今考える、憲政の常道

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 まずは形式論のみで。
衆議院総選挙で選ばれた総理大臣が辞意表明した。
与党第一党代表の任期途中での退陣表明でもある。
(実は、鳩山代表は小沢前代表の任期を引き継いでいる)
このような場合、あらかじめ決めていた副総理を後継総理として政局に空白を作らないようにすべく、与党はすみやかに副総理を新たな党代表に選出すべきである。対立候補など不要。
総理就任後すみやかに政権の信任を得るべく衆議院を解散すべきであるが、今回は参議院選挙も近いので、同日選挙にすべきである。
よって、菅副総理兼財務大臣が衆参同日選挙を行い、国民の信を問うべきである。
財務大臣以外の閣僚は、すべて留任させればよい。

 ただし以上の理屈、嫌がる人はいるでしょうね。
まず、民主党代表の任期は9月30日まで。
では今回選ばれるであろう新代表(総理になる)の性格は?
暫定政権ならば、また選挙?
本格政権ならば、一日で決めて良い?
解散を要求している野党も、本音は同日選挙は嫌でしょうね。
「筋を通さなかった」と追及する材料にしたいのが本音でしょうから。

 ちなみにこのような場合、戦前の憲政の常道ならば誰が後継総理になるでしょうか?

谷垣禎一自民党総裁です。

 首相の身体の事故(病死・暗殺・遭難)の際は、副総理格の大臣が後継内閣を組織しました。
しかし、与党が政策に失敗した場合は、西園寺公望元老が野党第一党総裁に政権を委ねました。その後、一年以内に衆議院の解散総選挙を行いました。
今回の民主党政権の「総選挙⇒政権交代」を「英国流民主主義を初めて実現した」と持ち上げる舌の根も乾かぬ内に、「本家英国でも二大政党制は終わった。第三極の時代だ」とひっくり返す。
戦前の憲政の常道は「政権交代⇒総選挙」だから不充分な民主主義だ、と罵り続けられました。
しかし戦後も、「芦田⇒吉田(⇒鳩山)」の政権交代では、戦前型の政権交代が行われました。

 もう一度、日本国憲法を離れた憲政論を考え直してみるべきでは、「日本国憲法の条文で禁止されていなければ何をやっても良い」という思考から抜け出すべきではないでしょうか?

 ちなみに政策的には、菅さんでも誰でも、「増税議連」を無視してリフレ政策を採用してくれればよいです。
ただし、菅氏にしても「シンガンス事件の総括」を求めたいですし、
谷垣氏にも、「中国における口にするのも憚られる疑惑」があります。

 この砦で何度も申していますが、
憲政の常道とは、国家本位の政党が二つなければ成立しません。
これは吉野作造が生涯主張したことです。(もちろん、国民は国家に含まれます。)
必要なのは、耳障りが良い憲法の条文ではなく、陛下の与党と陛下の野党です。
ところが今や一つもない。
ここに危機の本質があります。

 ところで、TBSが昨日の小泉さんの発言を報道。
曰く、
「今までは自民党のせいにすればよかったが、民主党も与党の責任を自覚してもらうために、まだ政権を維持してもらいたい」と。
意外と深い発言と思います。
政局論としても正しいでしょう。与野党ともに衆議院選挙なんかやりたくないでしょうし。
また、野党がねじれ国会で民主党を揺さぶるのを、民主党の心ある人は望んでいますし。

 大事なことはこの半島危機に際して、日本が何ができるかです。

 相も変わらず「小沢が最大実力者」と思っている人へ。
幹事長が小沢氏やその影響力が及ぼせる人でなければよいのですか?
私の注目は、輿石・高嶋の後任です。

 散々小沢氏のことをこき下ろしてきましたが、是非財務大臣に就任して欲しいです。
そして一ヶ月以内にできるデフレ脱却議連の政策を全部実行してくれたら、支持します。

 もう一つ、皆さんが忘れていること。菅副総理、政調会長も兼ねています。政調そのものを廃止したのですが、これは誤りです。何のために政調会長が閣僚となるかと言うと、与党内政調でなされた議論を政府に伝えるためですから。本当は幹事長も閣僚でなければいけません。それが英国型政府与党一体化です。その意味で、政調会長人事と言うより、政調機能を復活させるかには注目しています。

 昔から思っていたこと。
理想を持たない現実主義は、真の現実主義ではない。
現状の追認にすぎない。
世の中には、小ざかしき現状主義者が何と多いことか。