リンカーンが作った国―アメリカ合衆国はこんな国(4)

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 歴史を読む場合、あまりにも善と悪が明瞭に分かれていたら疑うべきです。
 大人になったら
「さすがに偉人のようなリンカーンだって何か偽善があるだろう」
などと疑うようになりました。
 甘かった。。。
 ただの極悪人でした。

日本での通説。
 建国以来、自由主義経済を掲げる北部と奴隷制に固執する南部が激しく対立。
 奴隷解放を訴えるアブラハム・リンカーンがアメリカ合衆国大統領に当選。
 南部は連邦離脱を宣言。「南北戦争」に突入。
 4年間の激しい「内戦」(USAにおける正式呼称)の末に、南部は降伏。
 復讐に燃えた南部出身の俳優に、リンカーンは暗殺された。

 だがこの通説には疑問が残る。(宮下秀樹調)
どころか、ほとんどSF級の架空の話?
 これが史実なら、火の鳥の生き血を飲めば永遠の命が得られます。たぶん卑弥呼は大陸からやってきた騎馬民族の神武天皇に滅ぼされたのだし、義経は火の鳥の生き血を飲んだとの疑いで頼朝に追討されたのでしょう。
 というくらい、歴史歪曲と捏造もここまでくれば、もはや立派な創作。

 以下、普通にアメリカ史の概説から年表でちゃんと拾いましょう。

 アメリカ合“州”国結成以来、自由主義経済を旨とする北部州となかなか移行できない南部州の経済格差は大きかった。
 最初はアメリカ合“州”国議長(President)は南部が独占していたので何とかバランスが取れていたが、政治的特権すら失って、南部の諸州は立つ瀬がなくなっていった。
 ちなみに文化的には、黒人奴隷は南部では、愛玩動物か家畜として重宝された。
 間違っても『アンクルトムの小屋』のような馬鹿な扱いはしない。あれが発売された時、南部では「ストウ夫人は黒人奴隷を見たことあるのか」と猛抗議を受ける。
 ついでに南部奴隷主の言い分。「あんな扱いをするのはアイルランド移民相手だけだ」

 北部の人間が南部に入り込んで黒人奴隷の鎖を壊して回るという事件が発生するですが、今の感覚で言えば、動物園の檻を壊して回るのと同じです。

 さらにちなみに北部では黒人の投票率はゼロパーセントでした。
 なぜならば、黒人が投票所に来ようものならリンチをして追い返すからです。
 北部人の発想は「アメリカは白人だけの天国だ!黒人などアフリカに追い返してしまえ!」
 つまり、民族浄化の思想です。
 そういって本当に黒人を送り返してできた国がリベリア(自由の国)。
 その黒人たちが現地黒人を奴隷にするという地獄絵図には、知らん顔。

 さて、「奴隷解放」を掲げてリンカーンがアメリカ合“州”国議長(President)に就任。
 南部諸州は連邦離脱権を主張。アメリカ連合国を結成。
 リンカーンは「奴隷解放をやらないから戻ってきてよ」などと猫なで声で懐柔。
「公約破り」の批判もなんのその。
 同じ南部でも、南西部には「連邦に残ってくれたら奴隷制を残すよ」と説得に成功。
 こうして、アメリカ連合国(南東部)は、三方を包囲される形勢となる。

 ここで追い詰められたアメリカ連合国が、アメリカ合“州”国を奇襲。
 緒戦の有利にフランスとスペインが国家承認をしてくれる。
 焦ったリンカーンは、英国首相が奴隷解放原理主義であったことを思い出す。
 そして「これは、自由主義と奴隷制の戦いだ」などと、内心はどうでも良いと思っていることをプロパガンダ。
 フランスに北米大陸をくれてやる気のない英国は、リンカーンに好意的中立を約す。

 で、開戦二年目のゲティスバークの戦いで大勢が決したところでリンカーンが有名な演説。
「私たちは英霊の前に誓います。
 民衆の、民衆による、民衆のための連邦政府を永遠に守ります。」
 つまり、アメリカ合衆国は州の集まりではなく、民衆の意思によって成立した国なので、州には連邦政府からの離脱など許しません、ということです。
 実質的にはリンカーンが南北戦争(内戦)に勝利して、連邦離脱権を認めないことにしたのですが、ジョージ・ワシントン以来、統一したひとつの国民国家だったことにしましたとさ。

 つまり、南北戦争とは「連邦離脱権」をなかったことにする戦いです。
 黒人奴隷?その後百年、差別され続けましたが何か。

 これでもかと絶版ですが、
中屋健一『大世界史 偉大なるフロンティア』(文藝春秋、一九六八年)
がまとまっていると思います。(以後の概説書はここから逆行・レベル低下している?)

 ちなみに、南北戦争の本らしい。

誰が殺した?日本国憲法!

