あー。またネタの大渋滞が…。皆様ハイレベルなご質問ありがとうございます。さらに嬉しい悲鳴です。とは言うものの、最近はあまり重くない内容が多くて申し訳ないのですが。(?)
結論から先に言うと、なぜ「キリスト教徒の白人クラブの真似事」を「華夷秩序」などという意味不明正体不明な代物を持ち出して、しかもまったく歴史も文化も異なる米国まで入れてやらねばならないのか、ということに変わりはないのですが。どうやらこう言っても総理大臣閣下や外務大臣閣下にはお分かりいただけないようなので、我々だけで勝手に話しを進めましょう(笑)。「特定アジア共同体」を作るくらいなら「全アジア共同体」でイスラエルやエジプトも入れればいかがでしょう(笑)?
さて、かなりハイレベルな内容なので、全部をいきなりわかるのは無理なので、逆に気軽に読んでください。いきなり最終段落に飛んでくださってもかまいません。または、どんどん質問してください。私の代わりに答えてくれる方もいますし(笑)。そのやりとりが的確で礼儀正しいことが私の誇りです(これは真剣)。
まず、「華夷秩序」の範囲です。実効性のある最小単位は中華宮廷でしょうね。例えば、一九一二年の中華民国建国から一九二四年に紫禁城を追い出されるまでの宣統帝などがこれです。辛亥革命や軍閥混戦と何の関係もなく、溥儀はそれ以前と同じ生活を送りました。中華民国大総統の袁世凱や段祺瑞などの北京政府から生活費をもらって、「イタリア内におけるバチカン」以上の独立性を保っていました。
実行性のある範囲としては、「最盛期の皇帝が地方官を派遣した地域&朝鮮」でしょうね。この範囲では「秩序」は存在したでしょう。それは国際法と同じ意味での法ではなく、「権威者の命令」の意味での法でしょう。とても普遍性を持ちうる可能性などありえたとは思えませんが。それは今のチベットやウィグルを観れば一目瞭然で。
中華帝国の主観によれば、皇帝は全世界の支配者です。宇宙の支配者と言ってもよいです。岡田英弘先生などは、東アジアどころか、かの大英帝国にも臣下の礼を要求する事大主義についてもご紹介されています。結果、アヘン戦争(※)で実力を見せ付けられるのですが。ある方から、駆け出しの院生の頃に「彼らはバルタン星人が来ても朝貢させる」と習った記憶があります。なるほど、と思いました。華夷「秩序」の本質は、儀礼(国際法における所詮プロトコール)にすぎないのであって、とてもウェストファリア体制どころかローマ万民法に及ばない代物であると断定して良いでしょう。
※「アヘン戦争」という名称自体が、英国を忌み嫌っていた米国などが広めた呼称。英国は英清戦争などと称します。
「国家」「民族」に関しては近日、別に書きます。結論だけ言うと、この二つの言葉、日本語でしか完全には説明できないのです。ついでに「国民」も。予習用に参考文献を示しておくと、岡田英弘先生の御著書全部、阿部謹也先生の御著書全部、今谷明先生の御著書全部、1990年以降に出た日本語のバルカン半島に関する単行本全部、です(笑)。直接的にはバルカンの勉強が役に立ちました。他にも色々読み漁った、やっと自分なりの解答はみつかりましたが。でも昔の大学院の宿題ってこんなものだったらしいです。
世界の歴史に関してその道の権威が何を言っているか、基礎的なことを見ていくと、「日本の歴史って全然遅れていないどころか、一番進んでいるのでは?」と思ったのです。
よく、「島国根性」と言われますが、英国人が「大陸」「半島」などとユーラシア(ヨーロッパや仏独)やイベリア(のポルトガルとスペイン)のことをむしろ蔑称で呼んでいるという、欧州の高校生ならば誰でも知っている事実を知ると、別に「島国」で何が悪いの?と思えてきたのですね。
