風説の流布が甚だしいので、一言、残しておく。
今ようやく、旧皇族の男系男子孫すなわち本来ならば皇族としてお生まれになるはずだった方々の、皇籍取得が現実になろうとしている。
これをどうしても阻止したい勢力があるようだ。何が気に入らないのか、よくわからないが。
動機はともかく、一部には確認のしようがない風説の流布を行う者もいる。
曰く、「〇〇陛下が旧皇族の男系男子孫の皇籍取得には反対だ」と。どの陛下かは、相手を見て変えているようだ。
証拠の信憑性を確認しようがない主張で議論で言い負かそうとする姿勢は感心しない。
現在、「陛下」と呼ばれる方は四人いらっしゃる。上皇陛下、皇太后陛下、天皇陛下、皇后陛下である。「〇〇陛下が~」と主張する御仁は、ご本人から聞いたのか。さも聞いたふりして「女性宮家、女性天皇、女系天皇を実現するのが大御心である」と吹聴する賀、では天皇陛下が一度でも「愛子を天皇にしてくれ」とおっしゃったのか。
陛下が弁明できないのをいいことに、好き勝手な風説を流布するとは、不忠極まりない。
さて、そういう話を聞かされた人の中には、「もし本当にそうだったらどうしよう」と心配するひともいるだろうから、以下述べる。
大前提として、時の天皇陛下、治天の君であっても逆らえない掟が皇室には存在する(治天の君とは皇室の家長のこと)。
皇室史には「主上御謀反」「非議の勅命は勅命にあらず」との言葉すら存在する。
こうした言葉は悪用をいくらでもできるので軽々しく使うべきではないが、長い皇室の歴史において、天皇陛下や治天の君であっても破ってはならない掟が無数に存在する(この掟のことをかつての国体学では、貫史憲法と呼んだ)。
その最たる例が、皇室を潰すこと。なぜこれが許されないかは、自明の理であると思う。時の天皇であっても、皇室を潰すことは許されない。
皇室は先例の積み重ねである歴史が法となっている世界であり、どの先例に倣うかを議論するのが皇室の法。新儀は不吉であり、無理やり行うものではない。
さて、風説の流布者が言うように、仮に〇〇陛下が「何が何でも女性宮家、女性天皇、女系天皇を実現し、云々」と言い出したとしよう。その時に、陛下がおっしゃり、時の政府と国民が指示したならば、止める方法はない。
ただし、〇〇陛下がおっしゃったとしても、即座に「承詔必勤」で従わねばならない訳ではない。
長い皇室の歴史には、恣意的な皇位継承を強いた治天の君もいらっしゃる。たとえば、保元平治の乱の原因を作り、武家政治を招いてしまった鳥羽法皇。あるいは、両統迭立を起こし南北朝の動乱を招いた後嵯峨上皇。古き歴史を訪ぬれば、壬申の乱から奈良時代を通じた政争を引き起こした天智天皇。
そのような惨事がないように、皆で話し合うのが皇室の掟だ。
日本国憲法の現代においても、皇位継承は政治の最大の問題であることは変わりはない。皇位継承が穏やかに行われることが、日本国が健在であると示すからだ。
このままいくと、悠仁殿下に皇位は継承される。この流れをゆるがせにしてはならないと政府の有識者会議は答申したし、私も全面的に賛成する。
今考えるべきは、悠仁殿下の御代をどのようにお支えするかだ。決して、悠仁殿下から皇位を取り上げるような陰謀に与してはならない。それが皇室の掟だ。
さて、それでも悠仁殿下から皇位を取り上げようとする気か。
そのような企みに、陛下の御名を振りかざすなど、逆臣の所業としか言いようがない。