(講談社、税込1680円、好評発売中)

「リンカーンが作った国―アメリカ合衆国はこんな国(4)」への6件のフィードバック

  1. こんばんは。

    >倉山先生
    分かりました!
    徴兵について私の思は26日のコメントにさせて頂きました。

    しかし現実問題徴兵制・軍隊を毛嫌う人が大多数います。
    それを私が良し悪しを言う立場ではありませんし、
    言ってはいけません。

    もしつくったとしても、そこが最大のネックになり、
    民主主義に反する!や国民の支持が得られないからすぐ廃止!
    などの事態が目に浮かびます。

    そこで!
    逆転の発想をして、「徴兵制ができ、軍隊が再構築された」として
    まず始めにどのようにしてそれらの意図・必要性を国民に理解させるかを
    考えてみようと思います。

    私はまだ思いつかないんですが・・・
    また、浮かんだら書きます。(自衛官を教師に!)も考えます。

    ありがとうございました。

  2. >アメリカ合衆国は州の集まりではなく、民衆の意思によって成立した国なので、州には連邦政府からの離脱など許しません

    僕はこれまで正しい邦訳は、アメリカ合州国であって合衆国ではないと思って来たのですが、先生のこの解釈により「合衆国」もありだなと妙に納得してしまいました(笑

    ところで話は変わりますが、奴隷と云う言葉を受けて、思いのままに駄文を書きます。
    最近「日本人は将来、奴隷にされてしまう」と云った意見を良く見るようになりましたが、僕は、奴隷というより家畜ではと思ったりします。
    奴隷は自ら考える頭を持っていてその精神のまま行動できるけど、家畜は自ら考えたり反旗を翻すことはないから。
    それに例え自分では考えてるつもりあっても、仮に戦うことが悪だと洗脳されていれば、もはや誰も戦おうなんて思わないし、何より思えない。さらに奴隷は自らが奴隷であることを自覚していますが、家畜は自らが家畜であることすら全く認識してないところが決定的に異なります。
    つまり、自分が奴隷であると認識出来ない奴隷は、家畜であって、その家畜は自らを家畜であると認識できないため、死ぬまで何の疑問もなく、その地位を享受し、何も感じずに甘んじてただ生きて行くのでしょう。
    日本人が既に奴隷や家畜であるかの議論はさておき、現在日本の支配層は、心清き大和民族ではないことは明らかだと思いませんか。
    それに、政府の最優先事項は「国民の仕事の創出」だと言っても過言ではありませんが、残念ながら今は、完全に国内から仕事が減る方向に急速に進んでいますから、仕事なくてどうやって暮すと云うのでしょうか。
    砦の若い世代の方への、僕からの小さな問題提起です。

  3. 倉山さん
    こんにちは。藤沢です。
    面白かったです。

    リンカーンって、インディアンへの対応は、これこそ正に虐殺ですよね。見た感じですと、南北戦争(内戦)も、ホームステッド法を巡っての対立が背景にあった様に思われます。

    あと、戦争呼称は確かに大事ですよね。騙されないようにして行きたいです。この点につきましては、今後とも折に触れて確認及び教えて頂ければと思います。

    完結目指して頑張って下さい。それではまた。

  4. 倉山先生、確か渡部昇一さんの本にも「アメリカは皆の衆の国」と書いてありましたぞ。
    陪審員制度も、国家権力の介入を最小限に抑えるためと聞いたことがあった。
    被告人が有罪か無罪かを決めるのは陪審員であって、裁判所ではない。
    裁判所は刑の程度を決めるだけでしたな、確か。

    話は横道に大きく逸れるが、今朝の河北新報にこんな記事が出ておった。

    「立派なこと言うけど泥かぶらない」
     民主党の安住淳国会対策委員長は30日のテレビ東京番組で東日本大震災の復興に関し「自治体の首長は増税しないんだから(批判されにくい)。国からお金をもらい、自分は言いたいことを言い、できなければ国の責任にすればいい。立派なことは言うけど泥はかぶらない。この仕組みは何とかしないといけない」と指摘した。
    被災地首長らから相次ぐ政権批判に苦言を呈した形だが、批判を招く可能性がある。衆院宮城5区選出の安住氏は被災地支援に熱心なことでも知られるが、この日の番組では「全部国会議員が悪いというのは感情的な話だ」とも語った。
     被災地首長への対応をめぐっては今月初め、松本龍前復興対策担当相が「知恵を出さない奴は助けない」などの発言で引責辞任している。

    そういえば、インターネットのニュースでも同じ記事が出ておったよ。

    父親が元牡鹿町長だし、確か本人の支持基盤は宮城5区でも半島部だったはずぢゃ。
    その御本人にしてこれぢゃから、開いた口が塞がらぬて。

    「自治体首長は増税しないから批判されにくい」とはつまり、
    アン・ジュージュンは増税賛成なんぢゃな。
    増税すればデフレがデフレを招き、経済がどうなるか分らぬはずもあるまいに。
    しかもマツモトリューが失言で詰め腹を切らされたすぐ後なら、もう少し口を慎んでもよさそうなものぢゃ。
    あの失言癖は、眠腫党の持病かのう。

    権力側に立った途端、尊大に構える奴がおる。
    アン・ジュージュンはさしづめその典型ぢゃろう。
    それともあれが奴の地なのかのう。

    あのての徒輩には、有権者が天誅を下さねばならぬ。
    民意は天の意志ぢゃ。
    そうは思いませぬか。

  5. 三島様
    まず、徴兵制と志願兵制のメリットデメリットを並べてみましょう。

    佐伯様
    >現在日本の支配層は、心清き大和民族ではないことは明らか
    これ、民主党以上に自民党がひどいから困りものです。

    藤沢様
    あと二回で完結です。

    ほらふき男爵様
    >「皆の衆」
    にしようとも考えたのですが。

    >有権者が天誅
    まずは9月6日に向けてご意見募集中ます。

  6. 安住淳の発言は、テレ東で発言したというのがとても不愉快であり、なめきった態度だと思います。テレ東は東北では放映されず、言っても大したことないと思ったのでしょうか、人を馬鹿にしている。

    安の顔にナマズひげを書いてこう言いたい
    「おまえが震源地だ!」

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