ロシアの教科書には「日本は十九世紀まで世界史に登場しない国である」と書かれています。これを「人類の歴史に貢献していない」などと卑下する必要はないのでは?では世界史とは何か。ユーラシア大陸を中心とした歴史のことでしょう。それが誰の歴史か知りませんが、誰の歴史にしてもひたすら殺し合いの歴史ではないですか?そんな歴史に登場しなくて何が悪いのでしょうか。
そう考えると、中華帝国の考える国の定義もいい加減です。そもそも、「皇帝と直轄領」「言うことを聞く者ども(朝貢国とか冊封国とか呼ばれる)」「その他良く知らない人たち(化外)」くらいの区別しかないので、「華夷秩序」を持ってきて「西洋国際体系に匹敵するのだ。彼らの近代国家概念や国際法に負けないだけのものを持っていたのだ」などと言い張るところに無理があるのでしょう。
一六四八年ウェストファリア条約に始まる西洋国際体系など、日本ではとっくに聖徳太子の時代からやっています。だから、たかだか目の前の科学技術力や経済力の劣勢に臆することなく明治維新ができ、日露戦争に勝って誰に屈することもない大国として生きていけたのですから。聖徳太子で悪ければ、奈良時代で良いです。かつて、世界中に偉大な文明が存在しましたが、八世紀から途切れることなく続いているのは日本だけです。
デンマークが九世紀、英国が十一世紀から続いていることになっていますが、当該期の彼らの歴史など日本で言えば神武天皇や日本武尊くらいの実証性です。百歩どころか千歩譲って奈良時代からが日本の確実な歴史である、と言っても世界最古の連続した歴史と文明を持っているのですから。
ところで、日本とオーストラリアでは「我々はアジアか」などと知識人が言い出します。彼の国はそもそもが囚人を島流しにしてできた国なので、色々と劣等感を抱えるのはわかるのですが、なぜ日本がアジアに入れてもらわなければならないのか。日本は一国一文明で何が悪いのか、と問いたいのです。
英国人(※)など、「英国と欧州」であって「欧州の中の英国」などとは考えないですね。米国に対してはいまだにもっと優越意識がありますし。
※この場合の英国の範囲はまたややこしいので、これもまたの機会に。
皆様のやり取りを含めた以上の議論、これだけでも相当難しい問題があって、しかもまだ入り口の入り口くらいなのです。
「みんな仲良く、だから一緒になろう」で一つの国家連合ができるなら、今ごろ世界連邦ができているでしょう。大体、総理大臣御夫妻が一緒になるのだって、そんなに簡単に誰も傷つけずにいきましたっけ?
1000歩譲って韓国はまだしも、北朝鮮と中国のような独裁国家と仲良くやろうなどというのは到底常人の感覚ではないのではないでしょうか?
ましてや共同体なんて…
「友愛」ってもはや宗教の世界ですね。
まさに「20世紀少年」の世界ですよ。
二夫一妻にすればよかったのにね!(無理)
>「国家」「民族」に関しては近日、別に書きます。結論だけ言うと、この二つの言葉、日本語でしか完全には説明できないのです。ついでに「国民」も。
倉山さんもやはり「日本語でしか完全には説明できない」と思われますか。記事が上がるのを楽しみに待っております。
>なぜ日本がアジアに入れてもらわなければならないのか。日本は一国一文明で何が悪いのか、と問いたいのです。
まったくおっしゃるとおりです。「脱亜」などと言うまでもなく、日本はいわゆるアジアには最初から含まれていないと私も思います。
その「脱亜論」にしても、日本もアジアの一員だという外国人の先入観を覆そうというのが中心にあるんですよね。当時「脱亜」と言ったからといって、それまでの日本人自身が日本もアジアの一員だと思っていたことを示すものではなくて。
それにしても、日本人の日本もアジアの一員だという自意識は、いつ頃広まったものなのでしょう? 明治以降、そういう自意識を持っている人は持っていたとは存じていますが、一般人にまで割と広まったのはいつかとなると・・・
ひょっとすると、大東亜戦争が始まった後にバタバタと、とりあえずそういうことになった、みたいな話なのではないかと勘ぐったりもしてしまいますが。
