参議院って何?(3)―参議院議員の地位と選出方法

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 憲法四十六条で、参議院議員の任期は六年、三年ごとに半数が改選、とされています。総理は参議院を解散できません。つまり、衆議院議員と違い、参議院議員は総理にクビにされることはありません。

 第一回参議院議員選挙では、上位当選者の人気を六年とした。下位当選者は三年。
第二回参議院議員選挙では、第一回の下位当選者の改選。
第三回参議院議員選挙は、第一回の上位当選者の改選です。
第四回参議院議員選挙は、第二回の当選者の改選、、、
と、これをくりかえして今に至ります。
さて気付きましたか?
絶対に国会議員がいなくなることがない仕組みを?
参議院選挙と衆議院選挙が重なることがあります。これは過去三回あり、しかもその内の二回は意図的に同日選挙にしました。そのような場合でも、参議院議員の半分は残ることになります。国会議員がいなくなることを防ぐためにこのような仕組みにしています。

 で、それが何の意味があるか。ちょっと横道にそれて。
五十四条二項・三項の「緊急集会」規定です。
衆議院解散中に緊急の事態があっても、参議院の緊急集会で決めることができます。(二項)
もちろん、衆議院が事後に承認しなければ無効ですが。(三項)
私はこれを参議院の優越と扱ってよいと思いますが、「衆議院の優越」を強調する日本国憲法学はそのような立場は採らないようです。

 ちなみに、この緊急集会の権限、帝国憲法下では枢密院にありました。
子、曰く「戦前の枢密院は衆議院より強かった。戦後の衆議院は参議院より強い。」と。
同じものに関してまったく逆の解釈が成り立つ理由がわからないですね。
この「子」を「し」ではなく、「こ」と呼ぶことにしよう。

 さて閑話休題。
参議院議員の選び方です。
今は、九十六名が全国区比例代表非拘束名簿式で。百四十六名が地方区(選挙区)で選ばれています。
一回の選挙ではその半数が改選されるので、比例区四十八、地方区七十三名ですね。有権者は、一回の投票で比例区と地方区でそれぞれ一票ずつ合計二票を投票することになります。

「全国区」とは、日本全国を一つの選挙区とすることです。
「比例代表」とは、政党ごとに得票数に応じて議席を比例配分します。
「非拘束名簿式」とは、比例代表の細かい規定です。

 例えば、十%の得票数だと、五議席獲得!とかになります。(本当はもう少し複雑ですが)
ではその五人はどのように決まるか。
政党ごとに名簿を提出して、その中で得票数で順位をつけ、上位の五人が当選します。有権者は政党名だけを書いても、政党の名簿の中で「是非この人を!」と書いても構いません。

 田中角栄と竹下登の絶頂期には、拘束名簿式といって、政党が勝手に順位をつけていました。
つまり、大政党の名簿上位だと何もしなくても当選ですが、下位だと何をやっても、、、でした。
さらにその前は、全国区という完全に個人人気投票でした。
「石原慎太郎、伝説の三百万票!」とか「宮本顕治、まさかの三十八位当選!」とかはこの時代の産物ですね。(事例に他意なし。これぐれも、日本共産党の議長を貶めるために、わざわざタレント候補を引き合いに出したとかそういうことはございませんので。笑)

 地方区は、各県ごとに一つの選挙区です。
東京みたいに大きな都道府県は五人、島根とか鳥取みたいに二つで一人も無理な県でも最低一人、という感じです。人口の比例配分なら、東京が十人(計二十人)の国会議員を出せないのはおかしのですが、
そこは大人の事情?で誤魔化しては本当はいけないのですが、理由は面倒なので省略。

 一つの選挙区(県)から一人の議員を出すのは小選挙区制です。これは衆議院と同じでわかりやすいですね。一位になれば勝ちです。

 問題は定数二〜五人の都道府県です。複数区とか言われます。
これは大選挙区単記制です。単記制とは、一人の候補者にしか投票できないことです。
この世で最悪の選挙制度である「大選挙区単記制定数二」で説明しましょう。第一党が一番勝ちにくく、第二党が一番勝ちやすいのです。
単純な算数の繰り返しなのですが、要するに51%の支持どころか、67%の支持を得なければ、勝ちではない、という制度です。(候補者乱立の場合はもっと数字は低くなりますが)
普通にやれば第二党が第一党と同等の地位を得られる、というとんでもなく反民主的な制度です。
今次参議院選挙で、複数区、特に二人区が話題になるのがわかりますね。
小沢の「二人擁立方針!」って、第一党の支持率が落ちている時には自爆行為なのですが、第二党がもっと落ち目だからまぐれ当たりの可能性があります。暇な人は算数の計算ですので、やってみてください。

 何のためにこういう選び方になっているか?

 一言で言えば、わからん!

 もう少し詳しく言えば、さっぱりわからん!

が本音です。そもそも、売り言葉に買い言葉で始まったのが今の参議院なので。

 以上、わかりました?途中ちょっと難しかったですか?
書いてて気付いたが、池上彰ってこういうのを商売にしているなあ。
彼の事実関係の説明能力の高さは感心するが、意見が偏ってるかなあ。
「日銀マンセー!今の日本人は学力低下してません!金融政策など効果はないのです!」とか。

 とりあえず、一日一回、白川方明と羽毛田信吾と・・・(以下、多すぎるので略)に呪いを込めている倉山でした。
ちなみにかなり先日になりますが、伊勢の神宮で、

「敵国降伏!」

を祈ってきました。神風が吹いても、挙国一致がなければ意味がないのですが。元寇で言えば、二月騒動の真っ最中?

