日本の金融政策を決めるのは、日銀の金融政策決定会合。
総裁と2人の副総裁と6人の委員の9人で決める。
任期は5年で裁判官並みの身分保障。
5年に1度の極めて重要な人事。
普段なら与党多数でシャンシャンと採決して終わりだけれども、今はハングパーラメント(絶対多数党不在議会)。
過去も、ねじれ国会で日銀人事が政権交代につながったこともあるほど、重要。民主党は総裁空白1か月に追い込んで政権を奪取したし、安倍元首相の返り咲きも日銀委員人事の否決から始まった。もちろん、委員は空白に。
民意は、「自民もイヤ、立憲はもっとイヤ」で、国民民主党にキャスティングボートを与えた。そして「景気が悪くて税と社会保障に耐えられないから減税してくれ」との民意を背負って、国民民主党は「103万の壁」の攻防を続けている。
さて、国民民主党が総選挙前から最優先課題としてきた103万の壁を178万に引き上げるのに、「議論もしないで日銀人事に同意」が良い方向につながるのか。
先日も国民民主党の浅野哲議員の質疑に石破首相は「税収増の還元を許すような状況にない」とケンモホロロ。そもそも首相は、今が税を取りすぎたと思っていないよう。
とても簡単に178万円の満額回答になるとは思えない。これまでの議論の経緯、特に国民民主党の情報公開に依存すると、自民党は178万円を切って良い科学的根拠を出していない。それなのに、非科学的な根拠で値切ろうとしているようにしか見えない。また、自民党の発信からも、178万より下の額で良い、何ら科学的な根拠も見いだせない。
その直後に、この人事の提示。政府案の小枝淳子早稲田大学教授は、かねてから金融緩和による景気回復に懐疑的な言論、学術的発信を続けてきた人。無条件で通して良い人事ではない。
「いきなり否決」は大人げないけれども、所信聴取は当然。そもそも、衆議院の優越の無い国会同意人事で、衆参両院で所信聴取が無いのが制度的に異常。
浜口政調会長は、「女性委員が2人になれば幅広い意見が反映される」と述べたけど、さすがにこの説明は非科学的すぎる。
ならば日銀委員を、男と女とLとGとBとTとQにすれば、幅広い意見が反映されるのか? その時、残った総裁と副総裁の性別は?
などと、バカバカしい話になる。ジェンダー平等と金融政策は関係ない。
議論に関しては、「将来の課題」とのことだけれども、「それは永遠に議論しない」ととられかねない。少なくとも、これを言ったなら6月にも日銀人事があるので、6月には絶対に意見聴取をすると公約しなければおかしい。
ここで「今から議論するのは間に合わない」との意見が出そうだけれども、間に合わなくて何が悪いのだろうか。確かにハロウィン緩和のようなギリギリの時期ならともかく、仮に委員空白になっても、日銀の決定は変わらない。言葉を選ばず言うと、政争の具にしていい時期。
むしろ、おかしな人を唯々諾々と承認して、日銀の流れがおかしくなる方がよほど大ごと。
繰り返すけれども、私はいきなり否決しろと言っているのではなく、「国会で議論すべし」と言っているだけ。
なぜ国民民主党が支持されているか。理由は二つ。一つは、常に情報公開して、与党との談合に与しなかったから。もう一つは科学的な議論を続けてきたから。
103万の壁でもガソリン減税でも、国民民主党の発信に対し、自民党は何ら科学的な反論を返せなかった。
この二つを一挙に捨ててしまう。何の為に?
以上の理由で、今からでも遅くないので、考え直すべきと思う。まだ時間はあるし。