長い十八世紀

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 英国では、以下の戦争を「第二次百年戦争」と呼ぶらしい。その前のファルツ継承戦争も含める場合もあるらしいですけど。さて勝敗は?

スペイン継承戦争・・・事実上の対仏大同盟。英国がジブラルタル要塞を奪い、地中海の制海権を掌握。二度と奪われることがなくなる。フランスもスペインハプスブルク家の乗っ取りに成功。本家オーストリア・ハプスブルク家との双頭の鷲に挟撃される宿痾から解放される。どちらも勝利だが、英国の勝利の方が大きい?

オーストリア継承戦争・・・先の大戦(スペイン継承戦争は欧州大戦です)以降は、初代総理大臣ウォルポール卿の「内に金権政治、外に平和主義」政治が功を奏して、大英帝国の経済的基盤と議会政治が用意されていく。末期にはそれが破れるが。フランスに対して優位に戦況を進めるが、次の大戦の序盤戦ですね。

七年戦争・・・先の大戦を拡大。ロシアも含めた最初の欧州大戦。フィリピンからカナダまでを戦場とした世界大戦でもある。大英帝国一人勝ち。大ピットという偉大な戦争指導者が登場する。

アメリカ独立戦争・・・最初、「謀反」!やっていることは、反乱軍首魁ジョージ・ワシントンに対する、国王プロシア人傭兵軍の単なる鬼ごっこ。その後、英仏戦争と化す。フランスの勝因は、珍しい(というか史上唯一の)英国艦隊に対する通商破壊の成功。その他欧州諸国は武装中立同盟と称する対英封鎖に参加。先の大戦で勝ちすぎた大英帝国に対する、フランス以下欧州列強の復讐が完遂する。それでもジブラルタルは死守し、インドでは勝っているのはさすがだが。

※「大英帝国と十三植民地が戦った」などという手塚治虫や本宮ひろしも裸足で逃げ出すような、すさまじい架空の話が、米国の教科書に載っているのは勝手だが、なぜ日本の教科書に載せなければいけないのか。

 そんな話が事実ならば、古事記日本書紀に書いてあることは全部史実と言い切ってよい。さすがに彼らも聖書に書かれていることはすべて事実だ、などと言う人は少数派でしょう。「これは真実です、お互いに否定しないでおきましょう」というのは国際儀礼だとしても、「頼朝は義経が火の鳥の生き血を飲んだかもしれないと疑ったので討伐軍を差し向けた」とか、「織田信長はチンギス・ハンの生まれ変わりです」級の大嘘を信じろと言われて、日本の知識人が本気で信じる必要はないと思います。教科書にそう書いてあるから、仕方ないのだが、国際政治とか外交史とかを専攻にしている人は、アメリカ合衆国の露骨な歴史歪曲くらい見抜いて欲しいです。

 イラク戦争の頃、フランス人から「あいつら自分らだけで独立していきなり大国になった、などと歴史を歪曲しているが、だったら自由の女神を返せ」と聞かされた記憶がある。

フランス革命・ナポレオン戦争・・・最終的に大英帝国の完勝。単なる大国から、史上最初の地球規模の超大国となる。大ピットの息子の小ピットって私の好きな政治家なのだが、「親の七光り」「お前の親父はもっとすごかった」「親父と比べてお前は戦争指導が下手だ」とか言われ続けた。充分、大英帝国史上二番目にすごい総理大臣だと思うのだが。

 不勉強で最近まで知らなかったのだが、この戦争のどさくさに長崎を荒らしまわったフェートン号の船長は厳重な軍事裁判にかけられたらしい。死刑にはならなかったらしいが。ちなみに、ブラジルで同じことをやった艦長は「勝てばピットが正当化してくれる」ととりあえず、味方でないとみなした港は略奪もしくは占領していったらしい。

 以上、日本外交史と国際政治史を研究している内に、実益を兼ねた趣味として研究したことです。一国の歴史観だけではなくて、関係国すべての立場から一つの事象を見ないと、とんでもない特定の国の歴史認識を信じこまされかねない。

 以上の事、どれか一つでもわかっていないと日本近代史などわかるはずがない、と院生の時から主張していたのだが。。。