96条改正とは、二段階改正論

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 その昔、菅原裕という偉い偉い弁護士の先生が松本烝治というこれまた偉い偉い博士の元にお手紙を出しました。
その中身は「今の日本国憲法は無効ですよね」と同意を求めるもの。
菅原弁護士は自信満々で、当然松本博士に褒めてもらえるものと思っていました。
ところが返事は
「そういう非現実的な手法ではなく、憲法96条2項の改正規定を緩めるのと、どうしても問題がある9条2項の削除を先行すべきでは?」と。
これでもかと期待がはずれた菅原弁護士がもう一度手紙を出そうと思っていたら、1週間後に松本博士お亡くなりになられたとか。

 この話を少し解説しておくと、松本博士は占領軍の憲法押し付けに徹底的に抵抗した人です。
当然、本来ならば日本国憲法など無効だとわかっている訳です。日本の伝統法にも国際法にも反しているので(この辺りは『だれころ』をどうぞ)。

 ただ一旦、憲法として定着してしまっているのは事実で、しかも何が何でも条文を変えたくないという勢力まで出現して、
しかもその人たちは衆議院か参議院のどちらかで三分の一を占めれば、その我がままを通せてしまうのですね。
事実上変えられないし、ましてや「本来は無効だ」と言っても通らないならば、
先に改正規定を緩和し、同時にどうしても困る条文だけを変えてしまおう。
本当の自主憲法はその後で創ろう、という考えです。

 以上、96条を考える大前提でした。元々の憲法96条改正とは、本来の憲法を制定する前段階の先行的手法です。

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