最初に問題。ソ連は「衛星国」に対して内政干渉をしたことはありません。
少なくともその建前は守りました。
なぜでしょう。
よく大蔵省は軍隊組織の一枚岩だと言われます。
また日銀も一糸乱れぬ上意下達の組織だと言われます。
これ、似て非なるものなのです。
大蔵省は軍隊組織で、日本銀行はファシズム体質組織なのです。
この砦の昔からの読者さんは軍国主義とファシズムは宿敵だということは承知でしょうが、おさらいも含めて解説。
まず大蔵省の方から。
大蔵省の、特に主計局は「鉄の規律」と言われる結束力を誇ります。
最終的には、上司絶対です。
次官や主計局長が決めたことには誰も異議をはさめず、全員が従い動かねばなりません。
外部から見るとロボットの如く同じコトを繰り返してくる集団のように見えます。
ただし、最終的な決定が下るまでは意見具申の自由、議論の自由があります。
だから対外的に「増税やむなし、財務省の立場をわかってください」などと言いつつも、
内部では増税反対派かもしれないし、外で言われたことを持ちかえって「敵はこういうことを言ってます」などという形で上司に伝達するということも日常茶飯事です。
このあたりの「外には軍国主義、内では自由主義」の体質、久保田元国土庁次官の『役人道入門』が参考になると思います。
では、日銀は?
今でこそ3代続けてプロパーが総裁になっていますが、昔は5年任期の総裁を大蔵省出身者とわけあっていました。
だから、「十年に一度のプリンス」だけが保護される世界です。
また、総裁を筆頭とする9人の政策決定委員会がすべてを決めます。
他の人たちは決められたことを実行するだけです。
(その代わり、官僚としては極端に勤務時間が短く給料が高い。)
本当に意思を持たないロボットです。
理事や企画部が実務の中心、と言っても、総裁を筆頭とする9人の権限が強すぎて、他はお話にならない訳です。
たとえるなら、理事や企画部は「どういう戦い方をするか」の判断ができるだけで、「誰とどこで戦うか、そもそも戦うのか戦わないのか」の判断はできないのです。
9人の日銀貴族、まさにファシズム国の「党中央」そのものです。
ここで冒頭の問題。なぜソ連は衛星国に内政干渉をしないのか。
ソ連はファシズム(一国一党)ですから、ソ連邦という国家の上位に共産党が存在します。
ソ連の衛星国も、一国一党でそれぞれ共産党が存在します。
だから、ソ連が衛星国に干渉することはありません。
しかし、ソ連共産党は衛星国の共産党に指示命令をします。
ソ連(共産党)は衛星国共産党を通じて衛星国に支配を及ぼすのです。
ところで、衛星国共産党を日本銀行と置き換えてみましょう。
ソ連に代わるのはどこの国なのでしょうねえ?
冷戦が終わり、中国も資本主義化した以上、ソ連のように政府から独立し国家の上位に存在するようなファシズム体質の組織を通じて衛星国の国民を支配するようなことはないのですよねえ。これはきっと意味のない置き換えなのでしょう。笑
次回、「日銀の出生の秘密と愉快な人たち」
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検証 財務省の近現代史
政治との闘い150年を読む
光文社新書 税込861円
倉山さん
こんばんは。藤沢です。
内部における議論の自由というのは、致命的に重要ですよね。風向きをどんどん良い方に持って行って、財務省の考えを変えましょう!
また宜しくお願いします。
参考資料(この回紹介するの何回目だろう・・・。というよりこの話だけで本1冊書けそうですよね。出して頂ければ買いますよwww。
でも、それだけの価値がある重要な話だと思います。最近来られた方はどうぞ)
2009年8月15日:『軍国主義はファシズムの宿敵』
http://www.kurayama.jp/modules/wordpress/index.php?p=55
言葉の定義って大事ですよね。もうすぐ43になりますが、倉山先生のおかげでそういう議論の基本を知ることができました(恥を晒しています)。先生生徒の関係に年齢は関係ないと思います。年長者に対してある程度の礼儀を守る事は大切ですが、相手によると思います。これからも色々教えてください。応援しています。あと、財務省の近現代史を読んだ人なら、日銀を返してやるから増税はやめろがまさに正論だと理解でいきます。国会議員全員に買わせて読ませないといけませんね。
>通りすがりさんへ
礼儀の問題を持ち出して議論を矮小化し相手をたたくのがまさにファシズムそのものですね。これは何か笑いを取ろうとしてやってるんでしょうか?
そもそも育ちの良し悪しをあなたが勝手に判断して決めつけている時点で、共産主義者らしいレッテル貼りしかできないアンノと同レベルのバカであることが見て取れます。
議論がしたいなら、礼儀とかわけのわからないことを言わずにちゃんと論拠と証拠を示したらどうでしょう?議論で負けたからといって礼儀の問題を持ち出すあなたのような人には「卑怯」「姑息」または「負け惜しみ」という言葉がお似合いです。
悔しかったら、一発屋のようにコメントをいれて逃げ回っていないで反論しなさい。
反論がなければ、通りすがり=アンノということで確定させていただきます。
藤沢秀行様 「軍国主義はファシズムの宿敵」を紹介していただき、ありがとうございました。古くはスペイン、韓国、最近ではミャンマーが軍事独裁から議会制民主主義へわりとスムーズに移行した印象がありますが、その理由が解った気がします。次回は日銀の出生の秘密が明かされるようです。ちなみに、私の邪推は、今の日銀は田中角栄が大蔵省をレイプした時に懐妊して、お産婆の竹下登が取り上げたというものです。この時、お産婆がヘボだったので日銀は脳に障害を負ったようです。この出産をハラハラ見守っていた内閣法制局の坂田第三部長の懸念は120%的中してしまいました。
遅ればせながら読了しました。
2章3章については別個に書き下ろして欲しいくらいの充実した内容だとおもいます。
白川のトラウマ・原体験は慧眼と言うべきでしょうか。