もはや超能力としての憲法論議

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 2月17日のレスに藤沢様が貼り付けていただいていただいたので。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100225-00000008-yom-pol

 自民党、問題にするのが遅すぎます。谷垣さん、聞き方も悪すぎますね。この「砦を」読んでいないのは間違いない(笑)。最近来られた方は、1月分の過去ログをご参照してください。まあ、こう腰砕けになるのは承知で絶叫していたのですが。。。

 自民党のお歴々は「鏑矢」という概念が理解できなかったらしいです。小沢や鳩山の政治資金の問題を追及するのを中心にして良いですが、第一声は「皇室の政治利用」であるべきだったでしょうに。それが「陛下の野党」としての道です。

「陛下の野党」に関しても過去ログを。何度も繰り返しています。というか、去年の衆議院選挙の開票日から言っています。

 さて、日本国憲法における天皇の扱いについて。

民主党=政府が政治利用して良い!
共産党=どこまでいってもお人形!
自民党=????????????

 民主党は論外。粗雑過ぎて批評に値しない。
自民党、とりあえず政府民主党を批判しているのはわかるが、何を言っているか不明。同じく批判不能。

 実は一番筋が通っているのが共産党です。まあ日本一学歴秀才が集まる政党だけはありますね。東大憲法学の模範解答。(爆)
要は、「国事行為=宮中に自由意志がなく政府が決める、公的行為=宮中に裁量がある」
とのこと。いずれにしても天皇に一切の自由意志を認めず、政府か宮中のお人形さんにしたいらしい。もちろん、筋が通っているからといって認める必要ありませんが。

 帝国憲法の専門家の立場からは、
「天皇は平時には儀礼大権がある。また、警告・激励・被諮問の三つの権利は残されている」
で終わりです。勝手に政府や宮中の操り人形にされても困ります。
日本国憲法は、上記「 」の概念がないから意味不明になるのです。実際に内奏では「三つの権利」を行使していますし。最近も馬鹿な大臣がぺらぺらと漏洩していますが。。。

 かなり難解かもしれませんが、興味のある方は下記もどうぞ。(書いた時はかなり気軽だったのですが・・・)
http://www.japancm.com/sekitei/note/2006/note01.html

 で、日本国憲法の枠内で考えるとしたら、私は「国事行為」と「公的行為」を対立概念と考えません。「公」の意味から説き起こさなければならないのでからり難解なのですが。「国事行為」を「公的行為」の一部と考えるかなあ。。。実は馬鹿馬鹿しいので、日本国憲法における学説というものを一度も考えたことがないのです。まあ、日本国憲法でも「三つの権利」が残されていれば、共産党の解釈でも良いのですが、どうも誰もこれを言わないので。(実にいい加減な態度ですいません。しょせん、相手が日本国憲法なので。)

 ちなみに「三つの権利」は英国憲法の用語です。「君主にも、誰にも聞かれていない場では政府高官に言いたいことを言う権利がある。」くらいの意味です。もちろん、政府高官は聞く義務はないのですが、「賢明な君主の言う事なら正しいことに決まっているのだから、政府高官は聞くだろう。それにより君主は権限がなくても影響力を行使できるので傀儡ではない」という意味なのですが。英国憲法も帝国憲法もそのような運用をしています。というか立憲君主国は全部です。

 翻って、日本国憲法の数多い欠陥の一つ。
日本国憲法のどこに、平時ではない状態の規定がありますか?

 平時ではない状態とは戦時だけではありません。事変や天災で政府機能が麻痺した時も含まれます。
例えば、関東大震災(首相病死後組閣不成立なので、内閣そのものが不存在)や、2.26事件(軍隊のクーデターもどきの暴動で首相が暗殺されたとの誤報で大混乱)が起きた場合、誰がどのように秩序を回復するのでしょうか。終戦のご聖断の時のように、国が滅びるかどうかわからないという瀬戸際で政府(含・陸海軍)が何も決定できない時、誰がどのように決定をするのでしょうか。

 政府機能が麻痺し、憲法秩序が危機に瀕している時に、秩序を回復するのが天皇です。帝国憲法ではそのような際の天皇の役割を規定していました。今のタイ憲法などもそうです。
で、日本国憲法は?
政府は絶対に機能が麻痺しない!という前提で作られています。

 百万光年くらい譲って、憲法九条の思想を徹底すれば、戦争もクーデターもないのでしょう。では地震などの天災は?首相が病死している時に次の首相が決まらず、そんな時に大地震が起きて政府高官と連絡がつかないことも想定しなければならないのですが。普通の国の憲法はそこまで考えて作っています。

 どうやら日本国憲法には天地をも動かす超能力があるらしい。

 それとも有事には日本人全員死になさい?

