宣伝の話(3)―儒教そのものがプロパガンダ

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 思い出そう。中華帝国すなわち「中国」が成立したのはいつか。秦の始皇帝の時である。最初の中華帝国の皇帝だから始皇帝である。

 ではそれ以前の戦国の七国は?別の国です。今のEU各国以上に別の国です。たまたま秦が力と陰謀で周辺諸国を亡国に追いやり、併合して成立したのが秦(China)である。

 三皇五帝や夏以来、「中国」と言う一つの国が存在した、というのがプロパガンダである。
 ここで中国史の法則。「政治の最終的勝者は好き勝手なことを書いてよい!」である。

 三皇五帝や夏以来、自分に至るまで「徳のある自分が天命を受けて数千年来の伝統のある支配者の地位に就いた」などという歴史観は歴代皇帝にとって都合が良いので、全員継承して今に至る。毛沢東とか自分と始皇帝を比較するのが大好きだったし。

 さて、この始皇帝が尊敬したのが、普通なら「政治をわかる推薦図書シリーズ」で二回目までには紹介しなければならない、韓非子である。
 東の韓非子、西のマキャベリと並び称される。「三流は三国志を読み、二流は孫子を読み、一流は韓非子を読む」とも言われる。

 山田耕作の「待ちぼうけ」を音楽の授業で、漢文の授業で「守株」の話を習った方は多いと思う。あれは韓非子の話である。(ただ『韓非子』の難点は、本人が書いていないところを、初学者は絶対見抜けないところである。)

 で、韓非子の言っている大事なことを要約すると。。。

 儒学者(儒教)は孔子以下全員馬鹿!綺麗ごとばかりで何の役にも立たない。論破した上で野垂れ死にさせろ!
 政治とは人間関係の術。絶対に油断するな。特に自分を殺す可能性のある人間の逆鱗に触れるな。
 というか、人間関係そのものが油断など一切出来ない。例えば王妃が君主を殺して実権を握れば、やりたい放題できる。誰も止められない。だから誰にも心を許すな。
 弱小国家が外交などと小ざかしいことを考えるな。軍事力を整えよ。教育するヒマなどないなら、不要の言説を流す輩を片っ端から殺せ!
 法とは国家の統治の根幹。すなわち権力者の命令である。逆らう者は皆殺し!というか殺すための言い訳が法。
 権力者は法が徹底しているかどうかだけを考えろ。他の人間に自由意志はない。結果責任とは法の徹底によってのみで測る。
 以上が嫌なら世捨て人になれ。政治にかかわるならこれくらい覚悟しろ。

 たぶん、普通の日本人、ついていけないと思う。
 実は常識論しか言っていないマキャベリと比べると、以上の要約を一回で理解できる人って、どういう人生を送っているのですか、とかになってしまうのである。
 というか、中国人ですらさすがについていけなかった。
 というのは、始皇帝の秦はこれを建前として推奨したのである。そして十五年で滅んだ。
 そこで次の漢を建国した劉邦は建前として儒教(儒学)を採用したのである。儒学はそもそもほとんど宗教と化した儀礼と道徳の教えなのである。
 いかなる国家にも国家儀礼は必要である。ユーラシア大陸のような生存競争が激しい土地では、礼儀作法とか道徳とか宗教とかで縛っていないと、力と陰謀がむき出しになってしまうのである。
 そこで「私は決して怪しい者ではありません。礼儀正しいいい人です」などと他人を騙す道具として儒教(儒学)が必要とされたのである。日本などと比較にならないほど、建前と本音が乖離しているのである。

 さらに大事なことは、建前として儒教(儒学)を採用しながら、本音というかやっていることは韓非子である。歴代中華帝国の歴史でそうでない人を探す方が難しいくらいである。
 例えば、日本では聖人君子のように扱われる諸葛孔明など、教条的な韓非子主義者であり実践者である。というか、上の要約、孔明を思い出しながら書いた。

