以下、皇室史学者かつ憲政史研究者として述べる。
EU離脱で分断の英国、エリザベス女王が相互尊重を訴え-異例の発言
倉山塾は帝国憲法を学ぶ場なので、英国憲法も叩き込む。
立憲君主は司法立法行政の権力を手放しているが、警告・激励・被諮問の三つの権利はある。この三つの権利を行使することで、国政の影響力を行使することが望ましい。
世界中で憲法学の教科書とされているW・バジョット『英国憲政論』では、君主が国政に影響力を行使する適切な方法にういて延々と語っている。
日本国憲法(宮澤憲法学と吉国一郎以降の内閣法制局)のように、「天皇はロボットだ!政府の決めたことにメクラ判を捺せ」などと無礼なことは言わない。
もちろんイギリスとて、原則として君主の発言は首相との内奏の場に限られ、その発言が漏れることは非立憲的とされる。
しかし、原則は絶対ではなく例外はある。
そもそも、非立憲とは何か。違憲との違いは何か。
違憲とは、法により強制される規範。法により強制されて守られると合憲。
それに対し、立憲とは法により強制されないのに、望ましいから守られる政治的規範。だから、後で責任をとれるなら例外として守らなくてよい場合もある。原則を守らないのは非立憲だが、責任をとれれば非立憲ではない。これが英国憲法の運用。
当該発言、イギリスでも変わり者は「女王は立場を控えよ」と言うだろうが、憲法学者は誰も問題にしない。