朝日新聞(新聞社)が小川榮太郎(文芸評論家)と飛鳥新社(出版社)を訴えた裁判の判決文が公開されている。
結論から言うと、形式要件では朝日新聞の記録的な大敗。ここだけ聞くと「名誉毀損裁判は1円でも賠償金を取ったら勝ちだ」とのおめでたい価値観の持ち主でなければ絶望する判決。しかし、朝日新聞は「我々の主張がほとんど認められた」と述べている。これ、判決文読まないと、朝日新聞が頭のおかしい集団ととられる。
一方の小川氏と飛鳥新社の立場だと喜べない判決。
以下、論評。
どういう裁判かというと、
「小川氏が飛鳥新社の書籍で朝日新聞の名誉棄損をした。5000万円を払え。新聞に謝罪広告を載せろ。」と要求し、5年も争っていた。
判決は「小川と飛鳥新社は朝日新聞に200万円払え。それ以外の訴えは斥ける」
それ以外と言っても、新聞での謝罪広告なので、そんなのはなかなか認められない。
問題は、朝日が5000万円も要求したのに、200万円しかとれなかったこと。弁護士費用は超赤字。金の問題ではないと言うなら、謝罪を勝ち取れなかったので、朝日は25分の24は認められなかった。
200万円というのは名誉毀損裁判の相場の金額と言えば相場だけど、さすがに「目的が金」となると弁護士費用も出ないので、ほぼ完敗。
しかも民事裁判で勝敗の目安となる訴訟費用の分担が、「30分の1を被告(小川氏と飛鳥新社)が、30分の29を原告(朝日新聞)が払え」ってなっている。こんな記録的な大敗、聞いたことが無い。
以上が、「形式要件では朝日新聞の記録的な大敗」とした理由。私が小川氏なら、すき焼きで祝杯あげる。(笑)
ただ、私が小川氏と飛鳥新社なら、浮かない顔になる内容。
判決文をつらつら読むと・・・。
まず争いのない事実として
・朝日新聞は新聞社である。
・飛鳥新社は出版社である。
証拠により容易に認められる事実。
・小川榮太郎は文芸評論家である。
争ったんだ・・・。
で、判決文は延々と「日本語講座」。いちいち面白いんだけど、そこは省略。結論的には小川氏の日本語の読み方を解説し、被告(小川&飛鳥新社)の主張を「採用できない」としていく。つまり、小川氏の言論により朝日新聞の評価を低下させているとの認定。
名誉毀損が成立するか否かの15の争点に関しては、14までを「名誉毀損が成立する」としている。しかも、「小川はちゃんと取材してない」とまで書いている。
これが朝日が「我々の主張がほとんど認められた」とする点。
では、なぜ賠償額がこの程度か。それが判決文39pの「謝罪広告の要否および損害額」の部分。
要するに「飛鳥新社(と小川の言論)に影響力が無い」から。
以上を総合すると、「形式的には朝日の負け、実質的には小川・飛鳥新社の負け」といったところか。
裁判官、判決文を笑い転げながら書いたんだろうなあ。