増税派のタワゴト―後世にツケを残すな

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 先月30日の村井宮城県知事が、国債の日銀引き受けを否定した根拠がこれです。
 経済学的にはとっくに終わっているのですが、まさかこんな恥ずかしい理屈を言い出すとは、
つくづく同情申し上げる。

 そろそろ日本の借金は1千兆円に達しようとしている!
 日本人は赤ん坊の時からウン百万円の借金を背負っていることになる!
 国の財政は破産寸前だ!
 もはや消費税の増税しか解決策はない!!!

 大学生くらいの時は私も信じていたので、圧倒的多数の日本人が信じても仕方ないですけどね。まさか宮城県知事がこんなことを言い出すとは思えなかった。www
 ちなみに私が所属していたインカレサークルに、
「ノーベル経済学賞を目指します!」といって本当に頑張っていた東大生がいて、「何を言ってんですか?倉山さん」とレクチャーしてもらったので、「日本国は借金だらけでサラ金財政」など大嘘だと四年生の時にわかりました。
 その中で、一番簡単な説明を。
「日本国は借金だらけでサラ金財政、だから増税を」とか言ってる人には、以下の聞き方をしてあげましょう。

尋問一「日本国の借金と言いますが、誰の誰に対する借金ですか?」
 約7%は外国人(もちろん、含・法人)が買ってますが、93%は日本国内で消化してます。
 つまり、日本政府の日本国民に対する借金です。

尋問二「では借りた金を返すのに、借りた相手の財産を巻き上げるということですね」
 そうです。
 言わば、ヤクザに金を貸したら、「ショバ代をもっと払ったら返してやる」と言われた様な物です。

尋問三「つまり日本の借金というのは嘘で、日本政府の借金、日本国民の債権ですね」
 はい。
 ツケを払うのは政府であって、国家でも国民でもありません。むしろ国民の財産です。

尋問四「では、日本の借金とは、政府を国家と同一視する官僚のタワゴトですね」
 はい。
 国家は、政府と国民で成り立ちます。政府が国民を無視して国家を名乗ることを僭称と言います。

 尋問三で、もう終了しているのですけどね。
 相手がごまかさずに本当のことを答えたら。
 私だったらさらに以下。

尋問五 戦時中の宣伝映画では、「政府は我々国民から国債という形で借金をします」と募債していたのを知っていますか。

尋問六 今の増税原理主義者の皆さんは戦時中の軍部ほどの誠実さを持ち合わせていない嘘吐きですね。

 さらに応用編。なぞなぞではない。

尋問七 この世で踏み倒してよい借金ってな〜んだ?
 政府の中央銀行からの借金。
 そんなに一千兆円の借金が怖いなら、日銀に強制的に国債を買わせればよいのです。
 今まで国債を買ってくれていた人には、お札を刷って返す、ということです。
 別にそんなことをする必要がないし、求められてもいないのでしませんけど。
 これをやる必要がないというなら、増税なんてする必要はもっとないのです。

「日本国は借金だらけでサラ金財政など大嘘」とか、
「お札を刷ってヘリコプターでばら撒いた方が、今の日銀よりはるかにマシ」とか、
アメリカの大学生のレポート以下の授業でのディスカッションレベルの命題なんですよね。

 国辱だわさ。

 それはさておき、村井知事は増税の根拠を答えられなかった。

「増税派のタワゴト―後世にツケを残すな」への0件のフィードバック

  1. 例えば超長期国債を発行して、50年後60年後に震災国債償還終了というニュースを流すように今から仕込んでおかないと、また数十年後に同じ津波災害を引き起こすことになります。
    つまり増税回避、震災国債発行は未来の国民への警鐘でもあるのです。

    世の中には食いしん坊だかなに辛抱だか知りませんが、税金を納めることが誇りだという奇特な人もいますから、そういう人は喜んで震災国債を買ってくれるでしょう。

  2. こんばんは。

    >倉山先生
    レス返遅くなってすみません。
    確かに今の日本は教養が収入以上に格差を広げていますね・・・
    先日のコメント冷静に見ると情けないです。

    やはり、私も感じていましたが、日本を良い方向へ曲げるには教育が重要ですね。

  3. こんばんは。
    知事の理屈は、財務省他増税大好き派の方々の常套句ですよね(笑
    理屈は理屈でも、もう少しまともな屁理屈でも作れないものしょうか…
    このエントリーの正論は非の打ちどころがありませんから、僕は少し視点を変えて財務省が如何にウソを吐くのが下手なのかを書いて見ます。

    財務省のHPで日本の財政を考えるというサイトでは現状を放置することの危険性が説かれています。
    ただ、同じ財務省見解でも海外格付け会社向けの意見書では少々トーンが異なるのです。
    では、一国の財務を一手に預かる財務省が同省HP内で日本国債のデフォルトについてどう捉えているかを見てみましょう。

