保守系動画で人気のYouTuberであるKazuya君が自分のチャンネルとツイッターで拡散していたので、この道の先輩として苦言を呈しておく。
朝日新聞は皇室を潰したいんですか?【サンデイブレイク105】
https://www.youtube.com/watch?v=swI7Wcouon8
Kazuya君は個人的にも十年来の知り合いで人柄は良く知っている。倉山塾やchくららに協力してもらったこともある。皇室解体を目論むかのような朝日新聞に憤ったのが動機であり、他に邪心があるとは思えない。
また、年は31歳で保守系言論人としては最年少なので、年上というだけで威張り散らす人間がほとんどの保守業界で、何かと気にかけていた。5年前には、「誰が何を言おうが、40歳までに年下の人間にかける言葉を持てるよう、自分の専門を持つ勉強をしろよ」とは言ったことがある。だから、あと10年くらいは彼が如何なる言動をしようが何も言う気は無かった。
しかし、こと皇室の問題に関しては別。しかも今は皇室解体と秋篠宮家の排除を目論む勢力が勢いを増している時期なので、その発言に無理解や重大な誤りが多いので指摘する。
まず、理解してほしいのは、皇室は我が国の禁忌であるということ。あらゆる言論が本当はそうだが、言論の自由を行使した場合、自由を行使した後に反論されない特権はない。
特に皇室に関して物申すというのは、本来は命がけだということ。私などはさっそく、あちこちから「警告」が来ている。(笑)
「拡散希望」と言うなら、軽く「正論っぽい」意見に同調するのではなく、しっかりと勉強してからでないと火傷する。
2年前の陛下の御譲位を実現するための有識者会議で、保守を自称するご老人たちが好き勝手な放言を撒き散らしてくれたので悪しき風潮が蔓延しているが、若いKazuya君にはああいう何の実績も実力もないのに天皇陛下に不敬を働くご老人たちとは一線を画してほしい。
当時、『日本一やさしい天皇の講座』は扶桑社から緊急出版したが、「譲位反対」を合唱したご老人たち(反対論者でも今谷明先生だけは別)に「天皇陛下に偉そうに物申すなら、せめてこの程度は知ってからにしなさいよ」との意味だった。私が皇室に関して特段詳しいとは思わないが、議論参加資格がないのに、有識者を名乗って恥じない御仁が多いので急いだ。
本題の前に、これは重要と思えるので指摘しておく。
Kazuya君は、朝日新聞に代表されるマスコミが、法律を無視して「上皇后さま」と表記していることをやり玉に挙げている。「上皇后陛下」と呼称すべし、と。
では、法律に則るなら、「譲位」は不可で「退位」でなければならない。Kazuya君はその立場をとられるのか? 自民党がHPで「陛下の退位」と表記したら相当の数の猛抗議が殺到したが、その人たちも朝日新聞と同じく批判されるのか? Kazuya君がこの点に関してどの立場を知っているのかすべての言動を抑えていないので、そちらも朝日と同等に批判している事実があった場合は、発言を撤回する。
私は、「上皇后」は安倍内閣が勝手に始めた新儀であるので、本来の尊号である「皇太后陛下」あるいは正式略称である「太后」「太后陛下」を使っている。「退位」に関しては目くじらを立てていないので、気分で「譲位」と使い分けている。
政治家や官僚が法律用語なので「上皇后」「退位」としか使えないのは同情するが、情けないなとも思っている。法律用語を決めるのは内閣法制局だが、安倍首相を筆頭に日本中の政治家と官僚が連中に逆らえないので。
法制局の恣意的な法律解釈は目に余るが、連中が何を言おうが、日本国憲法以前から皇室は存在する。帝国憲法すら、「この憲法は皇室の存在を確認しているに過ぎない」という立場で、間違っても「この憲法が皇室の存在を規定しているのではない」という立場だった。
今のように、時の政府が誤りを犯して「上皇后」などという新儀をやらかし、朝日新聞のようなメディアが輪をかけて「上皇后さま」などと恥を上塗りしている時こそ、「皇太后陛下」の尊号を国民に定着させるよう働くべきではないだろうか。
さて、本題。Kazuya君は男系継承の重要性を説いている。女帝や女性宮家を通じて女系と称する皇室簒奪にまでもっていこうとする勢力の増長が甚だしい今、その志には賛同する。
ただし、なぜ逆徒どもが勢いを得ているのか? 「男系固執論者は論理がおかしい」と逆宣伝に使われているという現実は踏まえておかないと、志と逆の結果になりかねない。
誤解のないよう確認しておくけれども、私は男系継承は自明の前提との立場である。しかし、「男系」さえ言っていれば後は何でもよいとの立場には与さない。たとえば、「Y染色体遺伝子」「近衛文麿も天皇になれた」「皇太子(今上陛下)よりも皇室の血が濃い男系男子がいる」のようなトンデモには。さすがに、Kazuya君がこの種の妄言に与したとの発言は聞かないので安心しているが。
男系の根拠は、先例を積み重ね、すなわち一度も例外が無い歴史である。その歴史においては、男系を前提として「直系」も大事にされてきたので。今の女系論者は、男系を無視して直系だけ言うからおかしな議論になるのだが、男系論者の中に直系を無視する者がいて付け入られているのも、また事実。
Kazuya君が番組の中で使っていた「サザエさんのたとえ」にしても、あれで皇室のすべてをわかられても困る。
サザエさん一家を皇室に、波平を天皇に例えた場合、ワカメの子供は皇位を継承できるのか?
