「憲政の常道」に従えば、与野党はどういう行動になる?

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秋の政局に向けて永田町があわただしい。9月に臨時国会を召集、冒頭解散して総選挙。投票日は10月25日、などという日程まで出ている。

今回も「憲政の常道」の観点から、与野党の状況について論じる。以下は単なる筋論なので、「倉山が〇〇という主張をした」と言いふらさないように。

まず与党。安倍内閣で解散したいのか、他の内閣で解散したいのか。与党の心理としては支持率が落ちた安倍内閣ではなく、新内閣で「御祝儀」の支持率があるうちに解散したいだろう。

では、大義名分は何か?少なくとも、今の与党が減税を掲げるのだけは許されない。

安倍内閣は返り咲いた当初、「まず経済」を掲げ、「デフレ脱却前の増税をしない」と公約した。ところが二度にわたりデフレ脱却前の消費増税を行った。そして日本経済を低迷させた。政策において失敗している。

そして二度の増税延期の際は、国政選挙で信を問うた。つまり今の自民党は増税を是とし、例外的に減税を行うだけの党であると自ら示している。その「増税」政党である自民党が思うがままの政策をおこなって失敗した。ならば、反対党に政権を譲る渡すべきである。仮に安倍首相以外の人が後継首相になったとしても、その人は安倍内閣の選挙で当選してきた人だ。減税を掲げる資格は無い。

もし自民党や公明党に「減税」を主張する議員がいるなら、「我々は下野してやり直すべきだ」と主張しなければならない。穀物法において時のピール首相に反対の論陣を張ったディズレーリのように。それが選挙民との約束であり、日本では「憲政の常道」と称する。

自民党支持者あるいは議員が「自民党の中で減税を言うことに意味があるのだ」と主張したとする。

「何の為に」と聞き返す。自民党は増税政党であり、その中に減税派がいても隠れ蓑に使われるだけではないか。党の多数派を説得して本気で減税政党に生まれ変わらせる気なら、下野してやり直すべきだ。

どうしても下野したくないと言い張るなら、「日本には憲政の常道」など必要ないと堂々と選挙民に向かって叫べばよい。自民党はいかなる失政を犯しても政権与党に居座る資格があり、選挙で負けなければ何をやっても許されると説けばよい。

これまで、「自民党だけが与党」のような態度が許されてきた。マトモな野党が無かったからだ。

ここからが本題。

現在、立憲民主党と国民民主党の合流話が起こっている。与党が早期解散を断行した場合、まとまらなければ絶対に勝てないからだ。しかし、政策の合意もなく野合しても勝てないのもまた、かつての民進党の先例で誰の目にも明らかだ。

そこで、自公連立政権に対抗できる三つの条件を並べる。

一、魅力ある党首。

二、全員が合意できる目玉政策。

三、総選挙で自民党に二回勝つまでは対立を棚上げ。

まず、一。立憲民主党の枝野幸男代表は乃公出でずんばの心境のようだが、自民党に勝てる党首なのか。新党ができれば代表選挙をやるようだが、国会議員に聞いてみる方法は選挙でなくても良いだろう。

国民民主党の玉木代表は、「立国社だけでなく、維新やれいわとも選挙区調整を」と呼びかけている。当然だろう。自民党が公明党と組んでいるのに、野党の側が「共産党と組むのは嫌だ」と言っていたら勝てるものも勝てない。ならば、全野党がまとまれる党首でなければ、自公の不戦勝となってしまう。

あくまで例えばなので、好きな人間だけでなく嫌いな人間の名も挙げる。

新党の党首には、小池百合子東京都知事や吉村洋文大阪府知事、あるいは橋下徹元大阪市長のような国民的知名度と幅広く人気がある人物を迎え入れ、既存政党の党首は全員が自民党結党時の「総裁代行委員」のような立場で支えてはどうか。幹部人事はもちろん、新党首に一任。全員が従う。

そして細かいようで細かくない提案。党首の名称は「総裁」とする。自民党は自分たちが特権階級と思っていて、「総裁」の名称は専売特許だと思っている。この意識から打破しに行かねばならない。

大正期、絶対与党の政友会に対抗する新党の試みがあり、同志会、憲政会そして民政党が結成され二大政党の一翼にまで成長した。もちろん党首の名称は総裁。「党首」だの「代表」だの、自民党に遠慮した名前を自ら名乗る必要はない。堂々と「総裁」とすべし。

二がもっとも大事。そして三ともつながる。

「減税による景気回復」で如何?

7年も政権を独占した総理大臣が増税を掲げて景気回復に失敗した。ならば野党は「減税」を旗印に結集して政権奪取をはかるのが理の当然。

野党にも増税派はいる。そういう人には聞けばいい。「お前たちは政権が欲しくないのか?」「そんなに自民党政権を続けさせたいのか」と。勝つ気が無い、自公政権を続けさせたいならば、与党のスパイなので組めない。当然、「減税による景気回復」を掲げる対立候補を立てる。

では、未来永劫、増税派は我慢しなければならないのか。そうは言っていない。二つの条件がある。

「二回連続総選挙で自民党を負かす」「景気が回復する」まで。

政治家ならば前者の意味は説明不要だろう。これが嫌なら、やはり勝つ気が無いと見做すしかない。

問題は後者。

仮に、立国社に共産に維新にれいわが組むとする。政策がバラバラだ。まとまるはずがない。しかしまとまらないと、自民党は絶対に勝つ。

だから、最も重要な自民党に勝てる政策の一点だけでまとまる。他のすべては現状維持。「景気回復して自民党に総選挙で二回連続勝つ」の条件を満たした後で考えればいいし、途中ですり合わせればいい。

実は、理論上はこの一点で合意できれば、新党は不要になる。大事なのは、選挙区調整なので。

さて、如何?

しつこいが、単なる筋論なので、「倉山が〇〇という主張をした」と言いふらさないように。