近代日本政治思想史を四分割する(8)―徳富蘇峰

LINEで送る
Pocket

 随分久しぶりですが、このシリーズ終わらせてしまいます。
 おさらいしておきますと、「右対左」とう構図だと世の中よくわからなくなる、という趣旨ではじめました。で、せめて四分割はしようと。

 第一の立場:日本国も、日本政府も嫌い
⇒筋金入りの左翼。実は少数派。

 第二の立場:日本国は嫌いなくせに、日本政府は大好き。
⇒常に中枢。腐れ官僚。宮内庁・日銀・最高裁・・・。

 第三の立場:日本国を愛するから、日本政府を批判する。
⇒真の保守。日露戦勝後は常に少数派。

 第四の立場:日本国を愛するから、日本政府を批判しない。
⇒「善良」な日本人。

 左右の対立だと、第一の立場と第四の立場だけになってしまうのですが、本質は「第二の立場対第三の立場」ですね。現在、第一の立場は第二の立場に合流していますが。官房長官とか与党参議院会長とか。

 さて、本日は徳富蘇峰。
 第四の立場の筆頭です。こういうのを御用学者と言います。
 大正昭和期の論壇の大御所です。
 戦時中は「東條英機と徳富蘇峰には不敬罪が適用される」とか言われていました。
「支那事変の難局に直面している今なすべきことはアメリカに喧嘩を売ることだ」とか、無茶苦茶な煽り方をした人です。
 今で言うと、「この長期不景気に直面している今なすべきことは消費税を増税することだ」
みたいな議論です。
 どういう理屈でそうなるのかわかりませんが、恐いのは徳富本人は善意だということです。       
今で言うと、年末の朝までテレビで大声で下品に怒鳴り散らしていた池田信夫みたいなもの?
 で、誰が得をしたかというと、第二の立場の人たちになります。
 要するに、利用されている訳です。

 第二の立場と第四の立場の共通点は、愛国者に見えてしまうことです。
 ところが、彼らが擁護しているのは国家や国民ではなく、政府や政府の特定の人たちだったりするのです。

 第三の立場と第四の立場のおさらい。
「特攻隊は犬死である」
 これを聞いただけで、それ以上尋問もせず反論もさせずに激怒するのは第四の立場。
 お国のために死んでくれた人に敬意を表しつつ、誰が犬死したのかを追及するのが第三の立場です。

『総図解 よくわかる日本の近現代史』

(新人物往来社、税込1470円)

好評発売中です。続編、乞御期待。

 日本政府や特定の官僚たちの誤りをこれでもかと追究しているので、
ある意味で反日的記述?
 違います。政府や官僚は国家の一部であって、国家そのものではありません。
 国家や皇室を持ち出して国民に政府や官僚への盲従を強いるのは許せない。
 蘇峰をことごとく論破しながらも憤死の如く早世に追い込まれた吉野作造の言葉です。