高度な教養を必要とする話。
外出自粛を強いられて、古典の教養に触れている方も多いと思う。便利なもので、読書以外にも教養に触れる方法がある。ありがたいものだ。そこでお勧めしたいのが、『帰ってきたウルトラマン』5話と6話の前後編。DVDで出ている。
ストーリーは?
二大怪獣が暴れまわり、ウルトラマンも退治できない。地球の守りのMATも歯が立たず、東京は荒らされ放題となる。そこで、業を煮やした上層部は、水爆並の破壊力を誇る「スパイナー」という強力兵器の使用を決定する。要するに、
水爆で東京ごと怪獣二匹(グドンとツインテール)を吹っ飛ばす!
という作戦。
そしてなされた決定が、
東京都民全員避難!
今のロックアウトもどきではない。
ところが郷秀樹(主人公。ウルトラマンの正体)の恋人のアキが重傷で動けない。MATの加藤隊長はアキの兄の健を説得しようとするが、健は延々と“東京大空襲”の時の話をし始めて拒否。健の母は防空壕の中でB29に向かって「この子だけは殺さないでください」と祈り続けたらしい。
で、説得された(!)加藤隊長は、再び上層部に自分たちが怪獣を倒すからと、スパイナーの使用を延期するよう掛け合う。
地球防衛庁の岸田長官(藤田進)と佐竹参謀(佐原健二)の「ウルトラマンも勝てない怪獣をどうやって倒すんだ?」という当然の質問に、加藤隊長の提案は、
隊員6名が、ジープ2台・バズーカ砲2門・ピストル6丁で突撃し、ツインテールの目に麻酔弾を撃ち込む!
グ、グドンは???
などというツッコミがなされることはなく、突撃作戦は決定。
岸田長官は「もし失敗したらMATは解散!」との厳命で。
そして、大乱戦の中、ツインテールはグドンにかみ殺され、グドンもウルトラマンに倒されるというハッピーエンドの結末。いつもは怪獣にかすり傷一つつけられないまま終わるMATも、今回はツインテールの片目に麻酔弾を撃ち込むという大戦果(?)をあげる!
て、書くとふざけているように思えるが、坂田健を演じる岸田森の異様なまでの説得力のある演技で、シリーズの屈指の傑作に仕上がっている。
放送当時から、「んなアホな?」と言われてきたプロットだけど、現実の日本を描いたリアルな作品では?このグダグダな意思決定とか。ちなみに、やたらと評価されるシンゴジラは、こういうのを下敷きにしている。
藤田進と佐原健二は3年前放送の「ウルトラセブン」では、やたらと勇ましい作戦を主張し、毎度の様にキリヤマ隊長(特撮史に残る大量殺戮者である)にたしなめられていたのだが、同じ役者が同じ長官&参謀の設定で、保身と組織防衛と世間体しか気にしない人物として描かれるようになっている。
池田内閣の防衛意識を反映した「セブン」と佐藤内閣のそれを反映した「帰マン」の違いだ。恐るべしは憲法9条と官僚機構の硬直、そして軍事を忘れた政治家と軍人。
「倉山さんの話は難しくてついて行けない」とか言われあきたので、日ごろはどれほどついていけるように工夫しているかを知らしめたくなった。
それはそうと、通説では女の子の髪型のツインテールは、このツインテールが起源であるとされているが、誰が実証したかは知らない。