「女帝」「女系」「女性宮家」 論点早見表

LINEで送る
Pocket

大前提。

皇室を語る時に大事なのは、先例、男系、直系の慣習法。憲法学の教科書の言葉で言うと、「固有の意味の憲法」かつ「実質的憲法」。この意味の憲法は、日本国憲法はおろか、帝国憲法よりはるか前に存在する。
日本国憲法など二の次。ちなみに、実務でも東大憲法学での通説でも、「皇族に人権はない」となっている。「皇族の人権」だの「結婚の自由」だのを言う人は、必要な法改正をしてからにすべき。二つ例を挙げると、「皇族に戸籍はありますか?」「皇族に選挙権はありますか?」。
我が国の実務における人権とは日本国憲法第三章に規定されている国民の権利の言い換えだけれども、皇族は国民ではないので人権などあるはずがない。
もちろん、皇族に対して人として非道なことをしていいという意味ではない。ただし、皇族の方々はいわゆる人権が極めて制限されている存在であって、故に尊い、という意味。
結婚に関しても、皇族の方々の意思がある程度は尊重されてしかるべきだが、完全な自由が許される存在ではない。現状で義務だけあって権利などほとんどないのだから、今さら「結婚の自由」だけ強調するのは、何かのためにする議論でしかない。
「皇族の人権」を強調する人は、立法論なのだから、現状のどの法律を改正すべきかを実務的に述べてからでないと、何の説得力もない。

さて本題。

・女帝/今、議論すること自体が悠仁親王殿下に失礼。

→悠仁親王殿下がおわすのに、なぜ議論する必要がある?
仮に導入した時、皇位継承順位は?
小泉内閣の答申での「年齢順」を採用したら、悠仁殿下は一気に4位に落ちる。その後、皇位の直系はどの系統に移るのか?
穴がありすぎて議論する余地なし。
現在採用する先例ではない。

・女系天皇/歴史を勉強せよ。

→先例がない。終了。
ただし、天智天皇や天武天皇は両親ともに天皇だった。このように、男系かつ女系の天皇は多くいらっしゃるが、こういうのは女系天皇とは呼ばない。

・女性宮家/この方法でなければならない証明がない。

→江戸時代の桂宮家の先例がある。皇族の減少で残った皇族の方々のご公務が負担であるという観点からは方法次第により構わない。
問題は女性宮の配偶者の方。
仮に皇族ではない男子が女性宮と結婚したとしよう。その男子を殿下と呼称するのは構わない。また、准皇族として扱うのも構わない。いずれも先例がある。ただし、女性宮と配偶者の二人の子は皇族になれないし、当然ながら天皇にもなれない。

女性宮が皇族と結婚したとする。その男子は皇族。天皇になる資格があるかどうかは、その時の直系との関係による。

現状では嫁入りする先の男性皇族がいないので、旧皇族家の復活をしてからになる。週刊誌では既に、東久邇宮家と賀陽宮家が具体的に上がっている。該当者の方々に親王宣下がない場合は↑の例と同じになるので、親王宣下があるだろう。
内親王の方々が、親王宣下された旧皇族家の方々とご結婚されるのが、皇位の安定継承に最も適切な方法ではないか。ここで「結婚の自由」など持ち出すべきではないが、ご本人同士がどうしてもいやだと言われた場合、手段がないのも確か。賢臣がかつての佐々木道誉や勧修寺経顕のごとく必死に説得するしかないのでは?

