財務省の勝利確定

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国会閉会間際、突如として政局が緊迫してきた。

安倍首相が「消費増税の延期」を提言したら、麻生財務大臣と谷垣幹事長が反対。

「延期するなら解散しろ」とまで麻生は言及。公明党も静観の構え。

さて、政府と党を預かる麻生&谷垣と公明党に挟撃された格好の安倍首相だが、

果たしてここを乗り切れるか。

実は、「延期」を言い出している時点で、財務省は戦略的に勝利している。

経済学的には増税をしてはいけないのは子供でも分かる理屈で、むしろ減税が必要なくらい。

ところが「延期」を言い出した時点で、安倍首相(つまり日本国民)に戦略的に勝ちはない。

さらに以下の理由で、財務省の岡本官房長あたりは笑い転げているのではないかと推測する。

一、財務省人事に大幅な介入がなされなかった。

佐藤主税局長か福田主計局長かで最後までもめたが、「財務省ダービー」で指摘したような介入はされない。

二、消費増税の「延期」は許容範囲。

無期限延期や減税ではない。よって、財務省の増税真理教の教義は守られている。

三、増税法が憲法に?!

実は形式論では、麻生の「公約変更には解散が必要」は正論。形式論では。

その形式論に何の意味があるのか知らないが。むしろ害だが、安倍首相がやってしまったものだからタチが悪い。

 

文明国の憲法には、「代表なければ課税なし」の原則がある。

ところが、一昨年の衆議院選挙で「増税延期したいので解散」と真逆なことをやってしまった。

結果、増税が常道で、それを延期したければ一々解散総選挙をしなければならないという先例を作ってしまった。

同じことを短期間で二回もやれば、「増税延期したければ解散」が憲法習律と化してしまう。

一々解散しなければ施行を延期できない法律をどうやって変えるのか。無理だ。これでは憲法と同じだ。

もし「増税延期のための解散」をすれば、増税法は憲法附属法と化すだろう。

これが、財務省が増税「延期」ならば許容範囲の理由だ。

四、公明党との関係とその後の政権運営

一昨年、野党第一党の海江田民主党党首が増税延期に賛成を言い出した時点で、

解散総選挙をすべきではないと、私はあらゆる媒体で言っておいた。

解散風を吹かせることと本当に解散することは別だからだ。

ところが、やってしまった。公明党に「秋に増税延期の解散をする」と事前に伝えていたからだ。

さて、今回。公明党の反対を押し切って解散を断行すれば、立派だと思う。

(そんな大それたことができるなら、こうなる前に何とかしろよと言いたいが)

その際、大義名分は「延期」ではなく、「減税」にすれば、憲法改正も見えてくる。

ただ、「延期」で安倍首相が戦って勝ち抜いたところで、日本経済の死刑執行猶予が二年半延びるだけだ。

ついでにインフレターゲットの効果も減殺される。

政治的には、政府の要の麻生財務大臣、党を預かる谷垣幹事長、そして公明党を敵に回し、

どういう政権運営をするのか。それができるなら、本当にもっと何とかしてほしいことがいっぱいあったのだが。

海部俊樹のように三日で腰砕けになるか、三木武夫のように驚異の粘り腰を見せるか。

ここ数日、見守りたい。

結論は、序列を乱す人事介入と減税がない限り、財務省の勝利は確定。