 しばしば「日本は中国と張り合うべきである」などと大言壮語する人がいるが、まず以上のようなことはわかってからにしてほしい。
 その主張の結論自体には賛成なのだが、今日書いているようなことを知ると「恐いからやめよう」などと言い出す人がいるので困る。
 日本と中国が張り合う。これは宿命である。日中友好は、小平時代のように、ソ連と言う共通の敵がいる場合には有効だが、どうしても張り合うのが宿命なのである。
 日本が屈服したら、アジアで誰が中国の覇権を止められるのか。

 生活様式の儒教(儒学)がそもそもプロパガンダで、本音は韓非子。
 まずは日本人は知った上で脅えないことである。聖徳太子以来、一度も軍門に下ったことはないのだから。(足利義満?誰ですかその人?というのが戦前の日本人の態度。)

 なお、儒教(儒学)は重要である。
 例えば、金正日は父・日成の没後、三年間はめぼしい活動をしなかった。要するに喪に服していた訳である。謎でも何でもない。
 国際政治において、相手の行動様式を知ることは基本である。

 次回、世界一宣伝下手な日本人?

 ちなみに韓非子の副読本として以下。
小室直樹、西尾幹二、市川宏『韓非子の帝王学』(プレジデント社、一九九八年)

 すごい執筆人の並びだが、内容の統一感ゼロ!

 

「宣伝の話(3)―儒教そのものがプロパガンダ」への0件のフィードバック

  1. 「支那では、世のあらゆることどもが政治=権力の奪取・維持の手段に過ぎない」というのは、支那に関わる全ての国、というより人が心得ておくべきことでしょうね。かの国では、歴史・外交・祭祀までもが政争の具になると言われてます。何せ外国の国家元首まで自国の政治に使うぐらいですから(というより、それに乗っかる馬鹿正直な国が存在するというのが信じられんが)。
    タケシマンの敵組織の大首領は、始皇帝をモデルにしようと思ってますが…すでに大幹部が日本にいるという事態もどうにかできんもんかな。ショッカーですらゾル大佐を派遣してきたのは2号ライダー編からだったのに…

    結論:あんな国と歴史を共有するなどやめたほうがいい、というより共有しちゃけない!

  2. 儒学に書いてある孔子の理念に一番近い国は日本だなんて石平さんが自著でおっしゃっていましたね。

    ここまで乖離していると…。

    加藤紘一が箸を使い漢字を使っているから中国と日本は近いし欧米と比べてもの凄く近くて兄弟だか親友みたいな国だって言ってたけど。文化圏的に一つだと。

    これじゃあ常識的に文化圏が違う国ですねえ。なんか漢文の授業で臥薪嘗胆の話を読みましたけど、そこの解説で復讐の際に墓の中の死体に対して鞭うったりするんだそうです。その話を聞いただけで宗教間から何から違う国でイスラム教徒と日本人がおんなじだと言っているんじゃないかと気がしました。

    そういやあ関係ないですけど、在日コリアンという言い方はプロパガンダ的な気がしました。

    今日、大学の英会話講座にて差別についてどう思うかという議論で大まかな方向性は日本人は外国人に対してカナダとかに比べて排他的ではないかという話でした。

    その時に在日の話が出ました。

    そしたらカナダ人の先生が、在日コリアンは朝鮮学校を作り金正日の肖像画を飾り学校では母国の文化と言語をかたくなに守らせる集団は同化努力もしていないし彼ら自体が閉鎖的でおかしな集団だとおっしゃっていました。
     
    カナダに住むパキスタン人などはコミュニティーも形成するがカナダ社会で存在が認められるように社会の中で同化に努めるという点で在日朝鮮人とは違うとのこと。

    それにカナダ人先生は在日朝鮮人の集団のことをノースコリアと括っていました。彼らを北朝鮮人と呼んでいたのでした。

    いくら朝鮮民族であってもちゃんと国籍で呼ぶべきではないでしょうか。朝鮮系の集団ではなくれっきとした別国籍の人間ですから。

  3. 度々関係ないことでごめんなさい。
    日教組の性教育ですが、ここまで酷いと知りませんでした。どうぞご覧ください。眩暈がします。http://www.youtube.com/watch?v=nSC6MqDBLBM