 いずれにしても、あなかまあなかま。

「もはや超能力としての憲法論議」への0件のフィードバック

  1. 倉山さん

    お早うございます。藤沢です。
    引用並びに取り上げて頂きまして、有難うございます。
    このサイト、天皇陛下の話については猛者揃いですので、少しドキドキしておりますが、頑張って書いて見ます。

    「三つの権利」についてですが、これ重要な考え方ですよね。立憲君主(天皇陛下)を完全な傀儡にしてはいけない(元より正しくない)という要請より来ているものと思います。特に「相談を受ける権利」というのはいかにも西洋らしい雰囲気を感じますよね(ちなみに英語だとなんて言うのですか?)。

    当然、完全な傀儡では権威が保てない訳ですから、実際の権限とは違う、こういった形で影響力を及ぼすという解に至ったのでしょう。よく出来ているものだと思いました。

    事例としてのマクドナルド挙国一致内閣ですが、これ教科書だとサラッと通り過ぎていますが、ものすごく大変な出来事だと思います。下手をしたら内乱が発生してもおかしくない位の事だと思います。でもやはり国としてみんな合意が出来ているからこういう事が出来るのでしょうね。
    振り返って見るに、細川、羽田、村山内閣などというものは日本及び日本国憲法の恥ですなというのが、率直な感想です。

    「憲政の常道」と「立憲君主制」今の私たちにもやれば出来る。そう思って、頑張って行きましょう。それではまた。

  2. 藤沢様
    警告権=right to warn
    激励権=right to encourage
    被諮問権=rigiht to be consulted
    です。

    ちなみに昭和天皇は鈴木貫太郎が高齢を理由に首相就任を渋った時に、「頼む!鈴木!」と涙ながらに懇願したとか。
    ここまで陛下にさせてしまうと、もはや三つの権利では説明できなくなります。英国憲法下では、君主と側近のこのような紐帯は想定していなかったのでしょうね。

    マクドナルド内閣はまさに金融危機に際してできた連立内閣です。
    現在のデフレ不況の日本も同様の危機にあるでしょう。
    恐いのは、このまま経済格差が教育格差として固定されてしまうことです。

  3. 倉山先生
    先生が寄稿された論文に

    >権威と権力が最初から分離されている点が、近代立憲君主の特徴である。

    とありますが、それは即ち主権というものが君主の持つ「権威」と臣民が持つ「権力」に分離されていて、それが衝突なく連動することで「主権」という名で一体を成している、ということでしょうか?

  4. 瀛様
    概ね正しく理解していただいていると思います。
    私の趣旨は「君主は本来は権力を持っているが、その行使を前提としない存在である」です。
    その権力を、民主国ならば国民の代表が、それ以外の国ならば、貴族が行使する、ということでしょうか。
    ちなみに「臣民」ですが、天皇から見れば「臣」も「民」も同様、というのが世界史の奇跡です。
    また、「主権」を「統治権」に置き換えていただければ間違いないです。
    「統治権≒主権」ですので。

  5. 倉山さん

    藤沢です。有難うございました。
    言われてみれば確かにそうですね。和訳するとかえってぎこちなくなってしまう時ってありますよね。

    鈴木貫太郎もまたサムライの一人といった所でしょうか。首相就任の話は、いかにも日本的な感じはします。
    一連の流れの中で出てこられる貞明皇后ですが、勿論政治的にという事ではないですが、何か幅広い意味で影響力をお持ちというか・・・、強い女性の方でいらしたのかなという気は致します。2.26事件の際の鈴木貫太郎の妻たかの所作もそうですが、女性の持つ気丈さとか聡明さはそれだけで美しい時がありますよね。

