とある教養ある人が、
「イギリスには憲法がないそうですが」
とおっしゃっていたので不正確な点を正そうと思ったが、
改めて記録に残すべきと思い、書いておく。
問一 イギリスには憲法がないそうですが?
答一 あります。
統一的憲法典はありませんが、憲法はあります。
問二 ではイギリスの憲法とは何ですか?
判例とそれにより蓄積された慣習と衡平の原理、憲法律、憲法習律、憲法的法律、アースキンメイ、そして歴史的文書のことであり、ダイシー伝統のような権威ある教科書の学説は解釈の上で重要な役割を果たすので事実上の憲法を構成します。
これだけ書かれて、一発で何のことかわかるわけがない。
しかし、「わからないこと」を「おもしろい」と思えることが知の醍醐味。だから、知りたいと持った人は、わかりやすく解説しておいたので読んでほしい。
嘘だらけの日英近現代史(扶桑社)
イギリス憲法は、合理的にできているので、ワンフレーズの説明で理解できなくても、手抜きせず一つ一つ丁寧に取り組めば、すっと入ってくるようになっています。
しかし、世界最古の憲法の母国に向かって「憲法がない」という人が多いのはどうなのだろう。日本国憲法のような統一的憲法典がない、なら本当ですが(つまり、憲法典もある)。
某大家が学会で、「イギリスを見習って憲法をなくそう!」と言った瞬間、弟子たちから「先生、ボケましたか」と言われたことがあった。
日本に憲法はいらないと言っている人がいるらしいですが、その方はアナーキストですか?
それ、「無政府状態万歳」と言っているのに等しいので。おそらく、東大憲法学ですら認めている、形式的憲法と実質的憲法とかの区別がついていないのだと思いますが。