書評:立憲君主 昭和天皇

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偉大なノンフィクション作家が誕生した。

譲位法案通過に合わせて出された天皇本は、はっきり言って一冊除いて売れていないのだけど、最近大著でありながら急上昇中の本が登場。

 

 同著は産経新聞での連載小説を大幅に加筆修正。ストーリーの順番も入れ替えている(はず。私の記憶が正しければ。連載時、「あ、まだ虎頭要塞で戦っている~とか思っていた。笑)。
 著者は、産経新聞『昭和天皇実録』取材班キャップ、ということなのだけど、私にとっては『正論』にデビューさせてくれた編集者であり、大恩人。
 新人の発掘がうまい人でもあり、『正論』在籍時に見出した人を順にあげていくだけでも、河添恵子、上念司、田中秀臣、宮崎岳志、と、保守に新風を吹き込んだ名編集者というのがわかると思う。
 ちなみに、川瀬さんは早稲田大学雄弁会で、中央大学辞達学会の上念さんや宮崎さんとは同学年。私から見たら、三年先輩。
 さて、内容は上・下巻で合わせて 840pの大著。ではあるのだが、私は3日で読んだ。長距離の移動が多かったので、その合間に。元が連載小説なだけに、読みやすい。
 テーマは「立憲君主として昭和天皇がどう生きられたか」であり、終戦の御聖断から始まり、御生誕から崩御までの生涯を描く。全十四章中の十二章が占領期なので、戦後はエピローグ的。
 抑えた筆致でありながら、著者の“熱”が文章から伝わってくる。自身で文章を書かれていたこともあったけど、『正論』執筆陣の中でもこれほど尊皇の保守のかたもいないのではと思えるほどだったし。
 昭和天皇の公式の伝記である『昭和天皇実録』全60巻をはじめ、膨大な注釈が各章ごとにあり、著者が「一つも間違えることができない」との緊張感で取り組んだというだけあって、かなりの労作。巻末の約五百冊の参考文献も圧巻。
 あとがきで私の名を協力者として挙げていただいている他、昔の学術論文なども引用してくださっている。
 最近、軽い読み物が流行だけど、「労作」こそ読者にとって読みごたえがあるのではないだろうか。
 歴史もののノンフィクションと言えば、半藤一利氏や保坂正康氏の独壇場の感があったけれども、真正保守のノンフィクション作家の登場に、新たな時代の到来を感じる。
 とはいうものの、著者を育てるのは読者。昭和天皇を語るうえで必読の、丁寧に事実を抑えつつ、内面にも迫った傑作。
 推薦します。

「書評:立憲君主 昭和天皇」への2件のフィードバック

  1. 力作。保阪や半島(わざと誤字)の文章なんてガキレベルに思えてくる。
    倉山先生の指し手が最近おとなしめなのが気になる。
    「鬼手」を期待しています。
    「穴熊の姿焼き」ならぬ石破茂もしくは村上誠一郎の「丸焼き」実現を。

  2. 関係ない話で恐縮ですが、新刊本といえば
    保守業界待望の「裏切られた自由」が
    ようやく発売されましたね。

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