2.26には間に合いませんでした。「帝国憲法講義をうちの地方でもやってください」との依頼を受けて打ち合わせをしていました。条件さえ合えば日本中、どこにでも行く気ではいます。要はお誘いいただいている方の志です。
さて、歴史学では一時期「2.26産業」と言われるほど、汗牛充棟なおびただしい文献が出版されています。日本近代史に興味のない人でも「2.26事件」の名前くらいは誰でも知っています。よく聞かれます。人によっては、この事件により「軍部が台頭」「軍国主義とファシズムの傾向が強まる」などと言い出すので。で、事件関係者の誰かへの思い入れを表明しないと「愛国者ではない」みたいな決めつけをされるので困るのですが。。。
仕方がないので、私の答え。
そもそも重要な事件ですか?
まず訳語を考えましょう。
murder =殺人事件?・・・違いないが、その割にはやったことが大仰過ぎる。
incident=事件?・・・間違いではないが、事変ともとられかねない。
coup d’tat(クーデター)=謀反?にしては無計画で粗雑過ぎる。
riot=暴動。これが正しいのでは?
まあ、riotでしょうね。クーデターと呼ぶにはあまりにも何も考えていないので。
では、なぜ2.26事件をどうでもよいと思っているかと言うと、事件後に台頭した人は誰ですか?失脚した人は誰ですか?を考えれば明らかです。
日本史の教科書では、同事件で青年将校が蜂起したが鎮圧され、皇道派は一掃された。
その後、統制派に率いられた「軍部」が「軍国主義」「ファシズム」「戦争への道」を突き進んでいった、とか。
えーと、、、どこから突っ込んでいけばよいのやら。
「軍国主義」と「ファシズム」が矛盾するというのは、去年の八月の過去ログを参照してください。矛盾どころか宿敵です。
次に「軍部」って誰ですか?今の「官僚機構」って言うくらい、正体不明な集団ですが。
陸軍と海軍はほとんど敵国ですし、敗戦までそれぞれの内部に派閥対立を抱えています。
で、「皇道派」って、荒木貞夫とか真崎甚三郎のことなのでしょうが、別にこの事件以前に失脚しているので。
むしろ荒木と真崎の失脚に抗議する一部青年将校が起こした暴動が2.26事件、と考えているのですが。
「憲政の常道」を辞めてしまい政治の統合主体をなくした5.15事件の方がよほ重要事件と思うのですが。
ついでに日本が敗戦に向かう契機と言えば、究極の大衆迎合主義(ポピュリズム)である近衛文麿内閣とかの方が大きいのでは。
厳密な用語の定義と、そこに至る思考過程こそが学問です、という話でした。定義抜きの知識自慢は学術的議論ではありません。そういうことをやるから日本近代史は、学者も好事家(マニア)も区別がなくなるのです。