参議院って何?(1)―二院制とシェイエスの命題

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「参議院を制するものは日本を制す」という政治格言がある。
佐藤栄作・田中角栄・竹下登と、長期にわたり首相あるいは闇将軍として権力を握った政治家は皆そうであった。
改革の旗手である小泉純一郎も青木幹雄には従順であった。
なぜか。

 また、私はこの「砦」をはじめてからすぐに、衆議院選挙が終わる前から
「衆議院選挙よりも参議院選挙が重要である」と言い続けている。
なぜか。

 そのためにこの短期集中連載を始めたいと思う。
わかっているようでさっぱりわからない「参議院」を、私の憲法と歴史の知識を総動員して
読み解きたいと考える。

 まずは、日本近現代史を読み解く法則を頭と体にいれてもらいたい。

法則:指導力ではなく、拒否権に注目せよ!
=「何ができるかではなく、何をさせないか、に注目せよ」

 要するに、何かをしようとすると大変なのだが、他人の邪魔をするのは簡単なのである。

 さて、小学生でも知っている通り、日本の三権とは「立法・行政・司法」である。
「法案審査権・予算編成権・(独占的)起訴権」ではない。

 三権を司るのは、「国会・内閣・裁判所」である。
「内閣法制局・財務省主計局・検察庁」ではない。

 国会は、衆議院と参議院に分かれている。これを二院制とか両院制という。行政や司法の根拠ともなる法律は、権力分立の上で慎重に審議すべきである、との考え方である。
一院制だと極端なことに走りやすいという難点があるので、過激さを嫌う普通の国は二院制である。一院制の不利益は、特にフランス革命以降の大混乱がよく引き合いに出される。

 で、各国の二院制の考え方はというと。

 英国や戦前の日本のように、貴族と庶民の階級を代表して、特定の階級に極端に不利になる ことをさせない。
ドイツやアメリカのように、元々別の国だった地方(邦・州)の代弁的な議院をおく。
フランスやイタリアのように、とりあえず二院制にして慎重審議をするが、一方が極端に優越している。

 の代表的な三類型がある。

 今の日本はどうしてこうなったか?売り言葉に買い言葉である。
これは次回で解説する。

 さて、フランス革命期にシェイエスという政治家がいて、二院制への批判としてかなり説得力のある発言をしている。

第二院は賛成するならば不要であり、反対するならば有害である。

 まさに日本国憲法下の参議院?
ちなみに私は参議院をどうするかについての考えはあって、それは最終回で示したい。
その提案ができないなら、廃止もやむなしだが、それは現実的ではないし好ましくないとも思っている。

 参議院が見えれば現代日本が見える。

 乞御期待!

「参議院って何?」の今後の予定。
今回はちゃんと最初から計画だてています。

一、二院制とシェイエスの命題←本日終了
二、憲法上の権限、建前編・・・衆議院は優越しているらしい。
三、参議院議員の地位と選出方法・・・今さら聞けない、「半数改選」「地方区」「旧全国区」
四、人畜無害の時代・・・笹川良一と桜会。
五、比例代表拘束名簿式の導入・・・闇将軍の権力基盤に。
六、田中角栄は何を考えていたか・・・誰をどうやって当選させるか?
七、ねじれ国会と非拘束名簿式・・・竹下派の跡目争いと連立の時代へ。
八、憲法上の権限、実態編・・・実は参議院こそ最強の拒否権集団。
九、帝国憲法の貴族院・・・貴族院の権限を奪っていたのは?
十、参議院の未来・・・本来の使命

 今後は、時事・「宣伝の話」・「参議院の話」を中心に進めます。「亡国前夜」シリーズは、体調が良い時にやります。(笑)