief secretary」とか「秘書長」である。つまり、党代表の代行である。

 与党の代表は、総理の仕事が多忙すぎるので(新聞の首相動向欄を見てください。分刻みです。だから小沢さんはなりたがりません)、党代表の仕事は幹事長が代行するのである。

 だから、今の自民党で谷垣総裁と大島幹事長の仕事分担がよくわからなく、なっていないか。
 相変わらず立ち直る気配ゼロだが。
 これでは良くわからないので、昔の話で言うと、河野洋平自民党総裁と森喜朗幹事長が、お互いに色々なことをやって権限分割が大変だ、という話があった。それまでの歴代自民党総裁は即総理だったので、野党総裁など経験したことがなかったので。

 ではいよいよ本題。なぜ与党幹事長は与党代表(総裁)の代行をするのか。
 与党代表と総理は分離してはならないからである。
 立場を使い分けられては困る、同一人格の選挙で選ばれた政治家が国家に責任を持つ。政府を構成する多数党の運営などは総理の腹心が行えばよい。与党幹事長に対して威厳を示す、そんなものは一国の総理になる前提である。これが英国流憲政論である。

 戦前の日本はどうだったか。
 政友会の原敬、憲政会の加藤高明、民政党の濱口雄幸は自分で政党を創立し、野党を経験した後に総理を勝ち取っているので、与党内での威厳は絶対である。
 田中義一も意外と弱くない。ちょっと難しい話になるが、いずれまじめに書きたいと思っているのが、「田中義一内閣と東條英機内閣、どちらが強かったか(弱かったか)」という比較である。

 高橋是清、若槻禮次郎、犬養毅は弱い総裁と言われたが、それでも誰かの傀儡になるなどということはなかった。
 高橋は党の過半数に脱党されながらも、爵位すべてを返上して捨て身で衆議院選挙に立候補し、野党から与党に返り咲いている。
 犬養も、三大派閥の均衡の上に立ちながら、勝ち目がないと思われながらも衆議院解散に打って出て、少数与党から絶対多数を獲得している。
 若槻は、、、ノイローゼでした。(笑えない・・・)

 英国も戦前の日本も、与党を掌握できる政治家が総理大臣になる、これが大前提である。
 総理大臣は、陛下に代わり、国務に責任を持つ立場である。
 与党代表が幹事長に「検察と戦ってください」などと言うのは、検察への指揮権発動をちらつかせて検察を牽制しているという意味なのである。総理大臣は、検察の捜査に関して介入できる、何の理由を説明することなく国会議員への起訴を止めることができるのである。

 鳩山由紀夫さん、貴方は内閣総理大臣です。衆議院の総選挙により第一党の地位を与えられた
民主党の代表だから今の地位にあるのです。二つの地位は使い分けることはできないのです。

 こういう時に昔の日本人は良いことを言った。

 憲政の常道の蹂躙だ!