ユスアドベルムとユスインベロを分けて考えよう

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国際法の授業で「国際法はウェストファリア条約から始まります」の次に習うのが、「国際法って何ですか。ユスアドベルムとユスインベロです」というくらい、基礎中の基礎。
しかし、基礎であって初歩ではないし、難解。しかし、文明国では「この程度のことも知らないで国際政治を語るな」と言われるのが、ユスアドベルムとユスインベロ。
チャンネルくららでおなじみの伊藤提督が、これ以上ないほどユスアドベルムとユスインベロの違いを解説してくれている。
と言っても、この期に及んでプーチンを擁護できる豆腐脳の連中にはそれでも足りないだろうから、大根切りに結論を示す。
ユスアドベルム=その戦いに正当性があるかどうか。
ユスインベロ =その戦い方に正当性があるかどうか。
この二つの基準が国際法。
言っておくが「法」と言っても、国内法のように誰かに強制されるわけではない。
主権国家どうしが、お互いの行動の正当性の基準として使う道具。
今次、烏露紛争に当てはめると?
ユスアドベルム=ロシアのウクライナ侵攻に正当性があるか?
ユスインベロ =ロシアがウクライナでやっていることに正当性があるか?
プーチンとそのプロパガンダを垂れ流す論者の主張を、これに当てはめる。
★ユスアドベルム
(に関するプーチン及び擁護者の主張)
①NATOが約束を破って東方拡大した。
②ウクライナはロシア人を虐殺している。
③ウクライナはネオナチだ。
④ウクライナはディープステートだ。
①~④の後に「だから自衛行動をとる」と続く。
①は1945年にロシア自身が禁止した「予防戦争」。
1914年までなら問題ないが、現在は違法。
②だったら、国連に訴え、その調査を待てばいい。
満洲事変でこれをやった日本を批判してたのは、どこの国か。
なお、「ウクライナ人がモスクワで無差別テロをやった」みたいなことがあり、国連決議を採ってくれば、9.11テロでアフガンのタリバン政権を破壊したアメリカと同じ。
仮にウクライナ政府がロシア人を虐殺しているとしても、手続き上の正当性はない。
満洲事変の時の日本政府でさえ、中華民国に何度も抗議をしている。
これは事実だとしてもユスインベロであり、ユスアドベルムではない。ここをごっちゃにしていること、プーチン擁護論者はわかっているのか?
③これ、本当にロシアの外交官が言ってるらしいじゃん。
これが開戦事由なら、日本の右翼が北方領土に上陸したら、東京にミサイルを撃ち込んで占領していい理屈になる。
そのレベルだから、ロシアは今や同盟国にすら笑い者にされている。
④さすがにプーチンすら言っていない。
これを言う日本人、アタマは大丈夫か?
もちろん、開戦自由にならないのは③と同じ。
国際紛争において、正当性が無い相手だからと何をやってもいい訳ではないし、正当性があるからと何をやってもいい訳ではない。
たとえば、「相手がネオナチだから」と、それだけの理由で虐殺していい訳ではない。「ディープステートだから」と以下略。これは立場を変えて、相手がプーチンの侵略戦争に加担しているロシア人だからと、何をやってもいい訳ではない。
国際法は「お互いに敵になっても人間でなくなったわけではない」を大原則とする。
これを認めないと、戦いは無限大に悲惨となる。だから、「殺し合いにおいても守らねばならない掟がある」と説いたのが、フーゴ―・グロティウス。
以上を踏まえた上でユスインベロ。
プーチンの行動は正当化されるるか。
★ユスインベロ
①正規軍隊による国境突破。
→ユスアドベルムが証明される限り正当。
②民間人への殺人
→原則違法。あるいは犯罪。
 ただし、正当な理由がある限り、正当。
 誤認の場合は、謝罪・賠償・責任者処罰・再発防止を自分で行う。
 復仇として認められる場合もあるが、著しい過剰防衛は許されない。
 正当性の証明は一義的に加害者が行う。
③核兵器の先制使用による恫喝
→意味不明。
 少なくとも、非核国のウクライナ相手に行う理由はありえない。
④原発への先制砲撃。
→人類史上初の行為なので確立した国際法はなく、今回が先例となるだろうが、確実に人道に対する罪。
 つまり、ヒトラーと同じ。
 ロシア政府公式見解「ウクライナが挑発してきた」ならばだが、この時点で100%の犯罪。
(追記 ④と書いた瞬間、ロシアが「やってない!」と国連で主張。そらそうだろうな。)
⑤正規軍隊による占領、領土の一部ないし全部の割譲。
→講和条約の条件となるので、ユスアドベルムに戻る。
 ユスインベロに著しく反している場合、国際社会が認めない場合が多い。
ちなみに、プーチン擁護論者は、ここまで「違法(行為)」と「犯罪」を区別して使ったの、理解しているのだろうか。
わからなければ、お近くの外交官にでもお聞きすればいい。

