アンドリュー・ジャクソン一代記?―アメリカ合衆国はこんな国(3)

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 アメリカ合衆国の国史、これをそのまま事実と受け取るのは、ほとんど手塚治虫のマンガを実証主義と呼ぶくらい恐ろしいです。
 さすがにインディアン民族浄化(大虐殺でも可。典型的なジェノサイド)は誤魔化しようがない部分も多いのですが、米国建国史の無知誤解が日本人の無意味な対米コンプレックスになっているところもあるので、やや詳解。
 日本の外交官試験に出したい問題。アメリカ合衆国が大国になったのはいつですか?

 1783年の独立戦争終結後、USA(アメリカ国家連合)は世界の辺境の地として欧州と無縁の化外の地として扱われた。だって、フランス革命戦争やらポーランド分割やらで忙しいのですもの。ちなみUSA議長(今の大統領)はワシントンから第六代アダムス二世まで、すべて特権階級出身なので、「バージニア王朝」と呼ばれる貴族趣味の国家連合です。奴隷制に基づく階級国家振りを謳歌しています。

 で、その後、ナポレオン戦争が勃発。これでもかと親仏反英の国の集まりだったUSAは、この大英帝国亡国の危機に火事場泥棒を働く。

 1812年、英国に宣戦布告!その後、カナダに侵入。
 最初に宣戦布告を一方的にしておけば、火事場泥棒をしても良いらしい。覚えておこう。
 ナポレオン戦争にかかりきりで5倍の兵力で襲い掛かれば圧勝できると考えたらしい。
 で、結果は?

見事に返り討ち!

 アメリカ史の先生は「国民の士気が低くてぇ」と言い訳をしているが、支那事変の国民党軍くらい弱い。なぜ弱いものを弱いとはっきり言わないのだろう。そんなにアメリカ様には常に強くいえてもらわねばならないのだろうか。で、欧州の戦争が一段楽したら、英軍の反攻が本格化。でも片手間だけど。
 その片手間の結果の戦果。

大統領官邸焼き討ち!

 マジソン大統領はホウホウのていで逃げ出し、食べかけの昼食は英兵に平らげられてしまった。あんまりにも惨めに焼けてしまったのでごまかすために家中を白く塗ったのが、ホワイトハウスの語源。(以上、よくあるトリビア)

 USA全体に、厭戦気分と敗北感が漂う。
 そんな中、英雄が現れ、再び民衆に自信と進取の精神を取り戻す。
 その名が、アンドリュー・ジャクソン。

 ジャクソン氏、まともな教育も受けていないのに弁護士として活躍。
「All Correct」を「Oll Korrect」だと思い込んでいて、その略としてOKとしたとか。(よくあるトリビア)
 親の代から黒人差別とインディアン虐殺が趣味と実益を兼ねた仕事。
 英米戦争中は、英兵から逃げ回りながらインディアンの虐殺ばかりしていた。
(日本軍から逃げ回りながら、共産党虐殺をしていた国民党と同じ)

 このおじさんが英米戦争末期のニューオーリンズの戦いで戦勝をもたらす。
 というのは、とっくに停戦協定が結ばれていたのに、英軍にちょっかい出して、要塞(野戦築城)にこもって多大な被害を与えた、という話。

 ほほう、通信手段の不備で宣戦布告の手交が遅れた国のことを「だまし討ちだ」と口汚く罵って、あらゆる国際法違反の自己正当化に使った国がありましたなあ。
 覚えておこう。
 通信手段の不備は、だまし討ちの言い訳になるらしい。宣戦布告の前に攻撃してはならないという国際法は無いのだが、停戦協定違反は重大な違法行為です。この時の米国にどんな特段の理由があったのだろう。
 まさか「通信が届いていなった」などという言い訳だけはしないでしょうね。
 そんな言い訳をする奴らには無差別空襲やら原爆投下をして良いのでしょ?

 ジャクソンは「戦勝」の英雄として後に大統領に。
 今に至る「スポイルスシステム(腐朽官僚制)」を導入し、サミット参加国でワースト3位の金権政治の国へと導く。(最下位はロシア、ブ−ビーはイタリア、今の日本は5位かなあ)

 結論。
 ジャクソンが大統領をやめた1837年(日本で大塩平八郎の乱があった年)、米国は大国でも何でもないし、そもそも今のようなアメリカ合衆国は存在しない。まだまだEUのようなもの。

 以上を反米ナショナリズムの文章だと思ったあなた、甘い!
 この程度の事実を知らないで外交官をやることを許している、日本という国への批判です。
(日本外務省の、控えめに言って、九割は知らないでしょう)