問題は、皇族(=親王宣下された旧皇族の方々)と結婚するなら、別に女性宮家を立てなくても良いのでは? 女性宮が皇族に嫁入りすればよいだけなので、となる。

「「女帝」「女系」「女性宮家」 論点早見表」への6件のフィードバック

  1. 慣習法として男系相続、長子直系優先相続というのは皇族間の相続争いが日本を二分する内戦を引き起こした歴史に基づくんだろう。
    皇位継承者が一意にただ一人に決まる。それは絶対に必要!
    それを覆そうとする議論は日本を内戦に追い込みたいのか?と思ってしまう。
    ところで民主主義ではないが、皇室の人気は欠かせない。
    今回の平成→令和の皇位継承を見ても、国民からの支持、憧れ、一体感は明らかだろう(ごく一部に嫉妬や対外勢力の支援を受けた批判勢力などもいるが、)、
    天皇および皇室は大変な仕事である。「なりたい。」と思えるのかどうかはわからない。しかし、これだけ国民から愛されている皇室なら、日本国民のために皇族復帰を希望する旧皇族も出てくるであろう!?
    ただ、現状では「皇族復帰を希望する。」という意思の表明は難しい。
    悠仁親王殿下の包丁事件にしても皇族復帰を希望した旧皇族の方々への様々な嫌がらせが起きることが想定される。
    皇族復帰に関する法律がない現状での皇族復帰の意思表明は、現在は一般人であるそのような旧皇族の方をそういうような嫌がらせや暴力から守る術がない。
    皇位継承と令和への改元で国民の皇室への理解と敬愛が深まっているのを感じる。
    そういった立法は東京五輪のあとでも間に合う気もする。

  2. なぜ先例が大事なのかが分かっていない人たちなので、
    どこまで伝わるか・・・

  3. めっちゃ良いこと書いてあるやん!
    歴史・伝統「に」学ぶとはこういうことだわ
    自分に拡散力ないのが残念…

  4. この早見表の、副産物と申し上げては失礼なのかも知れませんが、少なくとも現時点で無料で読める範囲の橋下徹氏の論は、完全に潰されたことになりますね。しかもよりによって、橋下氏ご自身が得意とする論法のひとつである「威勢の良いことばかり言ってる連中は、現状の法律を勉強しろ!」という方向から潰されたことになります。

    歴史や伝統に対するほとんど条件反射的とも言える反骨心をエネルギーに、大阪を改革していた当時の橋下氏は、とにかく最後の最後まであきらめず、物事をやり通すかたであったように記憶しております。けれどもここ数年は、今回の倉山氏とのやり取りに象徴されるように、いろいろな問題を思いつきで食い散らかしては、反論されると「現状をわかってない」、「じゃあお前がやってみろ」、「僕が大阪を改革したときは」などなど・・・。

    皇位継承を語る前提のエッセンスとも言えるこの早見表が橋下氏の目にとまり、一つひとつに対して水も漏らさぬ完璧な反論をしてくれればと願います。傍らで無料コンテンツだけ読んでいる私のような野次馬にとっても、それはさまざまなことを再確認するためのたたき台になってくれるような気がするからです。引退後の思い出話など、まだまだ橋下氏には早過ぎます。

  5. 「皇族方は女性宮家に賛成されている」という話を
    何度か耳にしたことがありますが、というか、
    最近もその話を聞き、思い出しました。

    実際のところ、皇室方はどのようなお考えなのでしょうね。

  6. 「女性宮家」についてですが下記の論はどう思われますか?

    江戸から明治初期の桂宮家最後の当主が淑子(すみこ)内親王という女性だったことを「女性宮家」の歴史的事例とする議論もあるが、宮家の財産管理のため、独身の内親王が跡を継いだということで、未婚のまま薨去(こうきょ)され桂宮家は断絶している。女性の皇族がはじめから当主となって興した宮家は歴史上存在しない。

    平安時代末期以降、皇統に連なる女性に「女院(皇太后や皇后、内親王などに宣下される)」という称号があったが、すべて一代で断絶している。皇室領(土地財産)を守るための身分であって、皇統を守るための役割はない。しかも、いずれも未婚である。

    すなわち内親王宣下を受けた女院は結婚してはならないのである。もし結婚して子供が生まれると財産が分散してしまうことになり、また皇位継承争いの火種にもなりかねないからである。つまり歴史的に見れば、「女性宮家を作れ」という人たちは内親王の方々に過酷な要求をしていることになる。

    以上『月刊Will 2017年10月号』「皇室は磯野家ではない」藤森馨 より引用

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA