戦時中も、こういう安易な世論が、日本を滅ぼしたい勢力に利用されたのだな、と慨嘆。
よく「戦時中の朝日新聞は戦争を煽りまくった」と言われて、それはそれで間違い無いのだけれども、毎日新聞(当時は東京日日新聞&大阪毎日新聞)よりは、かなりマシです。
さて、学生諸君は以下の内容のどこが私のブチ切れポイントか、考えながら読んでください。
昨日、あまりにもヒドイ本で、特にヒドイ記事があったので、思わず買ってしまったのが、
毎日ムック『3.11東日本大震災ドキュメント 自衛隊 もうひとつの最前線』
ただ、ひたすら今次震災での自衛隊の活躍を称えるという内容。
「不肖・宮嶋 自衛隊員の不眠不休を称す」とか。
まあ現場の皆さんが頑張ってますはその通りなので、異論はございませんよ。報道が少なすぎるくらいで、必要はあるでしょう。
佐々淳行&志方俊之といった自衛隊擁護派評論家は、まあこういうこと言うでしょう、という内容。ちなみに佐々氏「自衛隊は嫡出子となった」、志方氏「成果挙げた『自衛隊六つの特性』」。
かいつまんで要約すると、
佐々「今まで鬼っこ扱いされていたけど、よくがんばった」
志方「今まで財務省に対して口下手だった自衛隊が、アメリカと協力してよくやった」
以上、別にそれを言うなとは言わないけど、それしか言わないのは有害でしょ?という内容ですね。
昭和の支那事変・大東亜戦争でも、
「軍人さんはつらい中、頑張っています」
「皆さんのお父さんも戦地で苦しい中、戦っています」
「贅沢は敵だ!文句を言うのは非国民です」
「聖戦貫徹!貧乏生活に徹底的に耐えましょう!」
などと現場の軍人や国民に忍耐だけを強いて、
いつの間にか経済合理性と無関係な戦争指導ができあがっていて敗戦に至った、という苦い歴史があるので。
苦しい環境でしかも物資がない中で頑張る現場は偉いけど、それをヨシとする上層部はどうなのか?
しかも国民がひたすら現場の軍人さんを盲目的に応援するだけで、本質をみない。
何か似てませんか?
で、同書の48〜49頁が
「君塚栄治・統合任務部隊指揮官インタビュー」
今回の10万人部隊を率いた、東北方面総監へのインタビューです。『朝雲』という防衛関係紙の要約とか。
で、見出しが
状況に応じた作戦次々と
「先憂後楽」で冷たい缶飯に耐える
この見出しで、「自衛隊さん偉いねえ」と思ったら、愚民認定!
(といっても、普通の人はそんなものに関心を持って生きていないので仕方ないけど)
(さらにといっても、敵国の工作機関は日本人のそういうお人よしのところに付け込んでくる)
少しでも防衛問題をかじったら、この見出しだけで
「オイオイ・・・」
「何のポジショントーク?」
「大丈夫?」
のどれかの反応になるはず。
私は、「こいつも、“間に合ってます。現場の士気は旺盛です”の人?」という反応。
で、中身を読むと、
被災地で直接活動している5万人が1日3食とると15万食。しかし東北方面隊の備蓄は2万人が3日間食べる分だけ。・・・仙台は調達できず、2ヶ月近くレトルトばかり。ビタミン不足でみんな口内炎に苦しみました。口が痛くて食べられない、水も飲めないと
とか、
現場の部隊には『先憂後楽の堅持』という指針を出した。温かいご飯は被災者に、我々は缶飯を食べる。
とかが並んで、
たまに愚痴をこぼす隊員もいましたが、そういう隊員には、なぜこんなとき、ここにいるかといえば、それは運命だからだ、長い人生のうちの数ヶ月じゃないか、ここにすべてを賭けようじゃないかと、はっぱをかけています
で締める。
これを美談だと思ったら、日本は滅びます。
ええかげん「小役人的ポジショントーク」
もしくは「自分の無能の言い訳」
ととれなければ、情報化リテラシーも何もあったものじゃございません。
気付きました?この君塚陸将の発言、「先憂」にしか触れていないことに。
もちろん軍隊の行動において、すべての条件が完備して動けるなんてめったに無いのですね。
(それは敵との戦いの話であって、災害に際しては別と言う議論もありますけど)
当面、手に入るモノだけで対処しなければならない局面はある訳ですよ。特に兵卒は文句をいっちゃいかん訳です。
でも、将官の役割は兵卒とは違います。
一時的に少ない物資で対応するとしても、それを恒常化して、「次もこれでいける!」など削っていくなどとしたら、どんどん現場は疲弊して最後は破綻するわけです。
まさに日米戦がそうだったように。
足りないものを補うのが人の上に立つ者の仕事な訳です。
そうでないと、下の者は「人柱」にしかなりません。
という視点でみると、この方は2ヶ月間、何をしてらしたの?
与党や財務省主計局(初心者向け説明=国の予算を司ることころ)に「食料が3日分しかありません。ナントカしてください」とちゃんと伝えて、現場に補給するのが仕事じゃないのですか?
現場に訳のわからない精神論で我慢を強いているけど、結局
主計局コワイ病
で、何もしなかっただけでは?と言いたくなる。
財務省主計局ってこの震災時にも自衛官を口内炎に追いこむほど無慈悲な集団なのですか?
百歩譲って仮にそうだとしても、無駄でも何でも、予算をとってくるのが防衛省・自衛隊の将官の仕事なのですが。
防衛省・自衛隊の幹部が、財務省に対して説明下手で予算をとれない、最初から予算をくれないと思って何もしない、って、これは憲法のセイなのか?財務省のセイなのか?
悪いのは自衛隊の上層部でしょう?
以上あんまりにもムカついたので、自衛隊擁護論者に喧嘩を売った内容です。
ご意見求む。
ちなみにくれぐれも部分と全体を混同した反論はされないように。
現場を批判しているわけではないので。
自衛隊上層部と、盲目的な自衛隊擁護論者を批判しているだけです。
とりあえず4月22日の記事も参照してください。
追記(というかもはや独り言)
防衛問題関係者の間で注目されている知る人ぞ知る重要人物に市川健太財務省主計官(防衛担当)がいます。 私のように別にその道の専門じゃない人間にも噂が聞こえてくるくらいで。この君塚陸将の発言を聞いたら、市川主計官がどういうか、聞いてみたい。
これ、それ系の講演ではちょっと気の利いた軍事ジャーナリストの方はみんな言ってますけど、「自衛隊は当然必要なものも請求していない。だから主計局は何もできない。あるべき日本の国防の姿を考えて頑張っている市川さんが可愛そうだ」という方です。