近代日本政治思想史を四分割する(4)―夏目漱石

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 何だか、お隣の中華帝国で反日暴動がお盛んだそうで。
 だから言わんこっちゃない。
 もう十五年位前ですが、
「あんな、いきなり秘密警察だか憲兵だかわからん連中が寄ってきていきなり拘束するような国になんか旅行などしたくない。そんなに十億人の市場が欲しいならインドに行けば?」などと発言すると、ビジネスマンの方々には怪訝な顔をされたものです。
 ここまで日本と日本人をコケにされて大陸に幻想を持てたら病気ですわな。
 明治以来、なぜ極端から極端にブレるのでしょうか。。。昔は過度の尊大、今は過度の卑屈。

 明治期の大陸雄飛の時代、敗戦国民の支那人を侮蔑する風潮が強まっていく時代に
「さすがにそれは調子に乗りすぎで、やりすぎじゃないの?」
「彼らだって漢文とか、色々と文化的な遺産も残している立派なところもあるじゃない」
「何でもかんでも欧米ではって言えばよいものではないでしょう」
と弱者の味方に立っていたのが夏目漱石です。
 後に「日本はアジア太平洋最強の国になったのだから、追いつけ追い越せではなく、穏健な対外態度、特に文化的振る舞いをして尊敬される方が経済的だし国益にかなう」と主張したのが、吉野作造です。
 この二人、日本も日本政府も嫌いな人たちに、どう考えても誤読を通り越して単なる曲解としか思えない訳のわからん持ち上げ方されていますが、彼らの主張がなされた時代背景を無視して結論だけとりあげるのはあまりにも歴史上の人物に失礼でしょう。

 さて、思想家コラムの第三番目に夏目漱石。
 政治から超然とした人を一人は入れたいと思っていたのも理由ですが、「七博士」とか凡百の同時代の政治思想家よりも、日本の同時代を代表する人物として、私としては奇をてらわずに真正面から取り組んでみたつもりです。
「ここで漱石を取り上げるセンスそのものがすごい」
「言われてみればなるほどだけど、まったく想像もしなかった」
「お前に文学の素養があるとは思わなかった」
など色々とお褒めの言葉をいただいております。感謝。

 特に、「日本近代化の矛盾」を体現する存在として、最も早く日本の没落が見(看、視、そして観)えてしまい、誰も気付かないうちから「日本を守るのは文化だ!」と孤独に悩んでいた方としてとりあげました。これ、吉野作造の問題意識でもあり、弟子の芥川龍之介にも受け継がれているのですね。機会があれば、「芥川龍之介の“不安”とは?」などもしたいのですが、それにはまだまだ修行も必要そうです。
 あとこの議題の関連で、会田雄次さんの『アーロン収容所』などを読んでいただけると、「センス・オブ・セルフ」についてよくわかると思います。

 文学者をこの範疇に入れるのは気が引けるのですが、一応しておきますと、他己認識は第四の立場で、自己認識は第三だったのではないかと思います。第二の人達を批判するあまり、第一の立場ととられかねない言説をしているようですけど、漱石が現実の薄っぺらな日本人(特に官僚だが、官僚に限らない)を嫌いつつも日本そのものを嫌っていたとは、どうしても読み取れないので。

 以上、表面的なことだけしか述べていませんが、語りだすと止まらないのでこれくらいに。
 とりあえず本文をご一読くだされば幸いです。

 このコラム「夏目漱石」については自分でも相当気に入っております。
 書いた時間は、もう一気に小一時間だったのですが、渾身の一作です。
 どれか一つだけ自分の作品を選べと言われたら、これです。

 ということで、これはもう、立ち読みでも良いから読んで欲しい、

『総図解 よくわかる日本の近現代史』

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