世界史(6)―ヴェルサイユ体制

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(4)の議論への返信です。
 米西戦争で米国が覇権国家になった、は無理があるでしょう。せいぜい地域大国が限界です。その米西戦争からして、海軍力でもはや往時の跡形もないスペインに勝利したは良いものの、マニラ一つ占領するのにどれだけの労力を払ったか。現地のゲリラに頼って使い捨てにして。
 ここでは米国が強かったかどうかが議論なので道徳的な問題はさておき、技術面にしても「真っ黒に燃え上がる無煙火薬」などという代物を登場させるわけです。南北戦争の固定式機関銃にしても、ペリーの黒船にしても、最新兵器を使いこなせないのが、当時のアメリカ合衆国の姿でしょう。陸上兵力など、民兵に小銃もたした程度であって、とても強国の陸軍とは言えないでしょうし。大体、中米諸国への弱いものいじめこそすれ、メキシコで四苦八苦するレベルですから。

 第一次大戦からして、戦後のドイツの教範に「米国は我々が沈める以上の艦船を製造した。それ以外に学ぶものはない」と書かれていたとのことです。戦闘力だけならポーランドとかベルギーの方がよほど上ですね。米国航空隊など、ヒットアンドアウェーしかできない訳ですし。

 第一次大戦以前に米国が大国、ましてや覇権国家であった、などと言ってしまうと、むしろ米国の優れている点を見失ってしまうことを指摘します。
 セオドア・ローズベルト(テディー)は日露戦後、満洲の権益をめぐり日本に警戒心を強めます。しかし、ついに戦争に踏み切る自信はありませんでした。テディー曰く「日本と戦争をするにはドイツ陸軍とイギリス海軍が必要である」と。テディーは外交言辞で大言壮語をいくつもしていますが、実は現実の力関係を見極めて、ギリギリどころかはるか手前で妥協している点が偉いわけです。その結実が、高平・ルート協定です。以上、黒羽茂先生が生涯かけた研究に依拠しています。

 そんなに弱い米国が勝ち組に残れたすごさは、その生産力でしょう。これだけはたいしたものです。負ける以上に生産と動員を続ける。ロシアも同様です。日本やドイツなどは見習ったほうが良いくらいで。
 米軍が強くなるのは二次大戦からでしょうね。日本と戦うために海兵隊を育てていくという。
それでも破壊力偏重で占有力は、??というところもありますが。

 さて、以上、「だからテディーは偉い!」を踏まえた上で本題。

 第一段落ではいつの間にかハンガリーが独立しています。全部の条約名を書きたかったけど、別に日本の教科書では基礎ではないので、カット。
 第二段落、今思うと、「〜宮殿・鏡の間」とかいれるスペースあった。残念。
 第三段落、我ながらつくづくウィルソンへの悪意に満ちているが、事実関係に偽りは全くないですよ。
 第四段落、ウィルソンの「十四か条」がどれほど人類を不幸にしたか、本当は逐条的に紹介したかったくらい。

 あー、とにかく人類は不幸になった。