帝国憲法改正案・一条

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 憲法を定めるとは国の形を決めること。
 どこの国でも、第一条で決めるものです。

第一案
 日本国は万世一系の天皇が之を統治する。

第二案
 日本国は万世一系の天皇が之をしらす。

 国名を大日本帝国から「大」と「帝」をとって日本国にしよう、というのがジョージ松本と美濃部博士の出発点。
 憲法を定めるとは国の名前を決めるところからはじまるのです。
 だから、日本国憲法の改正によって「東アジア人民共和国」とかにされたら困るのです。

 これはあらゆることで対立した戦前の憲法学者でも全員が合意したことですが、「帝国憲法で天皇を定めたのではない!帝国憲法は確認しただけだ」です。

 日本国憲法第一条は「国民の総意により」とか、誤解を招きかねない下手糞な表現ですね。
 まあ宮沢俊義やケージスは日本を共和国にしたかったくらいだから、さもありなん。
 象徴?なんだそりゃ?

 さて、第二案は伊藤博文たちの最初の草案です。
「ウシハク」ではなく「シラス」。
 ただ、シラスは既に当時の日本人にとってなじみのない古語だったので見送り。
 国民にわかるような用語にしたとか。

 で、統治ですが、支配ではないです。
よく「君臨すれども統治せず」と言われるのですが、正確には「統治すれども支配せず」です。

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「帝国憲法改正案・一条」への17件のフィードバック

  1. 「ウシハク」と「シラス」

    中学・高校で古文の授業があるために、古語との時間的距離がさらに遠くなった現代のほうが、逆説的にも古語になじみがありますね。

    「シラス」は古語の中でも基本的な語彙ですが、「ウシハク」を教わる機会はほぼないと言ってよいかと……。本居宣長など国学にふれた際には、語源的にアプローチできるのですが。古い語彙で「萬葉集」にも使われています。

  2. >日本国は万世一系の天皇が之をしらす。
    僕は、断トツで第二案で決まりです。
    皇室と臣民との歴史を表すに、これ以上ない表現だと思いますから。
    僕を含めて日本語力の低下が著しい昨今、素敵な日本語をきちんと後世に伝えて行きたいですね。
    そして、学べば学ぶほど、皇室が如何に奇跡的なご存在であられるかをしみじみ思います。

  3. TEAPHILE様 佐伯様
    では第二案で。笑
    冷静に考えれば、「なじみが無い語」と「誤解を招きやすい語」だったら、後者は不可ですね。
    憲法は教育による精神の普及が重要ですから、「なじみがない」は不採用の理由にならないと思います。

  4. 現在日本の国名は「日本国」となっていますが、国璽は明治7年に制作されたものを今も使っていますし、その印面は「大日本国璽」となっています。国璽が出来た明治の初期は世界のなかではまだ小国でありながらも、国名は大日本国を称していたわけです。私は「日本国」でなく、「大日本国」とするところになんらかの歴史的な意味があると思います。単純に大の字を略するべきではないと思いますが、如何でしょう。

  5. もうひとつ、大東亞戦争において、敗戦を受け入れるに際して国体護持が必須条件であったし、実際、日本国憲法でも天皇条項が存続したわけで、実質的に日本は国体としては帝国憲法となんら変わりません。ですから正確には現在も「大日本帝国」と称しても良いわけです。これは領土の大小とは関係無いことです。そういう意味において帝国憲法の第一条はそのままで何ら差支えないと思います。はっきり言って一度の敗戦で明治以来の国名を変えるという屈辱を後世に残すべきでは無いと思います。たとえば、あの大英帝国でも戦後、大半の植民地を失い、経済力みすぼらしくもなっても”United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland”という国名となっているではありませんか。

  6. 佐伯さま
    どうもはじめまして。
    >僕を含めて日本語力の低下が著しい昨今、素敵な日本語をきちんと後世に伝えて行きたいですね。
    まったく同感いたします。「今の時代、英語ができないと……」などとよくいわれますが、まずは日本語をしっかり勉強してほしいと思います。すこし話がそれますが、英文を正確に解釈できるかどうかは、日本語能力にも大きく左右されることを多くの人は見逃しています。

    倉山先生
    >では第二案で。笑
    ちなみに、「天皇」は「すめらみこと」ではなく、「てんのう」と読んでよいのでしょうか?
    一応確認してみました(笑)

    ねぼけ猫さま
    どうもはじめまして。
    >もうひとつ、大東亞戦争において、敗戦を受け入れるに際して国体護持が必須条件であったし、実際、日本国憲法でも天皇条項が存続したわけで、実質的に日本は国体としては帝国憲法となんら変わりません。
    国体は戦前と戦後で断絶していないということですが、果たしてそうでしょうか?

