そう言えば、今日は橋下徹さんのメルマガ発行日ですね

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以下は特定一人に向けての対話ではなく、不特定多数の第三者に向けての独り言。と最初にことわっておく。なお、下記の中で私が圧倒的に重視するのは、四点め。

連休中に橋下徹さんとちょっとしたやり取りがあって、橋下さんが「倉山満氏がきちんと議論をするような態度(多分に嫌味も入っているがこれは許容の範囲だろう)に変わったので、こちらもそれに応える。ただせっかくなのでこれはメルマガに書いて、概要はプレジデントオンラインに掲載する」と書かれていたのだけど、まだ概要は上がっていないようだ。

これ、橋下さんのお客になってメルマガ読めってこと? それ議論じゃなくて、自分のお客さんに向けての説明のような気がするのだけど、よくわからん。

ということで、概要が公開される前に、これまで私が述べてきた疑問点だけは列挙しとく。橋下さんのメルマガの読者の方々は、以下の私の疑問点に答える内容になっているかを、読み解いてほしいと思う。

一、もはや男系継承ができないとの証明。

橋下氏は「男系を守れるなら守りたい」と述べていたが、「もう絶対に守れない」との証明はされた上での議論なのか。
「もうできない」と「やめた方がいい」は全然違う。過去のツイッターでは、女性のプレッシャーを根拠にしているが、それは「やめた方がいい」の根拠としか読み取れない。

この点に関しては、男系継承派も代案を出していると思うし、出産する女性のプレッシャーを言い出したら女性宮家や女系でも同じだし、皇室がある限りなくならない問題だと思うのだけど。

当面は悠仁親王殿下がおわすので、将来の安定継承が具体的な議論の争点なのだと思うのだけど。これがすべての根源。
こと皇室の話に関して下手な話をすると、悠仁親王殿下から皇位継承を取り上げる恐ろしい話になるので。
悠仁親王殿下がお生まれになる前の13年前とは全然状況が違うのだから、単純な原理原則論を振りかざすだけの議論はできないと思う。

二、「日本国憲法の国民主権(民主主義)」の価値観の方が男系継承に優先する根拠。

ここは実はよくわからない。橋下さんのツイッターを読むと、最初は「国民主権>皇室の伝統」と読み取れる書き方をしていたけど、途中から「皇室は国民の総意がないと支えられない」と書かれていた。前者なら「皇室の伝統>国民主権」の価値観の私とはまったく相容れないが、後者なら賛成できる。しかも、その「総意」は一時の多数決ではなく歴史的な総意と書かれていたので、これも賛成できる。
しかし、それまでの伝統を変える場合は「一時の多数決ではなく歴史的な総意」となると、判定方法が極めて難しい。
この点、どういう解決策を持っていらっしゃるのだろうか。

「男系継承をやめる」が、一時の政治決定ではなく歴史的な国民の総意に適う、というプランを出せるのだろうか。

三、国民の総意の判定方法

橋下さんのツイートを読むと、女系賛成のアンケートから発言されているけれども、まさか一回のアンケートを根拠に公称2679年続いた皇室の男系継承の伝統を変えようとしているのではあるまい。
ただ、そう読めかねない。たぶん、そう読めてしまう理由は次だと思う。

四、抽象的思考能力(ルールそのものの正統性の証明)

「人文科学」云々は撤回したので、この表現は使わない。ただし、中身は極めて重要な問題なので明確にしておく。

最初の私の橋下さんへの言及は、「橋下さんはある価値観に基づいての論理として筋は通っているけれども、その価値観の正統性そのものは所与の前提となっていませんか?」との問いかけ。

別の言い方をすれば、「日本国憲法の解釈学の一つに過ぎない東大憲法学が前提ではないですか」と問いかけた。だから微に入り細に入り、誤解の無いように学術用語で厳密に定義する書き方をしておいた。

橋下さんは政治家で実務家なので、あるルール下に置かれた場合にものすごく具体的に解決策を見出す(そして実行する)能力には秀でている人だとは思う。が故に、そのルールの正統性、裏付けとなる価値観そのものに疑問をもったことがないのではないですか?という問いかけをした。

橋下さんは「現実」を繰り返していたけれども、ではその「現実」って目の前で起きていることだけなのだろうか。実はそれは「現状」にすぎなくて、この世は目に見えない要素があるから、具体的な思考とともに抽象的な思考も求められるのではないだろうか。

ちなみに、私は皇室史学者として皇位の安定継承には並々ならない関心を持っているし、具体的に六つの解決策を考えている。(雑駁ではあるけど、過去のメルマガで流した。世に問う時は、もう少しまとめようと思う)

自分の主宰する倉山塾は憲政史(憲法と政治と歴史)の塾なので、日常的にみんなで議論して考えている。私自身も「男系だ」「女系だ」というワンフレーズの結論では語れないと戒めている。

橋下さんは現職政治家ではないけれども、社会に影響力がある人なので、今後も言動には関心を持ちたい。

とは言うものの、「議論」しようにも、私相手には橋下さんのおっしゃっていることが伝わってこないので、ご興味を持った第三者が判断できるよう、このような独り言を残した。