国際法は「殺し合い」の掟(ルール)

LINEで送る
Pocket

最近は枕詞で「私はロシアやプーチンの味方をする訳ではないけれども」と断ってから、延々とロシアやプーチンの弁護、ウクライナやゼレンスキーの悪口を言う人間が増えている。

程度が低い。

絶句したのは、「今、欧米から流れてきているロシアがウクライナを攻撃している映像なんてフェイク(いかさま)だ、CGだ」と本気で言い触らす人がいること。

もちろんウクライナも宣伝戦をやっているので全部が全部真実な訳ではないし、実際にエッフェル塔が砲撃されるCG映像なんかを流していた。しかし、現実に起きている殺し合いを「フェイク」と言い切る。それがロシアの兵隊さんを侮辱するって気づいていないだろうか?

以下、本当に「ロシアにもウクライナにも味方する訳ではない」議論をする。

現実に、ロシアはウクライナに攻め込み、命がけの殺し合いをしている。ここでロシアとウクライナのどちらに非があるかは捨象する。国際社会の圧倒的多数派は、ロシアを非とするが、この場合はさておく。

つまり、仮にロシアという国に非があったとしても、国家の命令で戦っている戦闘員には、名誉を受ける特権があるから。もちろん国際法を守って戦うという義務はあり、戦いだからと何をしてもいい訳ではない。だからこそ、「戦いの際に国際法を守った」の一点で、特権がある。

この特権は相互主義で、お互いに認め合わねばらない。ロシア(というよりプーチン)は、ウクライナを悪魔の如く罵っている。しかし、その悪の国家に属している戦闘員に対し、ましてや非戦闘員に対して何をしてもいい訳ではない。
まったく同様に、ウクライナは国際社会の支援を得てロシアを事実上の侵略国と認定し、プーチンのやっていることは違法行為だと概ね認めさせている。それとは別問題で、ロシアという国が悪だからとロシアの戦闘員に対して何をやってもいい訳ではない。

現在、ロシアとウクライナは敵になった。これは誰もが否定できない事実。ここで国際法の根本原則。ロシア人にとってウクライナ人は、ウクライナ人にとってロシア人は、敵になった。しかし、人間でなくなったわけではない。

大事なことなので別の表現で繰り返す。人の世に殺し合いはなくならない。しかし、殺し合いを始めて敵になったとしても、お互いに人間でなくなったわけではない。

さて、「ロシアがウクライナを攻撃している映像なんてフェイク(いかさま)だ」との発言。人間として戦っているロシア兵に対する侮辱であると、気付かない?

今次紛争が始まって以来、私は毎日のように国際法の話を発信している。色々と理由はあるけど、最も単純な理由は、ロシアとウクライナの殺し合い(厳密には戦争ではない)が一つのゲームであり、そのルールが国際法だから。ロシアもウクライナも、中立国も、プレーヤーは全員が国際法に基づいて行動している。ルールがわからないのに、ゲームを理解できる訳がないから。

そもそも、ロシアのウクライナへの侵攻が「戦争」ではなく「紛争(殺し合い)」だと決めるのも、国際法。

私も国際法なんて、学術論文を1本、教養書を4冊書いただけで、国際法自体の専門家ではない。しかし、自分の専門である憲政史に必要な程度には、国際法の知識は身に着けている。そして、あまりにもレベルが低い言論が溢れているので、「国際法に基づいて論じろ」と言わざるを得ない。

以上を理解していたら、「ロシアがウクライナを攻撃している映像なんてフェイク(いかさま)だ」なんて発言、議論参加資格のない素人ならばともかく、学者とか外交官とか専門家なら絶対に言えない発言だと理解できよう。

「国際法は「殺し合い」の掟(ルール)」への5件のフィードバック

  1. 知識が足りない部分を願望で埋めてしまうのでしょうか?
    テレビに出てる人らは何かしら喋らないとお仕事無くなるので…
    知ったかぶりと願望を言い合うので
    そんな番組見てたら
    さらに訳がわからなくなりそうです。

  2. では私も最初に枕詞を書いておきますか。
    「ロシアやプーチンの味方をする訳ではないですが…」

    という冗談はともかく、私は日本語で発信される情報は全然拾っておらず (地デジ移行時にテレビも処分してしまった)、日本の言論人が運営するサイトもここ以外はほとんど見ていないので、日本の知識人たちがどんな議論をしているのか知りませんが、倉山氏の国際法に関する今回の論点はよいと思いました。

