皇室の大原則は、先例。
皇室は先例で出来上がっている世界だ。
そして最も重要な、一度も途切れることなく守られてきた先例が、皇位の男系継承。神武天皇の伝説より一度も例外は無い。
例の有識者会議でも、「天照大神の子孫であれば、男系でも女系でも構わないはず」と述べた識者がいた。確かに一理はあるが、二理は無い。
理由の第一は、古すぎる先例は先例にするにそれだけで嘉例ではない。ましてやその論者が、「宇多天皇や醍醐天皇は古すぎて先例にならない」と言っていたらなら、なおさら。宇多天皇と天照大神、どちらが古いかは一目瞭然。
そもそも人の世以前の神話を先例にしてはならないのが皇室の歴史。後光厳天皇践祚に際し、継体天皇しか先例がなかったことは当時から批判され、後の先例となっていない。ましてや天照大神まで遡らなければならないなど、先例にできない。その前の時代の先例に従うべき。
「天照大神の子孫であれば、男系でも女系でも構わないはず」に一理がある理由は、確かに天照大神以来一度も途切れることなく女系で継承されてきたならば、その理屈は通じる。ところが現実は、神武天皇以来、一度として例外なく男系継承されてきた。公称2681年の伝統は男系であって女系ではない。日本人の多数派はこの伝統を守ろうと言っているのであって、何を今さら女系なのか。それを「これまでの歴史を断絶し、新しい歴史を作ろうとする革命に等しい所業だ」と言っているのに気づかないのか。だから、一理はあっても二理は無い。
ついでに言うと、「男でも女でも年長者が相続」は女系ですらない。単なる雑系。
やたらと学のある人が「女系天皇」とか言い出した弊害は多く、誤った認識がまき散らされている。
最近だと「皇室で大事なのは、男系か女系かではなく、直系か傍系かだ」などと言い出す論者がいる。
これに対する反論は簡単。それ、立証して?
女系論者の特徴は他人には刑事裁判の原告並みの立証を求める癖に、自分は民事裁判の被告ほどの証明もしない。そして、絶望的なまでに相対評価ができない。
その最たる例が、「旧皇族は今はただの一般国民だ。皇族になるのは許さん」と言いながら、「小室圭さんにはぜひ皇族になっていただきたい」とか言い出す。どういう理屈だ?
話を戻すと、なぜ「男系か女系か」よりも「直系か傍系か」の方が重要なのか。
皇室の歴史は、「どの男系が皇室の直系になるか」の争いなのは常識。古代の政治はすべてそれだし、中世でも承久の乱や両統迭立、南北朝の動乱はどの系統が直系になるかの争いだった。「男系」なんて言葉が存在しない時代から常識だった。
そもそも、直系が大事なら、天皇が男子も女子も残さなければ、そこで皇統は断絶するではないか。
先例、男系、その後に直系。
女系論のおかしいのは、先例も男系もすっ飛ばして、いきなり直系の議論をすること。
最後に言う。
女系天皇は論外。今、「女性天皇」だの「愛子天皇」だのを言い出すとは、秋篠宮家に直系を渡さないとの宣言にすぎない。
愛子内親王殿下にとってこそ、大迷惑な話だ。