    話し合い(不文律)にせよ多数決(成文法)にせよ、結局は人間でしょう。先人たちが守ってこられたこの国、頑張って引き継いで行きましょう。それではまた。

  6. 倉山先生

    レス有難うございます。話の本筋からずれてしまって申し訳ないのですが、統治権と主権の違いについてご教授願えないでしょうか?
    ちなみに今回の私のコメントは、現行憲法で謳われている「国民主権」を「権威」と「権力」で分けて考えるべきなのではないかと思って「主権」という言葉を使ったのですが。

  7. 倉山先生こんばんは。

    本当に法律は不備が多いらしいですね。

    そういえば自衛隊の背広組の知り合いがいて話したことがあります。

    背広組の方は法律判断がお仕事だとのこと。

    有事法制にも憲法にも不備が多すぎて、国際法でしか判断できない案件が多いとのこと。

    その方に、法律で対処できない事案があったらどうするのでかと聞いたところ、

    「賢い政府が事後に全て決めてくれるから国際法に従えば大丈夫。そもそも何も決められていないのですから。」

    とのこと。

    この国は大丈夫ですか?

    それにもし規定がないことは全て官僚にゆだねるということになります。

    逆に国民の権利は侵害されるor国民は無根拠に突然権利を奪われるということになりますね。

    まあ防衛意識を持たなかったことの罪ともいえますが。

    有事のことに関する法律・対処はそもそも国民のコンセンサスが必要な案件ですから。

    しかし、賢い政府がぜ〜んぶ適切に対処してくれるんですねえ。

  8. 瀛様
    日本国憲法の議論では瀛様のお話で問題ないと思います。
    帝国憲法の場合は、美濃部説で良いと思います。
    つまり、「主権=統治権」の部分もあるのですが、「主権=何をやっても良いという権能」という意味もありますので。
    英国憲法も帝国憲法も「主権」と言う言葉は避けているのですが、両憲法ともに「何をしても良い人」の意味での主権者の用法を避けています。主権と言う言葉を使うと、「なぜ主権者なのに拘束されるのか」などというややこしい話になりかねないので、使う必要がない概念です。

    シバッティ様
    刀伊の入寇とか後三年の役はご存知ですか。
    お知り合いの自衛隊の背広組の方に御伝えください。
    当時の平安貴族よりも今の護憲派官僚の方が御無体を言い出します。

  9. 「主権」という文言は、旧憲法には一切登場しませんね。よく「旧憲法は天皇主権。新憲法は国民主権」と説明されますが、国民主権が前文と1条に明記されているのに対し、天皇主権はどこにも明記されていません。おそらく新憲法の理論を説明するために、戦後になって創作された対比用語ではないかと思います。

    あえて国民主権と対比すべき概念があるとすれば、「天皇大権」がこれに当たるのではないかと思いますが、帝国議会の協賛に対し天皇は米国大統領のような拒否権を持っていません。そうすると、帝国議会の議決に対し天皇は拒否できず、結局裁可するしかないということになり、実質的に国事行為の公布と何も変わらなくなります。
    司法権などはこれより明確で、裁判所が行使することが明文化されています。「天皇の名において」という文言を加えても省いても、意味が全く変わりません。

    それはともかく、昭和天皇は「陛下は皇居の窓から毎日何をご覧になっていますか」という質問に対し「国会議事堂だよ」と答えられたとか。実はこのとき、自民党40日間抗争の真っ最中で、天皇は国民を顧みずに政争に明け暮れる政治家を痛烈に批判したかったのだそうで、これなどは暗に「警告する権利」を行使した例ではないかと思います。

    「国防戦隊タケシマン」の人物設定がなかなか決まらない。とりあえず、イエローは日蓮宗の寺の息子で北条時宗の御家人の子孫、カレーが大好物でアショーカ王とガンジーとチャンドラボースとパール判事を深く尊敬する大のインド通という設定は出来上がってるんだが…(このタイプの特徴として、三枚目のムードメーカーキャラでもあるのだが)。
    ブルーを女性とするか、男性とするかも迷うところではあります。やっぱり新命明の女性版にしようかと考えてます^^;

  10. 外国人参政権の法案が先送りになりましたね。
    まあまだ安心できませんが…
    とりあえず参院選までは持ちこたえそうですね。

  11. 過酷な自然環境なのに、皇族が東京に集中しているという事にも危機管理の薄さが読み取れますね。

    教育といえば、戦後の学制改革の最大の誤りは、私学を潰さなかったこと。

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