防衛費1%枠の意味

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 さすがにこれは書いとかなきゃ。

 「防衛費1%枠」について、あまりにもトンデモな話が流布してたので。
今日、編集者と打ち合わせしてて知ったのだけど、
「防衛費1%枠なんて意味ないよ」という論説があるらしい。
あるよ。大いにあるよ。

 そもそも防衛費をGNP(現在はGDP)1%の枠内に収めようというのは?

 その一 サヨクの意図
日本のまともな軍備の半分に抑え込もう!というのがサヨクの意図。

 英・西独・シンガポールと言った先進国基準だと、平時にGDPの2%まで防衛費をかけても経済成長にまったく影響が出ない。
いわゆる「吉田ドクトリン」で「経済成長優先・軽武装」にしても、優に今の自衛隊の倍の規模にしても楽勝。
これをやらなかった点で、吉田茂は鳩山一郎に何を言われても文句を言えない。(鳩山に言う資格があるかどうかは別にして)
当時の政治家の論調を見てもこれはわかっていたはずだから、占領明けの吉田の結果責任は重い。

 冷戦時代を通じて、日本はまともな軍備をしていない国になり、ソ連と気脈を通じた左翼の目論見は実現した。

 その二 大蔵省の意図
大蔵省、特に主計局というのは、予算を削るのが大好き。
何せ自分の出世に関わるから。
戦後の防衛予算は額が大きくて抵抗が少ないので、何かの時に削りやすい。彼らにとって、憲法九条平和主義など、時には打出の小槌と化したりする。(よほどの変人でない限り、そんなもの信じていないが)
ついでに、「防衛費1%」などと言う枠を設定していると、
「0.9%だ負けだ!」とか「今年は1.1%だ。勝ったぞ!」
みたいなアホなタカ派政治家が出てくるので、絶対負けない戦いを設定できる。(つくづく、中曽根康弘と言うのはアホだと思う)

 ちなみに、シーリングをめぐる中曽根と山口光秀(主計局長→次官)のやりとりの一端は『財務省の近現代史』に書いといた。
保守老人と言うのは、どうしてこうも「負けしかない戦い」が好きなんだろう。

 その三 坂田防衛長官と久保次官の意図
GNP1%枠を決めたのは三木武夫内閣。
三木が何を考えていたかなんて、探るだけ無駄。
人気取りと政権維持以外何も考えていないんだから。
その三木の下で、密かな陰謀を企んでいたのが、坂田道太防衛庁長官と久保卓也次官。
佐藤内閣の8年間を通じて防衛費は激減し、1%を切ることが多くなった。
そこで「1%枠」を下限のように見せかけて、上限としてめいいっぱい請求しよう。
ついでに経済成長する限り1%(上限)を続ければ、防衛費は伸び続けるではないか。
という意味です。

 最近まで『正論』で佐瀬昌盛先生が連載していたのだけど、はよ単行本化せんかなあ。

「防衛費1%」は意味がないどころか、これでもかと意味があります。