    ただし、「超限戦」の今日に、昔出来たヨーロッパの仲間内喧嘩ルールがどの位意味を持つのかよく分からない、というのが率直な感想です。
    軍事力の裏付けがあって初めて国際法が武器として使えるようになるのでは?と私は考えていますが。

    さて、これまでにわか勉強で色々調べた結果、多分これが現状だろうと私が考える事柄を書いておきます。

    ・ウクライナ軍は善戦などしておらず、ロシア軍は着々と軍事作戦を遂行している。
    ・ロシア軍の進軍が遅いのは、ウクライナ軍の抵抗が凄いからではなく、一般市民の犠牲者や社会インフラへのダメージを最小限に抑えるためである。(もしアメリカ軍だったら、初日に都市の電気ガス水道などのインフラを徹底破壊している。)
    ・病院やショッピングセンターなどが時々破壊されるのは、そこにウクライナ軍が戦闘車両や武器弾薬を配備するから。
    ・人道回廊による一般市民の避難を阻止しているのはロシア軍ではなくウクライナ軍である。
    ・ウクライナ軍はロシア軍に完全包囲されて補給を絶たれており、市民を人間の盾として使っている。
    ・制空権は完全にロシア軍が握っている。
    ・NATOのウクライナ浸透は数年前からかなり進んでいた。

    以下は私が参考にしているサイトの一部です。
    主要メディアが垂れ流しているのとは全く違う世界が見えますよ。

    英語は聞き取れないが読むことは出来る、という人たちはどうぞ。
    https://sonar21.com/

    聞き取りもOKな人たちはこちらもどうぞ。
    https://www.youtube.com/channel/UCPxpPT4b4vnDlX0sBGz3r4Q/videos

  3. 以下は私が参考にしているサイトの一部です。
    主要メディアが垂れ流しているのとは全く違う世界が見えますよ。

    日本語が解る方はどうぞ!(≧▽≦)
    自衛隊の陸将・海将・空将が揃い踏みです★

    特番「陸・海・空 軍人から見たロシアのウクライナ侵攻」小川清史元西部方面総監 伊藤俊幸元呉地方総監 小野田治元航空教育集団司令官 防衛問題研究家桜林美佐【チャンネルくらら】 2022年3月17日公開
    https://www.youtube.com/watch?v=YosIU6a9Gs4

  4. リンクどうもありがとうございます。

    救国シンクタンクのあるメンバーに胡散臭さを感じるようになって遠ざかってしまいましたが、チャンネルくららの番組は久しぶりに見ました。

    出演している方々の優秀さは疑いませんが、「アメリカ軍の何とかさんから聞いた」というように、自力で情報収集ができずアメリカ頼みという時点で既に負け確定、と私は判断しました。

    英語で発信されている情報しか私が拾わなくなったのは、まさにこれが理由です。

    主要メディアの報道(ではなく猿芝居)とアメリカのなんとかを基にして展開される議論に耐えられず、40分位までで見るのを止めてしまいました。

    日本の職業軍人の優秀さと限界を垣間見た気がします。

    経済制裁に全面参加せずにあえて一歩引いてプーチンに恩を売っておき後の北方領土返還に繋げる、みたいなしたたかさを日本の政権中枢に期待したけど、まだまだ無理ですかね。

  5. 礼には及びませんよ。私はMoonchildAkiraさんに胡散臭さを感じているので(^^)

    米軍から聞いた話?
    ああ、ウクライナ兵は、アメリカに来て戦略や戦術を学んでいましたものね。同盟を結んでおらずとも、兵士達は繋がりがありますし、手の内も多少は知っています。自分達で教えたんですから。その情報が、同盟関係にある日本の自衛隊に入って来るんでしょ?

    自力で英語の情報を集めることが出来る?
    素晴らしい!(^▽^)

    ですが、英語が解るからと言って、正しい判断を下せるとは限りません。MoonchildAkiraさんのご職業も学歴も、病歴も私は存じませんし、興味もありませんが。英語が堪能なだけで思考判断力に優れるなら、小泉進次郎はもっと優秀な筈です。

    ご心配なさらずとも、英語が堪能な自衛官はいくらでもいますし、くららファミリーにも英語が堪能な学者・言論人・スタッフはいます。

    ちょっと恩を売ったくらいで北方領土が還って来るなら、もうとっくに還って来ているでしょう。国民の血税を、既に3000億円も貢いだんですよ?

    これ以上続けたいなら、ご自身のポケットマネーでプーチンを支援して下さい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA