杉原千畝のリストラ

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 杉原千畝(すぎはらちうね)という偉大な外交官がいる。
 ナチスドイツとの同盟を重視していた政府の方針に逆らい、6000人ものユダヤ人を救った人道的な外交官だったが、戦後に「例の件」を持ち出されて早期退職に追い込まれた悲劇の外交官
との評価である。

 最近はやたらと有名になったが、
「ナチスドイツに媚び諂う日本の中で、このような気骨の外交官が一人だけいた」などという持ち上げ方をやめて欲しいのは私だけでしょうか。
 仮にそれが事実だとしても、
「たまたま例外的に善良な日本人はいたが日本という国全体は悪」
という評価になるので。
 しかも事実関係が間違いだらけだし。

 そもそも、戦後になってクビになったという点を疑問に思い出しましょう。
 なぜ占領下で「ナチスに協力した」ことが理由でクビに?
 この当時の外務省はアメリカ様に媚びるのに必死で、「悪いのは全部、ナチスに媚びた陸軍と松岡洋右でした」などと歴史歪曲をしまくっていました。
 そんな時期におかしい話ですね。
 こういう議論をするから、外務省御用学者に「これだから素人議論は」などと言われてしまうのです。

 他にもツッコミを入れだすとキリがない素人議論に溢れているのが杉原関係なのですが、本題。とりあえず、杉原がクビになる場面を再現しましょう。

上司「わかっているな?」
杉原「何のことですか?」
上司「例の件だよ」
杉原「ユダヤ人の件ですね」
上司「・・・そうそうそうそう!」
杉原「わかりました。そういうことなら辞表を書きます」

 さて、問題。「・・・」の間に、この上司は何を考えたでしょうか。
 まず考えていなかったこと。
 ユダヤ人救出問題です。
 当時から杉原の行為は問題になっていないどころか、むしろ組織的に支援しています。
 杉原はその後も外交官として活躍しているので。
 では何が問題に?
 上司の「わかっているな?」の前を補うというか、意訳しましょう。

 占領されて、外交官なんて占領軍と交渉する人間以外リストラすることになった。
 でもキャリア(=特権階級)のクビをきれるはずがない。
 だからノンキャリのお前の首を切らせてもらう。
 退職金あげるから辞表出して。

 つまり、上司殿は「例の件」をそういうことにしたのである。

 最近の通説では、杉原はユダヤ人を救出したからクビなったんじゃない。

ノンキャリだからクビになったんだ!

です。

 やっぱり、日本政府って、非人道的に思えてきた。
 というか、これを非人道的と思わない外交史家って。。。

 右か左かではなく、人か人でなしか。それが問題だ。

 その集大成が、今回の参議院選挙ですね。