 どこの国も程度の差はあれ歴史歪曲をするものであって、「アメリカではこう教えてますよ」などと連中のプロパガンダを最新研究だと思い込んで威張り散らす生半可留学組(しかも教授だったりする)が許せないだけです。

 こちらの一代記もよろしく。
「ネービー21」 第174回定例会
「今だから語ろう 山本権兵衛一代記 〜現代の政治家に求められるもの〜」
日時 平成23年7月24日(日)13時00分〜15時50分(12時30分受付)場所 水交会館 1階  
http://suikoukai-jp.com/
講師 : 倉山満(国士舘大学講師)
※ 講義・質疑応答の後、懇親会を予定。
参加費 3,500円 (会場費・資料代・幕の内弁当・お茶代として)
主催 「ネービー21」
事務局お申込
 MAIL
info@navy21.jp
 FAX 048-225-8320 
 TEL 090-1807-0222

「アンドリュー・ジャクソン一代記?―アメリカ合衆国はこんな国(3)」への0件のフィードバック

  1. こんばんは。

    私が思う理想の軍隊像は
    「シビリアン・コントロール等をうけない完璧に独立した軍事組織」
    また、実行できたら、
    「1年間で中国・ロシアに対等の軍事力を持つ」
    です。

    3年かけてアメリカもと思いましたが、
    まず中ロと対等にしておかないといけないと思いました。

    いかがでしょうか?

  2. ジャクソンはアメリカンドリームを体現したことになっていますが、
    実際はこんなかんじだったんですね。
    ジャクソンの当時からアメリカは、
    戦争時は何でもありという路線だったのかと思いました。
    OKの話面白かったです。

  3. 前回の選挙時、共和党がサラペイリンを異常にプッシュしてきたのを受けて
    エバンジェリカルとか米国特有のキリスト教団体の系譜で語る意見は多かった。

    きっとそれもその通りなんですが、とはいえ、己が虐殺した動物の死骸で作ったオブジェ犇めく事務所や彼女の部屋、それに彼女の実家でもこれまた、壁に一分の隙もないほど動物の死骸オブジェ、プラス骨で作ったタワーのようなものが飾ってある、度肝を抜く光景に驚いたものですが、

    はたしてサラ〜と歓声をあげている人々にこれはどう捉えられているのだろうと気になっていました。

    しかし、本日の記事を拝読し、もしや彼女や彼女の実家の風景は米国人にとっては遠き日々を思い起こさせるに十分なノスタルジーな何かとして捉えられていたのかもしれないなと思いました。

  4. こんばんは。

    僕はまだまだ甘いですw
    勉強不足です。

    控えめに言って九割がこの事実を知らないなんて
    外務省は酷いですね。

  5. 三島様
    うーん。かなり楽観的すぎる数字じゃないでしょうか。
    とりあえず、6日の記事のような現状で、数年で中露に対抗、とかファンタジーすぎませんか。明治初年の状況とかと比較しても。

    マイ様
    こんなんがアメリカンドリームなんですよ。笑
    ちなみに、期待する若手代議士、おもしろかったです。稲田さんはともかく後の二人普通の人はあげないでしょうね。金子&森山もよろしく!

    水菜様
    13日のレスがのびず、嵯峨天皇トークができず悲しんでいます。(けっこうマジめに)
    とういうことで、皆さん、リクエストまだまだ募集中です。

    さて、米国にも「サラしかいない」という一派と「そんなんだから駄目なんだよ」という一派があるらしいですね。しかも大統領選挙に負けた直後に三日三晩議論したとか。

    かわ様
    今の外務省については、テリー伊藤『外務省機密情報』と佐藤優『外務省ハレンチ物語』をまず読みましょう。
    この二つを古本屋で手に入れられないなら、伊藤潤二先生が漫画化した『憂国のラスプーチン』でも可。
    外務はすごいですよ〜。

  6. おはようございます。
    外務省がそんな状態だとは思いませんでした。
    例えば外交官試験の質を上げることによって、
    外交官をはじめとする役人の質が向上して
    外交や政治がもっと円滑になるのではないでしょうか。

  7. MIIDA様
    まだ甘いのではないでしょうか。
    「外交官試験」の問題をどういう基準で誰が作るのでしょうか。
    私が言うのもあれですけど、外交史家の罪は重いです。
    田村幸作(国士舘の偉大な先生でもあります)を頂点・最後に、どんどん劣化していっています。
    田村先生の外交史と池井優orイオキベの外交史の教科書を比べれば一目瞭然です。

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