シリア情勢私見(前編)

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 シリアに関してはこういった声をよく聞く。問題提起を兼ねて紹介。

一、民主化デモを支援せよ!
二、日本が民主化デモを支援すれば、中国への攻撃になる。
三、独裁政権が毎日、非武装の市民を虐殺しているのを許すな!
四、奴は北朝鮮の仲間ではないか。
五、アメリカが敵対している以上、日本も同一歩調をとるべき。

 連日のようにシリア情勢が伝わってくるが、どうなのだろう。
 まあ、小国日本はそれどころではないのだけど、本当はそうもいかない重要な地域なので。
 中東情勢が不安定になると、めぐりめぐって日本に不幸が押し寄せるので何も考えないで良いわけではない。

 では一個だけ考えよう!
 日本はアメリカ様の植民地です。日本のことはすべてアメリカに守ってもらいましょう。中東情勢に関しては一切発言せず、アメリカの後ろに隠れていて、誰の恨みも買わないようにしましょう。
 ここまで開き直れるなら何も言わない。というか、以下を読む必要なし。
 ついでに言うと、米英仏が何をやろうとしても、露中が邪魔するし。

 まずシリアの現代史をざっとおさらい。
1946年 フランスから独立。以後、半年に一回くらいの勢いで武力政変。
1948年 第一次中東戦争(イスラエル独立戦争)。以後、今に至るまでイスラエルの宿敵。
1970年 初代アサド、クーデターで政権掌握。バース党を纏めあげ、独裁権力を確立。
     事あるごとに皆殺し!連立を組んでいた共産党を殲滅し、
    アラブテロリストの大半を手なづける。
1990年 レバノンの実質的保護国化に成功。イスラエルに諜報戦で勝利。
1991年 海部首相、湾岸諸国を歴訪。呼ばれもしないのにアサドが挨拶に。
    海部も外務省もびっくり。
2000年 二代アサド(バシャール)、世襲。ただし周りは、先代からの重臣ばかり。
2002年 イラク戦争。
    せっかく間接侵略でのイラク支配が成功しようとしたのに、米国がぶち壊す。
2005年 レバノンから撤退。情報機関事務所を閉鎖も、誰も信用していない。
    というか、「情報機関事務所」って何???
2011年 社会不満の暴動が全土に拡大。

 何で誰も「シリア現代政治史」って本を書かないのだろう。
 先代アサドの本は二冊あるけど、イマイチ。やっぱ中東モノは英語かフランス語かなあ。
 フランス語モノは知らないけど、英語はキッシンジャーへの遠慮がひどくてイヤだけど。

 まあ何ともすさまじい国ですな。
 なんたって世界史上、共産党と連立を組んで勝った唯一の政党がシリアバース党ですから。
 元はハチャメチャだったのを、アラブのライオンこと、先代アサド様が纏め上げた。

 地政学的には地中海に面し、イラクをイランと挟み撃ちに、イスラエルをエジプトと挟み撃ちにする格好になっている。
 軍事力ではイスラエルにかなわないが、レバノン争奪戦で勝利したように、エスピオネーゼではモサドを凌駕。諜報戦能力に関しては世界最高(中東地域限定のローカルチャンプ)。

 内政では、田舎者の軍部と都会のアラブ商人という仲の悪い連中のバランスの上に、二代目アサド率いるバース党がのっかっている。
 ちなみに選挙があって大統領制だけど、実質はどう考えても世襲王朝。
 宗教的には少数派のアラウィー派が支配層で多数派のスンニ派が不満層。

 先代アサドは、長男に英才教育を施していたが事故死したので、イギリスで眼科医をめざしていた次男を呼び戻してあとを継がせた。
 現アサドは「話のわかる独裁者」と言われていたのだけど、「自分の流したデマにいつの間にかだまされる」という特異な才能のあるアメリカ人が本気で敵視するようなことになり、欧州の連中も仕方なくアメリカにつきあっている。これに関しては、アメリカ人でもネオコンの連中が飛びぬけてアホなので、同情の余地はあるけど。

 可愛そうなのは、アメリカがあんまり敵視するもんで、北朝鮮や中国と接近せざるを得なくなった。アメリカ人は「敵を作り、敵を結束させる」才能にもまた長けているので。
 ちなみにシリアとかイランって、「アメリカなぞ、どこの馬の骨?」という文明国なので、本音では北朝鮮なんか大嫌いです。利害関係が無ければ絶対に付き合うはずが無い。

 イカン。あまりにも長くなった。日付まで変わるし。。。
 ということで後半は次回。(というか、次回で終わるのか?)
 最初の問題提起を考えておいてください。

 さらに高度な人向けの問題提起は、
「シリアの体制崩壊を一番望んでいないのは、実はイスラエルでは?」

 あ、これはわからなくても大丈夫です。
 専門家も考え込む難問ですので。(耳学問と趣味の読書だけで中東情勢を語る私)
→2009年12月9日、2011年2月2日の記事も参照。

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