できるかできないかで言えば、「条件次第でできる」というのが皇室史の立場。古代の内親王を調べれば簡単にわかるが、夫が天皇か皇族の場合は、その息子や娘は天皇にもなれる。
先例をあげると、天智天皇と天武天皇は、父は舒明天皇で母は斉明天皇。元正天皇は、草壁皇子(天武天皇の息子)と元明天皇の娘。男系かつ女系でもある。もちろん、純粋女系の先例にはできないが。
サザエさんの登場人物で例えると、ワカメが海平(波平の兄)の息子あるいはその息子(海平の孫)と結婚した場合、女系かつ男系。
古代は皇族どうしの結婚が通例だったが、時代によって変わり、ここ100年の皇室では皇室と関係のない男子との結婚が一般化した。その際には当然、皇籍離脱をしていただく。
現状がそうだというのと、原理原則は違うので、正確に抑えておいた方が良い。
今の皇室はこのままでいくと、将来は悠仁親王殿下お一人で支えなくてはならない。直系たる皇室を支える宮家(傍系)がなければ心もとない。番組中でも、「傍系を削った結果がこの結果ですよ」と述べているので、「傍系」の認識はあるようだ。
男系では北朝第三代崇光天皇に遡り、女系では昭和天皇と明治天皇に連なる東久邇宮家の皇籍復帰、より正確には故東久邇宮信彦殿下の血を引く男系男子の方々に親王宣下をすべきだとの主張には全面的に賛成する。
ただし、東久邇宮家はネッシーや雪男のような未確認生物ではない。番組中では、水間政憲氏が2年前に「発見」したように述べていたが、これは完全な誤りだと指摘しておく。何をもって水間氏の手柄の如く語るのかが、よくわからない。
小泉内閣の時から、東久邇宮家は話題になっていた。
同じ誤りは、「虎の門ニュース」で大高未貴氏も述べていたが、完全な誤り。隣で上念司さんが困っていた。あまりにも重大な問題なので自分で番組を見て確認したが、この点に関し上念氏は大高氏に一切の同調を示していない。
だいたい、女系論が話題になった時、「東久邇家は昭和天皇と明治天皇に近いぞ」と教えてくれたのが、上念さんその人なのだから。もう10年くらい前の会話。
Kazuya君は水間氏の著書から皇室と東久邇家の系図を持ち出して、「これを持ち出されたら女系論者は困りますよ」と主張していたが、頭の弱いパヨクならともかく、本気で陰謀を企んでいる人々は困らない。当然その程度の対策はしてから、敵は仕掛けてきている。
女系論でも弱い論者は「皇室を離れて何十年も何世代も経っている」と言い出すので、これは簡単に論破できるだろう。
しかし、小泉内閣では「旧皇族家は、男系で辿っても、北朝第三代崇光天皇。直系から血が遠い」が理由とされた。もちろん、だからと皇室と何の関係もない平民男子の子供が天皇になれるとする、女系論者と称する陰謀家の論理は飛躍しているのだが、自分のことを棚に上げてこちらの非を鳴らすのが敵の手口。
実際、皇室には「五世の孫の原則」がある。私が敵の立場なら以下のように攻める。
「男系男子であれば皇位継承資格があるのなら、平将門も源頼朝も足利義満も近衛文麿も男系男子だ。彼らに皇位継承資格があるとでも?
また、旧皇族十一宮家は、すべて伏見宮家の子孫だ。伏見宮家は江戸時代に絶えそうになったとき、鍛冶屋の丁稚の安藤長九郎なる人物を探し出し、お家断絶の危機を逃れた。旧皇族家の人々は男系で辿ると全員が、安藤長九郎改め伏見宮貞致(さだゆき)親王の子孫にあたる。DNA鑑定が無い江戸時代の認定が信用できるのか?」
女系論者はこういう論法を用意しているが、これにどう答える?
私は答えを用意しているが、Kazuya君は?
以上、ことは重大なので、自身で勉強し、誤りを正すべきは正した上で、皇室の為に尽くしてほしい。