加藤勝信官房長官の発言を検証する

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加藤勝信官房長官は「女系天皇は憲法上許されている」と国会で発言、さらに「従来の政府見解を踏襲しただけ」と記者会見で述べた。

「切り取りはよくない」というので、全体像を判断できる最低限の事実を提示する。

その1 昭和34年2月6日衆議院内閣委員会
「新憲法の精神にのっとって、皇族女子の皇位継承権を認めるということは、私は当然考えられていいことだと思う。いかがですか。」と聞かれ、
林修三法制局長官「やはりこれは慎重に考えるべき問題だということで、皇室典範のときにもその問題はいろいろ話題に上りながら、そういう規定はされなかった。その事情を今直ちに——おしかりを受けるかもしれませんが、そういう事情を今直ちに解消するだけの事由はないのじゃないかと思っております。」
⇒女帝に関して慎重論を述べているだけ。
その2 昭和39年3月13日衆議院内閣委員会
宇佐美毅宮内庁長官
「一体憲法二条にいう「世襲」という意味は何を意味するかということの解釈から出ることだと思います。世襲というのはいろいろな考え方がございましようが、これはやはり伝統的な歴史的なものによってできるということを考えなければ、なかなかその定義はむずかしいのではないか。しかもわが国におきましては、昔の典範義解等にもございますように、皇胤でしかも男系に限る、一系を分裂しないというような根本的な考え方で、いままで歴史上におきましても、このことは客観的事実としてまいったわけでございます。したがって、少なくともいまの憲法の世襲の中に女系を含むかどうかというのは、これはたいへんな議論の存するところだと思いますが、現在の新しい皇室典範が男系と考えておりますことは、それを受けているのではないかという考え方も政り立とうと思います。それは私一個の考えをここで申し上げてどうかと思うのでございますが、申し上げてみればそういうような立場でわれわれは現在解釈をいたしておるわけでございます。」
⇒「皇位継承権は男系に限る」と明言。
その3 平成4年4月7日衆議院内閣委員会
加藤紘一官房長官
「繰り返しになりますが、日本の皇室制度は、歴史と伝統に基づいたものであり、だからこそ憲法で「世襲」という言葉が明記され、また皇室典範で「皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」というふうに書かれているのであろうと思います。この伝統と歴史を守るということと、一般社会の中において日本国民が男女平等を目指して努力するということは、私は相矛盾するものではないと考えます。」
⇒少なくとも、この時点までは政府見解は一貫している。
その4 平成13年6月8日衆議院内閣委員会
福田康夫官房長官
「憲法第二条ですね。これは、皇位を世襲であることのみを定めて、それ以外の皇位継承にかかわる事柄については、すべて法律である皇室典範に譲っているところである。女性の天皇を可能にするために憲法を改正する必要はないということは、これは前にも申し上げたと思うのです。 ただいま御指摘の加藤内閣官房長官の答弁、皇室典範において皇位継承者を男系の男子に限っていることが、法のもとの平等を保障した憲法十四条との関係で問題を生じるものではないということを加藤官房長官の答弁では述べているものでございまして、皇位継承者を男系の男子に限ることが憲法上の要請である旨を加藤官房長官がお答えしたものではないということですね。加藤官房長官は憲法上の要請である旨をお答えしたものではないということで私は承知をいたしております。」
⇒突如として解釈変更。福田長官が加藤長官の答弁を誤解したとしか言いようがない。
加藤勝信現長官は、この福田答弁を繰り返しているだけと言いたいのだろう。
しかし、そこだけを切り取られて話されても困る。
福田以前の解釈は一貫していた。
どれくらい一貫していたかというと、日本国憲法施行から一貫していたし、帝国憲法の時代も一貫していたし、帝国憲法制定以前から一貫していた。
さて、福田長官がどういう理由で解釈を変更したのかが不明だし、加藤現官房長官が福田答弁に固執するのか理由が不明。