まずはdodoさんの質問にそくしてご返答を。
一、帝国憲法下における、ファシズム政権に対する天皇によるクーデターの合憲性
まったくの合憲です。正確には「クーデター(謀反)」ではなく、「カウンタークーデター(討伐、上意討ち)」になります。2.26事件をご参照ください。あの場合は、ファシズム政権の成立ではありませんでしたが、昭和天皇は「国体の精華を毀損するものである!」と激怒なされました。ファシズムもこの「国体の精華を毀損するもの」の一つなので、適当な例かと思います。戦前は「国体」という概念がありました。散々、悪の権化のように言われますが、「天皇と国民がお互いを守る」という意味です。ここでの昭和天皇の用法は、国民の一部の政府当局者や暴徒に好きにはさせない、との意味です。
二、日本国憲法下では?
合法的に成立したファシズム政権に従うのが、日本国憲法の解釈によれば正しくなります。ただし、あくまで日本国憲法によれば、ですが。その政権が選挙で選ばれていた場合、まったくの合法になるでしょう。ただし、その場の気分で合憲合法になる場合もあるでしょう。細川政権を参照(前にも書きましたが、あれは合憲ではあっても、非立憲なのは間違いないでしょう。)。世論も支持し、憲法学者も気分で意味不明な理屈を並べて正当化する可能性はありますね。
三、日本国憲法下で合法的ファシズム政権を合憲的に止める方法
議会が決めた合法行為は合憲である、との前提に立っている以上、最高裁に憲法の番人を期待するなど、期待する方が無駄でしょう。今の最高裁に「気骨の判決」の井上判事のような立派な方がいると信じている日本人、どれくらいいますかねえ(8月17日を参照)。
素直に条文を読めば止められるのでしょうが、現実には間違いなく無理です。内閣法制局も東大憲法学も、権力には弱いですから。本当に暴力で法を支配するファシズム政権が成立したら、間違いなくなびくでしょう。
帝国憲法においては、ファシズム政権に限らず非立憲的な政権が成立し国民の権利が抑圧されそうになる場合、天皇には秩序回復する権能がありました。帝国憲法は有事を想定した憲法だからです。だから平時は儀礼的存在であっても、「天皇の統治権」を明記していたのです。条文でも、「できるだけ使わない」ことが前提の三一条非常大権がありました。(ワイマール憲法は末期には大統領非常大権が日常化しましたが)
翻って現行憲法の象徴天皇はどうでしょうか。そもそも現行憲法は有事など存在しないことを前提に成立しています。だから有事における天皇の位置付け、などを議論している人がいないのです。
帝国憲法の権威であった、清水澄博士(最後の枢密院議長として現行憲法の成立を見届ける)は、こんな憲法では天皇をまったくの傀儡としてしまう、まともな憲法ではない、と入水されました。
一方の権威である佐々木惣一博士(貴族院議員として現行憲法の審議で数々の追及)は、戦前と同様の解釈になんとか持っていっています。
主流の東大憲法学は宮沢俊義という人が師匠の美濃部達吉博士の憲法学を乗っ取り、「天皇など省庁として残してやった、本来ならいらないもの」という解釈を推し進めています。戦前と同様に「天皇と国民が支えあう」のが国体であるとした佐々木博士の解釈はもはや風前の灯で、清水博士の懸念が現実になろうとしています。
結論。日本には天皇を廃し、国民を抑圧しようとするファシズムが近づいている。今の憲法の価値観に縛られている限り、ファシズムは合法的に浸透する。それを防ぐには、国民が声を上げるしかない!
私は可能な限り、知っていることを伝えます。皆さんも正しいと思ったことは人に伝えてください!