日本はギリシャになりません(後編)

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 本題。
 政治的にギリシャってどんな国か?
 手元の年表から目立ったところを拾いましょう。

1831年10月09日 カポディストリアス・ギリシャ初代大統領、暗殺。
 大司教を「クリスチャンのトルコ人」、軍指導者を「追い剥ぎ」、知識階級を「たわけ者」、と呼ぶなど、軽蔑をあからさまにしたため、だそうです。建国二年目でこれです。

1832年 ギリシャ、「英露仏三ヶ国の保証する世襲制の君主国」に。
 バイエルン王の次男、オットー(17歳・カトリック教徒・ドイツ語以外にはラテン語が少々)が国王に。王様を輸入してきました。日本人なら絶対に受け容れないでしょう。
 以後、王制派と共和派の二大党派による政権交代が100年続きます。こんな政権交代、絶対いやだ。。。

1853年 クリミア戦争。
 ギリシャは中立を強要されるも、ゲリラとして山賊と学生が活躍。だそうです。
 日本よギリシャになれ?仙谷自治労さんも学生運動ならこれくらいやらないと?
 普天間ごときであたふたする日本人には想像すらできない。山賊と学生が同列ですか・・・

1940年10月28日 イタリア、ギリシャに進攻。ギリシャはアルバニアに報復。
 関係の無い所で騒ぎを広げるのが、バルカン半島です。
 ちなみに、ギリシャはムッソリーニのイタリアに勝ってしまい、ヒトラーが介入する羽目に。
 このために、ドイツはソ連侵攻が遅れてしまったとか。
 その時、世界史が動いた?というより、何をやっても迷惑をかけるのがバルカン半島。

 冷戦期は、一応西側陣営に属しますが、最も親ソ的な国で、常にトルコを挑発し続けます。
 これを調整したのが、ユーゴのカリスマことチトー元帥。「ユーゴ・トルコ・ギリシャ三国同盟」などという、空前絶後の奇策で何とかごまかしますが、キプロスでは希土代理戦争。
 NATO諸国もギリシャが裏切ると大変なので人の良くて文明的なトルコに常に泣いてもらう。
 これぞ欧州名物、

喧嘩トルコ成敗!

 冷戦最末期には、
1987年03月27日 エーゲ海事件。
 トルコと武力衝突寸前になります。この紛議、10ヶ月続きます。

 やっとソ連が滅んだと思ったら、今度はユーゴ紛争。そこでユーゴからマケドニアが独立。
1992年01月10日 ギリシャ、マケドニアの国名使用に反対。
   02月24日 ギリシャのテッサロニキで集会。
        三大政党に支援された30万人の市民がマケドニアの国名使用に反対の集会。
        「アレクサンドロス大王の子孫である我々は…スコピエの歴史捏造者達…
        人権の天国であるギリシャで…」と、歌と踊りの集会として幕。
1994年02月15日 ギリシャ、国名問題でマケドニアを経済制裁。
…EU、ギリシャを批判。
                →1995年10月、米国の仲介により、国境封鎖を解く。

 ドラえもんにジャイアンという理不尽なガキ大将が登場します。
 主人公ののび太君に「のび太のクセに生意気だぞ!」と決め台詞を吐きます。それでも如何にジャイアンと言えどものび太がのび太である権利は否定しません。
 しかし、ギリシャは「マケドニアを名乗ることは許さない!」と周辺諸大国や国連にまで認めさせます。
 恐るべし、ギリシャ。そういえば、宮沢賢治の童話にこんな話ありましたね。

 それどころか、激化するユーゴ紛争の最中に。。。
1994年07月07日 ギリシャ、アルバニア国境で銃撃戦。
 無関係なところで騒ぎを起こす。バルカン半島の法則です。
 ちなみにここまで言っといて何ですが、このアルバニアと言う国、ギリシャがまともに見える国です。

 そのアルバニアがねずみ講で政府が崩壊した腹いせで起こしたのがコソボ紛争。もはや「我らがギリシャ様」と呼びたくなるギリシャは、、、

1999年05月22日 ギリシャ、トルコ軍機の通過拒否。
   06月07日 ギリシャ、米海兵隊の上陸を拒否し立ち往生させる。
   06月10日 米海兵隊、何とかギリシャに到着。

 欧米が結束してセルビアのミロシェビッチを叩いている時にこの所業。
 確かに、アメリカとしては極東有事で日本がギリシャになったら困りますねえ。
 ギリシャの主張は「俺の心の友のミロシェビッチを攻撃するのに、トルコと協力しろだと?だったらもっと金をよこせ!」です。
 ちなみに、日本は駐留米軍に思いやり予算などとわけのわからない金を払っていますが、ギリシャは「土地を貸してやるんだから、地代を払え!」と法外な金額を法外なやり方で請求します。
 むしろこれは日本が異常でギリシャが普通です。
 日本の愛国者の皆さん、各自瞑目しましょう!

などと、右とか左とかを超越した究極の事件が以下。

1999年07月12日 ギリシャ・アルメニア・イラン同盟、延期。
 コソボ紛争で世界の指導者(含・高村正彦外相)は「世界大戦になる」と危機を感じていました。その最中にこんな陰謀が。。。
 つまり、バルカン(ギリシャ)紛争を、コーカサス(アルメニア&イラン)、中東(イラン)、そして東アジア(イランは北朝鮮に接近中)にまで広げようとしていた訳です。当時の米国大統領のフリントン(ん?何か誤植が。。。)、あわててとめました。

 結論。
 日本はギリシャになりません。
 というか、なれる訳が無い。なれるものならなってみろ。

 バルカンネタは、普通に年表で事実をそのまま読んだり書いたりしているだけで頭がおかしくなれるので、嫌な事を忘れたい時に最適です。

「日本はギリシャになりません(後編)」への0件のフィードバック

  1. 先生の「日本近現代史」良いですね。
    竹田の宮の、皇室の部分、これも、素晴らしい〜〜〜〜〜。
    知識だけでなく、品格のある歴史本になりましたね。
    そこで、
    今までの歴史本は、何だったんだ?という、疑問と怒りで、みなさん、混乱していると思いますので、
    今までの歴史本が、なぜ、間違ったことを書いてしまったか?詳しく簡単に説明する本
    読みたいですね。

  2. ブログでのご紹介ありがとうございます。
    「品格」はうれしいです。
    今までの歴史本は、「共産主義を賛美する」「共産主義を意識しすぎて変な事を言う」「知らないで共産主義者なことを言う」のいずれかだったと思います。本当に何だったのか?は自分でも思います。
    でも最後に民族の運命を決めるのは歴史認識だと信じています。

  3. 同じく「近現代史」を読ませていただきました。
    あそこまで、詳しく丁寧にかつ分かりやすく読みやすい歴史の本は初めてです。
    新しい教科書をつくる会などの教科書を使わずにこの本を中高の近現代史の教科書で使うべきではないかと真面目に思いました。
    個人的には、コラムとして倉山先生が書かれている「丸山眞男」と「河合栄治郎」のところは何度も読み返してしまうほど気に入っています。
    一人で読むにはもったいない、だけどただで人に貸すには価値が高すぎるので、友人や知り合いに買うように勧めます!

  4. 新田様
    10年ほど前に河合栄次郎を発見したまま手を付けられずにいた私としても、今回のコラムは良かったと思います。

  5. このギリシャの記事は面白すぎます!
    フィクションですか!?

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