    財務省HP内「日本の財政を考える」より抜粋
    〜借金の累増は活力ある経済・社会の大きな足かせとなります〜
    国の財政は、普通国債残高が600兆円を超えると見込まれるなど、極めて厳しい状況にあります。
    国の債務の累増に伴い、国債費が増加し、(中略)使うことができる経費が圧迫されています。
    近年長期金利の水準は低い水準で推移していますが、今後、仮に財政の持続可能性に対する懸念が高まり、金利の水準が急激に上昇すれば、利払費が大幅に増加することとなり、歳出面での大きな圧迫要因となります。また、金利の急激な上昇は、民間の設備投資を抑制するとともに、多額の国債を保有する金融機関のバランスシートを傷めるなど、国の経済全体に大きなマイナスの影響を与えることにもなりかねません。(抜粋終わり)

    決して、ウソは書いていません…が、これではまずいと誰が見ても思うはずです。万が一の条件下であっても、国の財政を預かる財務省が国民に対して財政の持続性に懸念を示しているのですから。
    当然、国債デフォルトリスクを懸念しているということなります。
    そう言えば、菅前首相も我が国とギリシャを同列に並べて、ギリシャのようになるので増税が必要だと力強く演説していたこともありました…。

    では、次にそのデフォルトの可能性について、同HP内から「外国格付け会社宛意見書要旨」(英文)を見て見ましょう。(主要箇所のみ抜粋)
    ・日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。
    ・マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国
    ・その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている
    ・日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高
    と専門家らしくきちんと自国通貨建て国債のデフォルトはありえないと断言してくれています(笑
    国民や不勉強な政治屋はアホなので平易に説明するときに、万が一の場合を想定し「現状財政は危険」と脅かしておられるのに対して、英語を理解できると想定した相手?投資家らには、専門家らしいきちんとした正論を述べているわけです。
    これを二枚舌と呼ばずして何と呼べばいいのか、困ってしまします。
    国民向けには、「債務過剰」と扇動し、投資家向けには「世界最大の債権」を強調する理由は何なのでしょうか…
    国民の皆さん、これは怒るべきではないですか。
    僕は、国民を冒涜するな、あなた方も同じく日本国民なのですからと総務省に意見書を送りました。
    世界最大の経常黒字国の我が国が、デフレ時に震災復興財源を増税に頼るという史上一度もない愚策を履行しようとするのか理解できません。
    話は変わりますが、超絶円高ドル安で世界最高の外貨準備も為替損失がどえらい金額になっているはずです。大メディアでは全く報道されませんので注目されていませんが、すごく気になるところです。
    というかこれを売って復興財源にしたらどうでしょうか。一石二鳥です。
    エネルギー購買はドル建てなので、脱原発で貿易赤字国に転落しつつある我が国では、到底売ることはできないのでしょうけど、広く議論はなされるべきと思います。
    同時に、現在進行形の世界同時不況にこのドルがどこかの国へのスワップ用に使われないか危惧しています。
    長文失礼しました。
    http://www.zaisei.mof.go.jp/

  4. おはようございます。
    先日はありがとうございました。
    僕は何もできませんでしたが、思っていたより多くの学生がいて刺激を受けました。
    自分の将来について考えさせられました。

    今回の記事ですが見事なまでにわかりやすい尋問とその回答。
    僕でも容易に理解できるくらいです。

    >国家は、政府と国民で成り立ちます。

    という大前提を忘れていました。

  5. 倉山さん
    おはようございます。藤沢です。
    ここの所仕事が立て込んで書き込みが出来ずすみませぬ。

    きれいに整理頂き、有難うございます。やはり論理の専門家が行うと違いますね。世論調査でも、増税反対が賛成を逆転致しました。あとは野田内閣そのものを落とせば、それで終わりではないでしょうけど、局面は有利になると思います。

    日銀はさらなる金融緩和をせよ!被災地の雇用を守れ!
    それではまた。

  6. 河北春秋

     チリ、ニュージーランド、ブルネイ、シンガポール。4カ国が関税をなくす自由貿易協定を結んだのは5年前。日本では話題にもならぬ、ささやかな出来事だった▼3年ほどして突然、米国が「仲間に入れてくれ」と言いだした。翌年には豪州やベトナムなども加わり、経済連携を目指すことになった。環太平洋連携協定(TPP)のごく簡単な経緯だ

     ▼当時、米国はリーマンショックで経済がめちゃくちゃ。輸出を増やして経済を立て直すことに活路を見いだした。TPPに日本を引き入れ、関税をなくして何でも日本に輸出しようという狙いがあるらしい▼TPPへの参加問題で野田佳彦首相は、来月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)前に決着する考えを表明した。そういえば、前首相が「開国の決断をした」と演説したのは、1年前のAPECだった

     ▼去年の約束はいかに―とつつかれるわけでもあるまい。TPPに入れば、農業だけでなく、金融、保険、公共事業、医療などの各分野でも開放要求は強まるはずだ。ゆっくり議論して時間稼ぎをしていい▼故井上ひさしさんは家族経営の伝統農業を「日本にはこれしか農業のやり方はない」と語った。TPPより急いでほしいのは被災農地の復興。井上さんが称賛してやまなかった豊かな土地の回復だ。

    2011年10月12日水曜日
    http://www.kahoku.co.jp/column/syunju/20111012_01.htm

    前門の復興増税 後門のTPP・・・・・何と河北新報がTPPの問題点を端的に問題提起してくれました。これもALEX効果と思われます。感謝!

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