「ユスアドベルムとユスインベロを分けて考えよう」への4件のフィードバック

  1. 私は国際法は知らないし、プーチン大統領を擁護しているつもりもないし、他の人がどんな議論を展開しているのかも知りませんが、今で起きていることはもっと単純で原始的な弱肉強食の力関係だと見ています。

    ・侵略が正当か不当かとか、国際法がどうかなどは関係なく、アメリカ、中国、ロシアは自分たちの好き勝手に行動する。
    ・自分の縄張りを侵されそうになれば本気になる。
    ・アメリカがキューバ危機で本気だったように、プーチンもウクライナで本気なのがよく分かる。
    ・核使用も辞さずというのも本気でしょう。
    ・約束に反してNATOが東方拡大してきたのは事実だし、ソ連崩壊後のロシアが西側にめちゃくちゃにされたのも事実。プーチンがNATOや西側を受け入れないのは至極当然。
    ・これがプーチン擁護と解釈されるなら別にそれでもよい。私は現実を見て、相手の立場にも立って考えてみているだけなので。
    ・西側の主要メディアも今やロシアのメディアと同じ位腐敗しており、もはや報道機関ではない。

    ウクライナに関しては、悪いけどゼレンスキーの大失敗でしょうね。
    ロシアや西側のどちらにも支配されずに、中立的な緩衝地帯として繁栄するような政策はあったと思いますが、NATOや西側に媚びを売ってプーチンを本気で怒らせてしまった。
    とても正気とは思えません。CIAの息でもかかっているのかと勘ぐりたくなります。
    戦争屋は大喜びで、危機を煽って大儲けするでしょうけど、アメリカもNATOも本気でウクライナを助けることはまずないでしょう。

    日本に関しては、プーチンが信用できる人物であろうがなかろうが、約束は守らせる、守っておいた方がよい、破ったら大損をする、と彼に思わせるような強い国にならねばなりません。
    我々にとってはこちらの方が課題ですね。

  2. >④ウクライナはディープステートだ。
    この方が言ってるのだから間違いないですよ(すっとぼけ)↓
    三上丈晴 (月刊ムー編集長)
    https://www.youtube.com/watch?v=zgj0nIrQXYA

    でも、私も含めこのレベルの話を本当だと信じてしまう可能性があるのですから恐ろしいです。

  3. 話は少しズレますが、今チャンネルくららの
    グレンコ・アンドリー氏の動画を改めて見直しています

    この時は私も、今程の危機感は持っていませんでした
    そして倉山氏のこの言葉

    「安倍総理は遊ばれている」

    多分当時の日本人は、解っていなかっただろうし
    今でも可笑しい事を言っている人が多いこと

    ある面チャイナより、遥かに上手く騙されていたと
    感じる次第です

    ソ連時代と比べて、相当手薄になっている北海道防衛は
    速く手を打たないとウクライナと同じ轍を踏みますね

  4. ユスアドベルムとユスインベロ、恥ずかしながら初めて聞きました。もっと深く知識を取り入れようと思います。
     今回の出来事でつくづく思い知ったのは、平事と
    軍事はまさに紙一重だということ。自民党などというただの官僚機構の飼育係を闇雲に国家運営の長に据えてきたことがどんなに無謀だったか、ということです。
     常識的な解釈で、凄惨な戦争被害から人間の命を守ろう、と人類が国境を超えて合意したのがウェストファリア体制。そして、かつての日本はこの条文を律儀に遵守して時の大国ロシアに戦争で勝利しました。そんな過去の業績をただの武勇伝にしてはいけませんね。

     朝の一見平和な通勤電車の中で凶器を振り翳して
    罪もない人々を傷つける悪漢、いくら周囲が説得しようとも、そんな言葉は血の上った強靭には通用しない。被害はますます増長する。そこで、見兼ねた冷静な判断ができる観察者は非常停止ボタンを押して車掌に通報。然るべき役職の人物に取り押さえられ、悪漢は裁判において法の裁きを受ける。

     国際法を律儀に守ってきた我が国、せっかく人類の築き上げてきた文明の成果、己の無知からそれらを台無しにしないように、ユスアドベルムとユスインベロ、そんな基本的なことがが普通に街なかで会話されているような日本であれば、未来は明るいと思います。

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