    もし仮にですが、マッカーサーたちがポツダム宣言に従い、また国際法にもとることをしていなかったら、国体は断絶しなかったかもしれません。しかし、そうはいなかったことはご存知だと思います。そもそも敗戦や占領ということ自体が日本にとっては大きな出来事でした。ましてや、国体そのものといってよい憲法が変えられてしまったのです。国体そのものといったのは、英語では「憲法」を “constitution” といいますが、もともとは「体質」という意味ですので、「国体」とは「国の体質」であり「憲法」であるということです。また、憲法とは「歴史、伝統、文化の総体」であるということも付け加えさせていただきます。せめて独立回復後に日本国憲法を無効にしていればと思いますが、その憲法でも何でもない憲法が定められてから、もう60年以上経ってしまってしまいました。

  7. 倉山先生、この間30号館で質問した者です。
    今回の震災、とりわけ原発災害において日本の法律の不備はあったのでしょうか?また政府対応が遅い感が在りましたが、そのことは法律関係で政府や政権が行動を起こせなかったということでしょうか?

  8. こんばんは。

    「うしはく」と「しらす」の違いを調べました。
    やはり大日本帝国憲法は「うしはく」をうまく不可能にした憲法でしたね。
    この点から考えても帝国憲法は素晴らしい唯一無比の憲法ですね。

  9. TEAPHILE さま
    こんばんは。はじめまして。
    レスありがとうございます。
    外国語の勉強も確かに大切ですが、経験的にも会話できない語学はコミュニケーションツールとして何の役にも立たない無用の長物です。
    下手でも会話できる、言いたいことを伝えることができる外国語能力はその人の人生を豊かにしてくれると同時に母国語への意識を高めてくれると思います。
    偉そうに言う僕も、本来の美しい日本語を求めて最近は、雪国等を好んで再読しているのですが、これって翻訳できるのかとも思うほどにまさに文学と呼ぶに相応しい美しさと品格に改めて感動しきりです。
    何故か最近の流行りの作家の作品、例えば海外でも人気の村上某さんの作品には、僕の乏しい知性では、文章の美しさを全く実感できないので…。
    >英文を正確に解釈できるかどうかは
    先日のレスで、侵略の定義や国際法の侵略戦争の概念についてご意見拝読致しましたが、ご意見御尤もでございます。
    United Nationsを国際連合とどうすれば訳すことができるのでしょうか(笑
    国際社会とは、絶対権力と権威を有さない故にアナーキーにして無慈悲なものだと思うのですが、それに比べ我が国は、皇紀2671年の伝統と歴史、万世一系由緒正しき皇室と云う最高の権威を有する本当に奇蹟のような幸運な国だと常々思います。
    先生が仰る通り、
    >憲法は教育による精神の普及が重要ですから
    一日も早く、馴染みの無いものを馴染み深いものとし、伝統と文化に裏付けされた精神を普及する教育を我が祖国に取り戻したいですね。
    とりとめもない駄文で恐縮ですが、これからも宜しくお願いします。

  10. ねぼけ猫様
    私は大日本帝国で構わないと思いますが、松本博士や美濃部博士を越える論拠を持ち合わせておりませんので、日本国にしました。
    ねぼけ猫様が松本博士と美濃部博士の議論を踏まえた上で越える論拠を示された場合は、まったく日本国にこだわりません。

    TEAPHILE様
    吉野精神に則った返答をさせていただきます。
    どっちでも良い!
    ついでに「すめらみこと」でも良い。笑

    某30号館君
    戒厳令も、夜間外出令もない。
    原発に関しては法律の不備とかそういう問題ではないと思います。

    三島君
    ちなみに調べた結果、どう解釈しましたか?

