解説「女性宮家に賛成」の中身

LINEで送る
Pocket

 久しぶりにマニアックに笑い転げた。
女性宮家の話。

 結論だけでなく、中身も吟味しましょう。
田原氏の粗雑な論理と、今谷先生の仰っていることははまるで違います。

 注目していた今谷明先生と、ついでに田原総一朗氏も聞かれてた。
これ、相撲の世界にたとえると、双葉山と琴天山くらいの差かなあ。
格が違いすぎて、論評する気にもならない人選。

 不勉強なマスコミの限って
「女性宮家容認」とか先走って、
さらに不勉強な輩が
「皇室の伝統を何と心得る!」
「男女平等は時代の流れだ!」
とかお互いに頓珍漢な主張を繰り広げているようで。

 田原総一朗氏も
「(不必要との意見は)女性差別だ。男女共同参画社会になり、時代が変わったわけだから、女性宮家を認めないのはアナクロニズムだ。」
とか、どうでも良い愚かな発言をしていますけど、
それでいて「女帝は伝統的に認めるべきだが、女系は認めるべきではない」
とか正論を言っているから笑える。

 そんなことより、中世天皇論の大家の今谷先生。
女性宮家ヒアリング要旨
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120229/plc12022921220021-n1.htm

【女性宮家】
幕末以前にも例があり、女性の方を宮家に立てることはありうべきことだ。できるだけ小規模にとどめ、例えば(対象は天皇陛下直系の「内親王」である)眞子さま、佳子さま、愛子さま。困難かもしれないが、黒田清子さんには、内親王宮家を作るのであれば(皇室に)戻っていただきたい。配偶者の男性の待遇は、一代限りの「準皇族」とし、宮家も一代限りとする。

【皇室活動】
皇室の活動には(1)憲法で規定された国事行為(2)祭(さい)祀(し)的行為(3)象徴としての公的行為−がある。(2)と(3)は、皇太子さまや秋篠宮さまにお任せしてもいいのではないか。祭祀行為や儀礼的活動は、伝統的に天皇以外でもやっている。天皇陛下にはお休みいただきたいと切望する。

【皇位継承】
今日は男系、女系の話はしないという前提で(ヒアリングに)臨んでいる。10年、20年かけてゆっくりと議論し、国民のコンセンサスを取っていく問題だ。

 基本的に私は女性宮家創設には反対なのだが、今谷案ならば絶対反対ではない。
馬鹿が誤解しないように強調しないといけないけど、田原案は案にすらなっていない。
同じ「女性宮家に賛成でも月とすっぽんくらい違う。
以下、なぜ今谷案なら容認できるかの理由を説明。

 まず、今谷先生は、女性宮家の先例の存在をしているということ。
ここであげられているのは、桂宮家のことですね。
皇室では皇室があるということは、「できる」ということ。
もちろん「やるべき」とは限らないですが。

 最大の争点の配偶者に関しては、「皇族に準ずる」「一代限り」と。
これで十分。別に女性宮家を無理に作る必要が無いけど、世の中にはどうしても作りたいと必死な人もいて、その人たちの意見を無視すれば肝心の皇室を危殆にさらしてしまうということならば、ここで述べられる今谷案で妥協すれば十分という一線を守っています。

 わかりやすい後者から説明すると、「一代限り」だと平民が自分の子供を皇族、ましてや天皇にすることはできません。
ハイ。振り出しに戻り。「ざまあみろ」とは言いません。
哀れ、皇室乗っ取りの道は閉ざされます。

 実は大事な前者。これ、女性宮家推進派は勘違いしたのでは?
まず事実関係で「準」より「准」のような気が?まあ意味は大体同じですが。
田原氏も「皇族に準ずる」という表現を使っていて間違いなく勘違いしていると思いますが、
「準ずる」というのは「皇族ではない」「絶対に超えられない一線を引かれている」のです。

 簡単な先例。
かつて、農民出身から「皇族に準ずる」立場に登りつめた人物がいます。
豊臣秀吉です。
尊称は「関白殿下」「太閤殿下」です。
しかしながら「殿下」ですが、皇族ではありません。

 秀吉は間違いなく、日本史最大の出世者です。
その意味で個人の努力で到達できる最大の成果を出した人です。
しかし、皇室の伝統は個人の一代の努力では創り出せません。
だから超えられない一線があるのです。
そこにこそ価値があるのです。

 血の濃さ(何親等)で言えば、時の天皇に他の皇族より近い藤原貴族などゴマンといました。
しかし、超えられない一線があるのです。

 整理しましょう。
ここで天皇家のっとりをたくらむ側に立ちましょう。

 平民の男、木下藤吉郎君(仮名)を女性宮の配偶者に送り込みます。
藤吉郎君(仮名)の木下という名字は無くなり、「藤吉郎殿下」になります。
生きている間、待遇は皇族のようになります。
(たぶん宮中お茶会とかだと末席でしょうが。)
藤吉郎殿下と女性宮との間に男の子が生まれます。
でもその子に親王宣下が下ることは絶対にありません。

 ここで、「女性宮を認めることが女系への第一歩だ」
という意見に一言。
上の状態からさらに別の努力をしなければならないでしょ?

 今谷先生、間違いなくここまで読んでああいう答えをしたのだと勝手に拝察しております。
陛下のご公務軽減に女性宮創設がどれほど役に立つかどうかは別にして、女性宮家を足がかりに皇室乗っ取りをたくらむ逆賊に対し、不逞の道を塞いだ訳ですから。

 卑近な言い方をすれば「毒にも薬にもならん」から容認です。
少なくとも「国体破壊」という究極の毒を狙っている連中の野望をふさいだという意味で、愉快痛快。

 問題は「今谷教授も女性宮家に賛成」などと結論だけを先走りさせて中身を入れ替える陰謀をさせないことですね。
今谷先生、お役所の論理を読みきっておられますな。