第二次世界大戦の勝者は誰だったのか?(3)―ドイツの場合

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 第一次大戦の勃発は必然ではないです。
 何一つ合理的理由がないのですから。

 『レクサスとオリーブの木』なんかが「経済的に相互依存していれば戦争は起きない」とかいう言説を撒きちらすのですが、それには前提があります。
 お互いが合理的経済人であることです。
 つまり最低限「戦争したら損だからやめよう」という計算ができなければならない訳です。
 では第一次大戦前のヨーロッパは?すべての国が英独二大国と緊密な貿易関係にありました。
 ところが、バルカン半島の小国は「自分が不幸でも他人がもっと不幸ならば幸せ」という、合理性のかけらもない連中です。だから二度のバルカン戦争を六大国で止めたら、今度はセルビアが大国のハプスブルクに喧嘩を売るという有様で不幸は拡散されました。

 逆に第二次大戦は、ヴェルサイユ体制はドイツ抹殺体制なので、ケインズ博士などは「これは必然的に次の大戦を招く」などと予言したほどです。

 では第二次大戦におけるドイツの戦争目的は?
 ヴェルサイユ体制の打破・生存圏の確立、です。
 最終的には(米英よりも)ソ連にひどい目に遭わされて、国家分裂亡国の憂き目を見ました。
 ただ、第一次大戦後のワイマール共和国の惨めな有様と比べればどうだ?という話です。
 ワイマール共和国と東ドイツ、どっちが悲惨かという論争も必要かもしれませんね。
 それくらいワイマール共和国には何一つ良いことがなかったです。
 ヒトラーがミュンヘン会談でやめておけば、ビスマルク以上のドイツ史に残る偉大な政治家として終わったでしょう。
 例のユダヤ人への迫害が激化するのもこの後ですし。

 忘れてはいけないのは、ヒトラーはユダヤ人以外にも大量の残虐行為を働いています。
 敵国人や反逆者だけでなく、ドイツ国民でも同性愛者や身体障碍者も「生きるに値しない命」として片っ端から殺していますから。
 またユダヤ人を殺しまくった大悪人と言えばスターリンを忘れてはいけないですし。
 日本だと「ヒトラーがユダヤ人を殺しました」とアホの一つ覚えみたいに覚えさせられるのですが、条件反射的にそれしか言えないとユダヤ人の前で恥をかきますから。

 結果的には大国のクセに敗戦国、なのですが、ワイマールの悲惨さを抜け出したのでマシ、
という評価はまずいのでしょうかねえ。

「第二次世界大戦の勝者は誰だったのか?(3)―ドイツの場合」への0件のフィードバック

  1. この評価、小生は大いに共感できます。
    是非、当事者たるドイツ人にも聞いてみたい話です。

  2. ナチス礼賛が「ダメ」ならば、共産主義礼賛は「もっとダメ」なはずなのに、未だに大学の中では生き延びているのは、なぜなんでしょう?

    同様に、かつての日本軍を「悪」とするなら、学生運動で世間に多大な迷惑かけながら何ら反省せずに生き延びている連中は、刑法犯として刑に処されるべきなのですが。

  3. ヴァイマルの反省から「不信任は建設的でなければならない」
    最近は痛すぎだな。。

  4. 反ユダヤ感情や反ユダヤ思想、ユダヤ人迫害は
    ナチスの専売特許ではありません。
    なにせ「ポグロム」はロシヤ語ですし、
    スペインの異端審問も、主な標的にされたのはユダヤ人だったそうです。

    ナチスドイツ占領下で行なわれたユダヤ人狩りに、
    現地の協力者がいたことを忘れてはなりません。

    こういうことを口にすると、
    「お前はナチスを弁護するのか」
    「現地の協力者は強制されて仕方なしに協力したのだ」
    などと目を△にしてお怒りになる皆様がいらっしゃいます。
    これが「リベラル」で「進歩的な」考え方の持主に多いのは不思議なことです。

    確かに第一次大戦後のドイツには匕首伝説もあり、
    反ユダヤ思想はドイツ人に馴染みやすいものでした。
    ミュンヒェン会談の跡でユダヤ人迫害が激化する・・・
    やはり戦争に際してドイツ人を一つにまとめる必要があったからでしょうか。
    少数者を敵に仕立て上げて集団をまとめるというのは
    煽動政治の常套手段ですが。

  5. 私の恩師のひとりでもある山中敬一先生は「ナチス犯罪研究の第一人者」として高名な人物ですが(ちょっとマニアックな人なら「客観的帰属論」という言葉も聞いたことがあるかもしれませんが)、別にナチスという政治体制そのもが悪だとおっしゃってるわけではありませんでした。

    ナチスと聞いただけで過剰反応を起こす人達って、犯罪事実と政治体制に対する評価をごっちゃにしてるようにしか思えませんね。私も政治体制としてのナチスについて評価を聞かれたら「そんなことは俺の専門じゃないのでわからん。政治学の研究者にでも聞いてくれ!。俺が問題にしたいのはナチスの「行為」だけだ!」と答えるようにしてます。

  6. 倉山先生。先日は貴重なお話ありがとうございました。
    世の中には意外なところに敵がいて、意外なところに味方がいるものなんですね。
    昨日の友は今日の敵とか今日の敵は明日の友とかいいますが、場合によっては一生、敵の場合があるのですね。

  7. 佐伯様
    ドイツ人は三回大戦に負けて(含・ナポレオン戦争)、本当に賢くなりました。「今度はイタリア抜きで頑張ろう。でも今の日本とは組みたくない」だそうです。

    竹光の剣士様
    お久しぶりです。
    売国奴は独立回復後に「市中引き回し」が文明国基準です。尾崎秀樹とか鳥尾鶴代が威張りちらしていた戦後日本の言語空間。。。

    ほらふき男爵様
    仰るとおりです。
    私の意図は、ヒトラーだけでなく、同じかそれ以上に悪い奴らの隠れ蓑根性をあぶりだすことです。

    叔父さんの息子様
    ファシズムの派生であるナチズムは、私は嫌いです。なぜなら変態の集大成だからです。

    大陸浪人様
    総理を引き摺り下ろしたいなら、次に誰を総理にするかを示す。憲政の常道ですな。

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