  4. >今は刀使えた幕末が羨ましい様
    見ました。このUP主、なかなかいい編集センスしてますね。著作権法違反の疑いのある部分もありましたが、それはそれとして…

    だいたいこの手の変態教師というのは、ウィルヘルム・ライヒというほとんどカルト教団教祖とでもいうべき人物の信奉者です。ちなみにこの教祖様、晩年は本当にカルトにはまってアメリカで詐欺罪の有罪判決を受けて獄死しています。このあたりの事情は、『2004年版日本の論点』で八木秀次が紹介していますので、機会があれば一読してみることをお勧めします。

    性教育自体は大事なことですので尊重すべきではありますが、そもそも性に対する科学的知識もなく、学校帰りにツタヤで過激なAV借りて自宅で鑑賞しながら子供の成績の採点してるような人たちに、教育者を名乗ってほしくはないですね。

  5. >叔父さんの息子様
    有難うございます。そういうことだったのですね、でも犯罪者シンパが教育の現場にいるとはとんでもないことです。八木秀次先生、聞いたことがあります。また時間ができたら調べます。以前松浦光修先生の南洲翁遺訓を読んで「いいかげんにしろ 日教組」も読んでみたいと思いましたが廃版になったのか、ジュンクドウに全国どこにももうないと言われて諦めてました。
    ここに来られる方は教育を考えておられる方と思ってシナと関係ないのにコメントさせて頂きました。
    毎日悲しくて悲しくて、情報を集めても、私自身消化不良を起こしそうで、拉致問題も調べるのが途中でストップしてますし、追いつかずにヒイヒイいってます(>_<) あと今日は石垣島の選挙も迫っているのでメールして寝よう、などと思ってます。

  6. >そういやあ関係ないですけど、在日コリアンという言い方はプロパガンダ的な気がしました。

    今日、大学の英会話講座にて差別についてどう思うかという議論で大まかな方向性は日本人は外国人に対してカナダとかに比べて排他的ではないかという話でした。

     在日「コリアン」という言い方は、いかにも日本国内に存在する少数民族のような言い方で誤解を招く可能性があります。彼らは、在日ドイツ人や在日アメリカ人と同様、政府の許可を得て在留を得ている「日本国籍を保有していない外国人」に過ぎませんから、在日朝鮮人と呼び、「外国人」としてキッチリ区別する必要があります。
     

  7. シナのことに関係あるので載せておきました。一読の価値ありと思います。
    中韓を知りすぎた男 世界は崩壊のオンパレード http://goo.gl/fb/NisE

  8. 儒教という大義名分を使うと、「祖先への礼を尽くして何が悪い」ということになります。つまり愛国教育と儒教はなんら矛盾しないんでしょうね。
    逆にいえば、日本が相手にされないのも向こうからすれば当然で、
    父祖のむくろを数十年も野晒にするような連中など話にならないのでしょう。

    今は刀使えた幕末が羨ましいさん
    ジェンダー教育というのは左翼が逃げ込んだ最後にして最大級の巣窟でしょう。原理原則論では間違ってはいないのですからきわめて始末が悪いです。
    かつて少しかかわったことがありますが、本当に反吐が出るような議論しかしません。
    連中が破綻している最もいい例が、お茶の水女子大と奈良女子大の存在です。

  9. >儒学はそもそもほとんど宗教と化した儀礼と道徳の教えなのである。

    ほとんど宗教もなにも、根本にあるのは祖霊崇拝やそれに基づく宗教儀礼そのものだと思いますけど?
    祖霊崇拝だからこそ孝を重視しているし、宗教儀「礼」だからこそ礼もまた重要。

  10. とおりすがり様
    すみません。何をおっしゃっているかわかりません。私の言う「はそもそもほとんど宗教と化した儀礼と道徳の教え」をどう捉えたのかを明確にし、とおりすがり様の「宗教」を定義した上で、何が論点なのかを提示してください。
    これでは反論も同意もできませんので尋問させていただきました。

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