「参議院って何?(3)―参議院議員の地位と選出方法」への0件のフィードバック

  1. 青島幸男の何もしないで当選とか、残酷区、銭酷区とも言われましたね。
    解法は定数nに対してm人が立候補したときに、上位n内にはいるのに必要な投票数、ですね。

    参議院の緊急集会についてはもっと評価されてもいいはずですし、衆参同日選挙違憲論もこの規定からでしたっけ?

  2. >第一回参議院議員選挙
    細かいことを言うのは恐縮ですが、このときは名称こそ「通常選挙」ですが、憲法史上唯一の「参議院総選挙」です。憲法102条(もはや誰も見ない条文なので見落とすのも無理もないですが)見れば分かります。

    参議院の定数配分については、最高裁判所もかなりいい加減なんですね。なにせ「参議院は地域代表」という、憲法の条文に明らかに違反する論理で正当化してるぐらいですからw
    まぁ選挙とは国民の代表を選ぶ制度ですから、「よほどバカな奴でない限り、何がどうなってるか誰が見ても分かる」というシステムにすべきだと思いますが…あるいは「俺たちはこんなに頭がいいんだぜw」ということを自慢したいだけなのかも知れませんねw
    そんなに頭が良いなら、選挙制度などという下らないことなどほっといて、竹島と千島を侵略軍から奪還してみろと言いたいです。

    >「敵国降伏!」
    福岡の箱崎宮(ホークスとアビスパの氏神様としても有名)の勅額にもなってますね。「神風」を吹かせたのはシナツヒコ・シナトベ(シナツヒメとかタツタヒメの別名もありますが)の両神だったと言われていますが、この両神は神宮境内の別宮に祭られてますので、本殿だけでなく境内の奥の方まで行かれることをお勧めします。ちなみに、内宮、外宮両方にあります。

    >仙台竜三様
    同日選挙違憲論の論拠は「緊急集会が事実上不可能になる」と「多様な民意の反映にならない」が有力です。まぁ「国家の非常時よりテメェの選挙を大事にする議員」の感覚を追認する学説もどうかと思いますがw
    「民意」という概念は多義的なので、一義的に「民意」と言ってしまって良いものかどうかは疑問です。最も民意に忠実なのは完全比例代表制ということになりますが、それもそれで問題がありますし、そもそも個人的にはともかく、政党としてどうかという議員が多い昨今では、安易に賛成できません。

  3. >第一回参議院議員選挙
    一部記憶違い、すみません。というか学生時代に嘘を習って今まで鵜呑みにしてました。恥。
    下位当選者が三年後改選でした。訂正。ということで、本文も直しときます。
    だから貴族院でいいじゃないの。。。

    >同日論違憲論。
    違憲どころか、同日選挙を憲法習律として確立すべきかと。
    日本国憲法の考えることはわからん。

  4. でもまあ全国区とか比例区は独特の面白さがありますよね。参議院とは何かという所からすれば政党化してしまう訳だから正しくないのはそうですけど。

    でも・・・、候補者とその得票数、申し訳ないけど落選した人と政党も合わせて見ると結構面白いですよね。(特に比例区導入当初の政党乱立時など、なにそれみたいなのがたくさんあります)。

    有名なサイトですが、知らない人のために。良かったらどうぞ。
    http://www.senkyo.janjan.jp/councilors.html

    それではまた。

  5. 今回のこととは関係ありませんが、ちょっと気になったニュース。

    在外有権者、投票求め提訴 最高裁裁判官の国民審査
    http://www.47news.jp/CN/201004/CN2010040501000338.html

    海外に住む有権者が最高裁裁判官の国民審査に投票できないのは違憲だとして、中国・上海在住の日本人男性(67)が5日、国に対し、次回以降の国民審査で投票できる権利の確認などを求め東京地裁に提訴した。
    代理人の升永英俊弁護士によると、在外邦人が国民審査をめぐり提訴したのは初めてという。
    海外に住む有権者は、国政選挙の場合、郵送や日本大使館などで投票が可能だが、衆院選公示と同時に告示される最高裁裁判官の国民審査は期間内に投票用紙の発送や回収ができないなどとして認められていない。
    国政選挙をめぐって争われた訴訟の最高裁判決(2005年9月)は、当時在外邦人の投票を比例代表でしか認めていなかった点を憲法違反と指摘。原告側はこの判決を引用し「国民審査権も憲法に定める参政権に当たり、投票できないのは違法だ」と主張している。
    また、海外から国民審査の投票ができる制度を整備しなかったのも立法不作為として5千円の国家賠償も求めた。

    リンク切れになるといけないので全文コピペしました。
    それにしても、日本国民でありながら海外在住という理由だけで投票できないというのはどうしたもんですかね。国政選挙ですら数年前までほったらかしにされてきた実情と併せて考えると、「在外国民の投票の機会すら保障してこなかった政府が、何が外国人参政権か」と言いたくなります。

    それとも、「在外国民は滞在地で外国人参政権の獲得を目指せ」とでも言うつもりか?

    それはともかく、在日外国人が「外国人参政権がこれだけ長い間議論されてきたにもかかわらず未だに認められていないのは立法不作為だ!」と言って国賠請求訴訟起こしたら、どうなるんだろう…見てみたいような、見てみたくないようなw

  6. 叔父さんの息子様
    これは外国人参政権を封じ込める一つの材料になりそうですね。おぼえておきます。

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