石原環境副大臣、増税と「中井次官罷免」に言及

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中井徳太郎環境事務次官が、就任会見で新税の導入に言及した。明らかに官僚の矩を超える発言である。

では、なぜ官僚が増税や新税に言及してはならないのか。

中井次官と財務省で同期の、矢野康治主計局長が主税局長だった時の発言が簡にして要を得ているので紹介する。12分40秒あたりから。

「憲法上の三大義務である納税は租税法律主義、国権の最高機関である国会でお決めになられること。事務屋として、あるいは政府の一部として財務省主税局が口にするべきことじたい僭越」

「まさに選出された代表者の間で、国民の総意で決めて頂くということにつきる」

「税に関しては価値観十人十色と言われる、どうしてもこれが正しいということはないと思う。そういう意味でも私ども事務方としては国民の皆様の考え方に幅広く耳を傾けて決めるべきこと。」

最後に矢野主税局長(現主計局長)は、「我々の分際では」との表現まで使って、官僚として守るべき矩について答弁している。

こうした理由で、中井次官に対し「免職」を求める声が上がっている。当然だろう。

#中井次官の免職を求めます

ところが石原宏高環境副大臣は「即罷免は行き過ぎでは?」とツイッターで呟いている。

これに対し、渡瀬裕哉先生のご意見。

以上に対する私の所見。

・確かに罷免は行き過ぎだ。辞表を提出する名誉を与えても良い。確かに、切腹ではなく打ち首は行き過ぎだろう。中井氏の官僚の「分際」を超えた発言が許されれば、来栖弘臣統幕議長はなぜ解任されたのかまでさかのぼって議論されるべき。中井氏がお咎めなしなら、来栖氏を解任した福田赳夫内閣金丸信防衛庁長官の誤りを認め、名誉回復をはかるべきだろう。

・日本では公文書というと行政文書を中心とした「官文書」の意味で捉える場合がほとんどだが、世界的には政党文書も公文書と扱うのは珍しくない。現に日本でも「公党」の表現がある。自民党の中でも特に重要な税調は議事録及び速記録(テープ)を職員が取っているのだろうから、重要な意思決定に関する税調での発言は氏名も記録した上で誰が何を発言したかしなかったかを公開すべき。むしろ公開することで、「密室政治」の批判に答えることができるので、自民党の利益になる。

・改めて確認するが、「代表無ければ課税なし」はアメリカ独立戦争で生まれた「文明国の通義」であり、帝国憲法でも現行憲法でも重要な理念とされている。

アメリカの場合は厳しい運用で「Democracy with gun」の原則があり、政府が税に関して不正を行った場合は武力によって打倒しても良いとの革命権の原則すらある。

中井氏や庇った石原副大臣は、このような理屈を当然承知されていると思われるが、まさか「増税が嫌なら武力で政府を打ち倒せ」とでも思っているのだろうか。

原理原則を理解した上での、冷静な議論を求める。

倉山満の砦~誰も教えない時事と教養