世界史(4)―アメリカの参戦

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 この節、全面的にアメリカ崇拝者へのあてこすりですね。そもそも米国が大国になったのは第一次大戦であり、世界の超大国になったのは第二次大戦からなので、それ以前の米国を必要以上に強大な国として描く必要は全くないのです。

 モンロー宣言など第一次大戦までヨーロッパ列強は誰も守らなかったとか、中南米研究者の常識なのですが。せいぜい、極めて当事者能力の高かったセオドア・ローズベルトを英独双方が味方につけようとしていた、以上に米国の力を過大評価できないはずです。

 はっきり言いましょう。第一次大戦以前の米国は日本と同様に小国です。一番困るのは、敗戦コップレックスを勝手に抱いた老人が、若い世代にそれを押し付けようとすることです。米国史や日米関係史も仔細に検討すると、間違った歴史認識により現在の日本人が不当に自信を喪失している例も多々あるのです。

 あと、第一次大戦をめぐる米国の立場を考える上で、メキシコ問題は絶対に避けて通れないですな。米国は、メキシコ革命(というか紛乱の方がふさわしい)への対応に忙殺されて欧州大戦などに関わっていられなかったのであり、ドイツがメキシコに手をつけたから参戦したので。

 

 米国にとっての第一次大戦の意義とは、欧州の没落によるモンロー主義の確立である。モンロー主義の「欧州への不関与」こそ崩れたが、「欧州の南北アメリカ大陸への介入阻止」はむしろ第一次大戦で実体化するのである。

 

 実は六節を書き終えた後にこの節を直したのですが、最後の一文などそうやって挿入しました。人からはよく「とにかくウッドロー・ウィルソンへの悪意だけは伝わります」と言われます。悪意かどうかはわからないですが、現在の人類の不幸は、この人物が作った訳ですから、まちがっても聖人君子としては描けないでしょう。