宣伝の話(8)―スエズ動乱の歴史認識

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モサドvs.MI6
「世界一狡賢い諜報機関決定戦」を理解するのに必要な、当時の戯れ歌。

なせば成る、なさねば成るぬ、何事も。

ナセルはアラブの大統領!

 1956年、第二次中東戦争、勃発。
 ナセル・エジプト大統領は、イギリス・フランス・イスラエルと交戦状態に入った。
 アメリカが突如としてソ連と手を結んでエジプトを支援し、英仏は泣く泣く撤収する羽目に。

 ではこの戦争の勝者と敗者を確認しましょう。

イスラエル:軍事的に圧勝。経済封鎖を実力で除去。
英仏:スエズ運河の確保どころか、中東での覇権を喪失。米国に頭が上がらなくなる。
米国:中東での覇権を確保。
ソ連:子分のエジプトを守る。
エジプト:スエズ死守。アラブ諸国の尊敬を受け、ナセルが盟主に。

 ここで法則。
その一:戦争の勝敗は目的の達成により決まる。
その二:戦闘で勝った側に、戦勝者も戦敗者もいる。
その三:戦闘で負けた側に、戦勝者も戦敗者もいる。

  以上の法則で見ると、
 英仏が踏んだり蹴ったり・
 エジプトは戦闘でひどいめにあったが勝った。
 米ソは超大国どうし自分の手を汚さずやりたい放題。
 イスラエルは小国なのに上手く立ち回った。
といったところか。

 私が修行時代、とある学会にイスラエルの戦史部長がやってきて講演。
 曰く、
「いやあ、第二次中東戦争では、我々は戦争などしたくなかったのだが、英仏が無理やり脅してくるので、我々はイヤイヤ参加したんですよ。その後の展開はタマタマ上手くいっただけですよ。もちろん、運もよかったですけどね。あはははは。」と。

 最前列で聞いていたのだが、思わず「嘘吐き」と叫んでしまったら、睨まれてしまった。
 他のお偉いさん方は、うんうん頷きながら感心した表情で聞いていましたが。
そのお偉いさんの内訳は、普通の国だと「教授」とか「将軍」と呼ばれ、社会的地位が怖ろしく高い人たちばかりでした。
 そんな人たちが、本人すら「信じてもらいないだろうな」と思って話している内容を、
「もしかしてこの人たち本気で信じているの?もしかしておちょくられている?」と疑心暗鬼にさせかねない態度を全員でとれることですね。
 日本の防諜は完璧だ?!

 ちなみに、日本では諸外国と違い、大学教授が社会でまったく尊敬されていないとか、そもそも「将軍」という名称すら抹消されている、などというと、罰金100円と重禁固20年の罪になります。

 罰金100円は名誉毀損で。
 重禁固20年は国家機密漏洩罪で。

 え?日本には国家機密漏洩罪どころか、スパイ防止法もないですって?
 北朝鮮の工作員が協力者にこれを信じさせるのに必死だったとか。
「まっさかぁ?そんな馬鹿な国があるわけないでしょう?報酬をケチりたいから見え透いた嘘を言うんでしょう?」と、反論されて、説明に困ったとか。

 恐るべし。不思議の国、ニッポン。
 これでいいのか?

 以上、まじめに歴史を勉強しましょう、という話です。陰謀論の前に、基礎的なことで騙されないようにしないと。。。