    佐伯様
    どっちの村上さんですか?(わざと)

  11. 日本国は天皇が統べ治める
    がシンプルで良いと思います。
    「万世一系の」は皇室典範に記すことですし、「しらす」は古風ですが曖昧で後世に解釈論議へと発展する恐れを懸念します。

  12. 倉山先生
    こんにちは。
    レスありがとうございます。
    両方です…(笑 

  13. 佐伯さま
    こちらこそ、レスをいただきましてありがとうございます。

    >外国語の勉強も確かに大切ですが、経験的にも会話できない語学はコミュニケーションツールとして何の役にも立たない無用の長物です。

    近年の英語教育の状況は、従来の「文法訳読法」批判を受けて、会話重視にはなってきていますが、良いほうに向かっているかというと、ノーです。すべてが中途半端になってしまっていて、会話ができないどころか、読めもしない、書けもしない、会話もできない、そういう学生が生まれつつあります。中学は平成24年度、高校は25年度から、新学習指導要領が実施されますが、さらに英語教育界は迷走するだろうと見ています。

    私としては、英語という言語体系から、いかに母語である日本語の言語体系に移し変えるか、つまり英文解釈が一番の知的訓練になると考えています。母語と外国語を比較・対照しつつ解釈していくことになりますから、同時に母語に対する目を養うこともできるのです。

    >何故か最近の流行りの作家の作品、例えば海外でも人気の村上某さんの作品には、僕の乏しい知性では、文章の美しさを全く実感できないので…。

    村上某さん(両方です笑)の作品を読んだことはありませんが、私もなぜそんなにも人気があるのかわかりません。もっとも、読んだことがある日本の小説といったら、非常に偏りがあって、古典であれば「源氏物語」、近代以降は丸谷才一さんの『輝く日の宮』のみですから、内容や文体といった具体的なものではなく感覚に過ぎないのですが……。

    >United Nationsを国際連合とどうすれば訳すことができるのでしょうか(笑

    “international(国際間の)” という単語を使いだしたのは、あのベンサムでして、18世紀後半にできた単語の1つです。「国際」というのは、「2か国あるいはそれ以上の国々に関係した」といったところですから、”nations” と複数形であるからには2か国以上だろうということで、「”United Nations” =国際連合」となったのではないかと。時系列が逆ですが、「”League of Nations” =国際連盟」も同様ですね。

    それはともかく、英語のことわざで「共同責任は無責任」という意味のものがありますが、「四カ国条約」や「九カ国条約」がまったく意味をなさなかったように、多国間というのはあやしいものですね。

    ちなみに、大学の学部・学科の新設や名称変更において、「国際」という言葉を学部・学科名に入れると、倍率が上がるという「伝説」があります(笑)

    私のほうこそ、とりとめのない文章になってしまいましたが、どうぞよろしくお願いします。

    倉山先生
    >どっちでも良い!
    自分で確認しておきながら、予想通りの返答がきて笑ってしまいました(笑)
    本質はそこではないということですね。
    つまらない質問をしてしまいまして、失礼いたしました。

  14. こんばんは。
    「だれこれ」第5章を読ませていただきました。条文に書いてないから何をしてもよい。悪いことではない。常識が知らない人が総理だったとは・・1から10まで条文に書かないとわからない日本人ばかりなのでしょうか。「だれころ」完読させていただきました。本をほとんど読まない私でも読みやすく、とても興味深い内容でした。本の紹介ありがとうございました。

  15. 楓様
    長年に渡る日本国憲法第三条の議論から察するに、「統べ」と「治める」の違いで学説が割れると思いますが。ちなみに「シラス」は漢字で書くと「治らす」です。

    谷君
    憲法とは「みんなの意識」です。
    なぜ山本権兵衛が震災時に正しい行動を採れたのかを考えてください。
    『正論』の「大震災で露呈した日本国憲法の致命的欠陥」を参照。

  16. >United Nationsを国際連合とどうすれば訳すことができるのでしょうか(笑

    きちんと訳すると「連合国」
    つまり第二次大戦の戦勝国の集まりのことで、
    これを「国際連合」と訳することで
    国際連盟が発展したものとの誤解を与えている。。。

    と言われたいのですよね。

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