華夷秩序が国際法と同等などという方が未だにいるということに衝撃を受けました。その華夷秩序の中に日本がいるという主張があることに驚きました。
僕はたまたま歴史学科の西洋史概説ならの授業で、
「日本と朝鮮の違う点はシナからの距離で日本は遠すぎたために中華文明いい加減に模倣したんだ。中華では非公式とされた文化が国風文化和歌という形で花開いた。」
なんて習いました。中国からカルチャーは学んでも体制までは学んでませんから。
どう見てもかな文字が花開き源氏物語のような恋愛小説(失礼!今風の表現で…)が宮廷文化で認められている時点で中華文明とは違うと言えるでしょう。実際に朝鮮王朝では中国宮廷で認められているものを文化としてみなしていますし。
歴史が外交において勝負となり曲学によって外交戦により影響を与えるということは本当にあるようです。
アーリアン学説がそのいい例です。
この話は僕が二つの文学部の授業(ラテン語の授業と外書購読の授業)で知りました。
ラテン語の先生は、かつての指導教官がナチスの理論面の幹部だったらしい。テキストでもラテン語とサンスクリット語がいかに同祖であるかということを証明しようとしている。
言語の類似性は言えるらしい。
外書購読の際に習ったのは、言語学上の話から飛躍した政治利用の話である。言語学上の共通性を根拠に植民地のインド統治の時に
「インドの祖先とイギリスの祖先はアーリア人だ。」と言い植民地統治を正当化したという。
言語学的類似性は指摘できても同じ部族だとはいえないのである。それを正当化するための研究がドイツやイギリスで行われた。
それを根拠にヒトラーなんかは純粋なアーリア人に近いのはゲルマン人だという始末。
純粋なアーリア人に近いのはイギリス人と主張してインド統治に利用したのだという。
ほかにもパキスタンにモヘンジョダロがあるから対抗してインドが発掘して今度は、ヒンドゥーナショナリズムを煽って今のインドはここに源流があるという主張。遺跡から発掘された牛肉を食べた痕跡に関しては、無視して教科書に載せないとか。
もっとひどいのはシリアやレバノン。シリアはアラブ社会主義を掲げるために自国の歴史はアラブ人の歴史と教えている。
だがシリアはイスラーム化以前はキリスト教圏で古代にさかのぼると地中海文化圏でむしろヨーロッパに近いところである。
オリエント研究家が嘆いているのはシリアは地中海文化圏だったということは好ましくないので発掘許可を下さないという。
歴史を基に国益にかなうように理論武装しているの出る。都合のいい結果を並べてそれを基に外交利用しているのである。それを基に勝手に欧米はいろいろ正当化してきたし中国もやっている。
華夷秩序がご都合主義で歴史の捏造にもあるにも関わらず反論さえしない日本。
相手の論理に飲み込まれては外交戦では負けるのである。
マジャルとかマジャール人(混ざる人と呼ぶこともある)って、13世紀あたりの元の侵攻の名残で、ヨーロッパ人とアジア人の混血だというのは本当かな?だとすれば、ゲルマン人もその親戚か!
その前にはハンガリーにユダヤ人が逃げ込んで来たし、、、
ポーランドやハンガリーとかは、だだっ広いヨーロッパの真ん中で、侵入し放題!の国だった(アーリア人の侵入というが、アーリア人の侵攻とはあまり言わない)?
ヨーロッパはライン川とか自然の要衝としてあるけど、乗り越えるのはそんなに大変じゃないからなあ、(あと、アルプス山脈とかもあるが、)、
しかし、マジャール人をインターネットで検索すると、やはりドイツ右翼?!のページ(↓参照)に飛んでいってしまった。。。
http://www.tky.3web.ne.jp/~ashigal/ww1/yougo/magyarok.htm
〉シバティさん
いい話ですね。
でも、少し長いです(笑)
こういう話は、mixiなどにこのアドレスごと張り付けて世間にひろめましょう!