東京都知事を筆頭に四人の知事が、「緊急事態宣言」の発令を政府に要請したとのこと。
政府が再び緊急事態宣言を発令したいなら、以下の四点に関し、答える義務があるはずだ。
一、緊急事態宣言の効果の検証。
昨年の緊急事態宣言はコロナ禍に対し、どのような効果があったのか。そして今回はどの程度の効果を想定しているのか。
これは自然科学の知見で証拠が出せるはず。出せなければ、証拠が無かったとの推定が働く。すなわち、政策論としては証拠が無いと断言して良いので、その時点で採用する意味が無い。
昨年は未知の事態であるので仮説が許されたが、今回は前回の経験を踏まえた明確な証拠が必要であり、単なる仮説は許されない。むしろそのような行為は恐怖の流布を政府が率先して行うに等しい。
二、昨年以降の医療体制の整備。
昨年の緊急事態宣言以降、どの程度の医療体制の整備が行われたのか。
再び緊急事態宣言の発令が要請される根拠として、「医療崩壊」が挙げられている。昨年の緊急事態宣言に際しても、これは主張された。では、一年近くも時間がありながら、政府は何をしていたのか。
なお、「医療崩壊」を声高に叫ぶ東京医師会会長が、私立の開業医に対し協力を呼びかけないどころか、自身が経営するクリニックではコロナ患者を受け入れておらず、あまつさえ12月27日から年末年始の休暇を十二分に謳歌していたとなると、言語道断、笑止千万の珍事ではないか。この一事で以って、国民にさらなる負担を強いるなど輿論の理解は得られないのではないか。
三、緊急事態宣言に際しての補償。
緊急事態宣言では経済活動の自粛が呼びかけられるが、それは経済的損失を伴うので政府は憲法29条以下の諸法令に従い補償を行わなければならない。
では、どの程度の額の補償を行うべきなのか。
また、前回行われた補償及び今回行おうとする補償は、憲法学説上の相当補償説に基づくのかそれとも完全補償説に基づくのか。
四、「自粛警察」の取り締まり。
コロナ禍の深刻化に伴い、いわゆる「自粛警察」が横行し、社会不安を増大させている。緊急事態宣言後、政府はこの種の「自粛警察」を厳重に取り締まる意思はあるや否や。
前回の自粛時においては、休業要請に応じない私人に対し「自粛警察」の私刑が横行した。また、コロナ罹患者に対する「自粛警察」の社会的圧力は目に余る。また、本来ならば犯罪になるような事例すら全国に存在する。これらの放置は、法の支配を揺るがす事態であったが、疫病対策を理由に曖昧なままにされている。
法の支配の根幹は、暴力をあらゆる私人から取り上げ、政府が刑罰を一元的に独占することであり、それらは私刑を許さない点にある。ところが、前回の緊急事態宣言においては、法的効力が無い政府の宣言に強制力を持たせるために「自粛警察」による制裁が利用された面は否めない。
政府には特措法を改正して「補償付き休業要請」に「罰則」を付けようとの意見があると聞く。もし「罰則付き休業要請」を法制化するならば、ますます政府による刑罰の一元的管理を徹底し私刑は厳重に取り締まらなければならない。
政府は、いわゆる「自粛警察」を徹底的に取り締まる意思はあるか。
以上四点、すべてに十二分な回答が得られない場合、緊急事態宣言に反対する。ましてや「罰則付き休業要請」をや。