かつての強敵に弔意を表したい。
できるならば敵ではなく、味方として戦いたかった。
しかし、強敵と戦えたことを誇りに思う。
香川次官の功績は、AIIBの粉砕と特例公債法の延長だろう。
中国共産党がロシアと欧州を引き連れてAIIBを創設しようとしたとき、香川次官率いる財務省は、これを単独で粉砕した。
同盟国の米国など、ただ見ているだけだった。
英国やドイツなど、我が国の威勢に恐れをなす有様だった。
日本海開戦以来と言えば大仰だが、
プラザ合意を撥ね返した、山口光秀次官と大場智満財務官以来の快挙とは評して良いと思う。
痛快だった。
退任間際には、特例公債法の延長を発表した。
日本国憲法の欠陥として、国家予算の半分を形成する予算法案には衆議院の優越が無い。
結果、参議院の抵抗により一年ごとに総理大臣が首を差し出して、特例公債法を中心とした予算関連法案を成立させるという悪弊があった。
それを三年前に、政争の具としない合意を主要政党間で形成し、法制化した。
その時限が切れる今年、さらなる延長を辞め際の香川次官が率いる財務省が打ち出した。
今のところ明確に賛成を打ちだしているのは次世代の党だけだが、おそらく秋の臨時国会で通るだろう。
憲法政治の在り方を考えるうえで重要であるし、真の憲法論議を進めたと評される日も来るだろう。
我々は、昨年の十%消費増税は、阻止した。
しかし、負けが決まってからの財務省の猛攻は、あきれるほどに見事だった。
一昨年と違い、昨年はこちらが包囲する側だったが、そこからの反抗は舌を巻くばかりだった。
最後の一瞬まで勝った気がしなかった。
現に、増税法から景気条項をはずさせ、総理大臣に中止ではなく延期だと約束させ、しなくてもいい解散に追い込み、増税を阻止するには総選挙が必要であるとの先例まで作った。
本当の勝者が誰であったか、来年にわかるだろう。
前回はこれは香川さんに勝ちを譲ってもらった。
次は我々が負ける番だろう。
だが、我々も簡単に負けはしない。
もう香川さんは敵ではない。
かつての強敵に、弔意を表する。