最近、経済学でよく聞く言葉が、名目と実質を区別しよう!です。
名目成長率と実質成長率とか、名目金利と実質金利とか。
実はこの区別、地政学でも大事です。
国際社会にも名目主権国家と実質主権国家があります。
国家とは、「土地の上に人がいて、ちゃんとした統治がある存在」です。
潜水艦は国家になれませんし、無人の荒野は国ではありませんし、無政府状態でも国ではありません。
主権とは、自らの領域と国民を排他的に統治する権力のことです。
要は、他の誰にも支配されない力のことです。
主権国家の定義は、主権を有する国家のことです。
これを形式的に認定する方法はいくつかあります。
ただ、自ら国家と名乗って他の国から承認されている国、くらいの意味が基本でしょうか。
今だと国連加盟国という定義もできないこともないですが、これだと台湾は?とかややこしい定義にもなります。
人によっては、「『ミリタリーバランス』に載っている国」という定義も使います。(ハマコーさんとか)
ただ、ここで大事なのは「他の誰にも支配されない」の意味です。
究極は、世界の覇権国家だけが「他の誰にも支配されない」になります。
もう少し広げて、大国も主権国家でしょう。
大国の定義は、
「発言力のある国」
「国際社会の合意を形成するに当たり、その国の同意を得なければならない国」
です。
世界的には、米中露仏英でしょう。国連常任理事国で核保有国という現実がその根拠ですし、
前者は客観的な根拠です。
地域限定の大国という意味で、「地域大国」という表現はあります。
地域大国の定義は、
「その地域で発言力のある国」
「その地域での合意を形成するに当たり、その国の同意を得なければならない国」
になります。
以上の国は名目的にも実質的にも主権国家です。
では、地域大国ですらない国はどうなるのでしょう?
これを私は名目主権国家と名付けます。
東アジアで考えましょう。
米中露は、大国であり地域大国です。
北朝鮮、韓国、日本は主権国家です。(北朝鮮は、テロリスト不法占拠地域では?という議論は捨象)
北朝鮮は核保有により大国化を目指していますし、韓国はその北に張り合おうとしています。
では、わが日本は?
果たして、国家たりうる意思を示しているでしょうか。
ちなみに、名目ですら主権国家でない国があります。チベット・新疆ウイグル・内蒙古・満洲です。彼らはその昔、立派な大国だった時期もあります。
国家が国家で居続ける努力を怠ると、国家ではいられなくなる。
主権国家でいられるのが当たり前だと思わないことから教育が必要なのではないかと思う今日この頃でした。
日本はまだ一応、名目主権国家ですね。