西洋人で政治学の教科書と言えばまずこれ。
ニコロ・マキャベリ『君主論』である。
社会の指導者層に属する人物でこの本を呼んでいない人はいない。
それほどの古典である。近代政治学を打ち立てた書と言われる。
一方で、「マキャベリズム」という言葉が権謀術策、「マキャベリスト」は陰謀家の意味でも語られる。当初はローマ教会公認の書だったのが、ルターの宗教改革以後に危険出版物指定されたからなのである。
君主(リーダー)は、道徳(当時はローマ教会の教え)などに拘るべきではなく、結果責任こそ果たせ、が主張である。
ちなみに「目的は手段を正当化する」はイエズス会で、マキャベリは「結果は手段を正当化する」である。どちらも手段を選ばない点では同じともいえるが。
曰く。
「天国に至る最良の道は地獄への道を熟知することである。」
「君主は獅子の腕力と狐の知恵の双方を身につけねばならない」
などなど、実は常識論ばかりである。とっぴなことは何も言っていない。
いきなり、会田雄次編『世界の名著16 マキアヴェリ』(池田廉・永井三明訳、中央公論社、一九六一年)が難しければ、
まずは、塩野七生『マキアヴェッリ語録』(新潮文庫、一九九二年)を副読本としては如何。
この本の目次、まったく読む必要がない。(開いてのお楽しみ)
問題。マキャベリ本人はマキャベリストではない。なぜか。
解答。本当のことを他人に伝えているから。
真のマキャベリストは、自分がマキャベリストだと公言しないし、そう思わせない。
マキャベリ曰く「君主は不道徳であることに躊躇してはならない。それを成功させるためには、不道徳な人間だと思われないように細心の注意を払うべきである。」