現在では昭和十六年十二月八日の開戦を正しかったと評する人はいまい。少なくとも負けた、という点で政府当局者の責任は否定できない。ただし、ソ連を警戒しながら、支那事変を抱え、背後から支援する英国との対立が続く中で、表面上中立を保ち国力を蓄えていた米国から挑発され続けた中で、どのような選択肢があったのか、やむをえない決断であったという面はある。
ではここに至る過程でどこに原因があったのか。昭和六年九月十八日から昭和八年五月三十一日までの満洲事変である。この事変において、日本は軍事的には全戦全勝であった。しかし、外交的には大失敗し、国際連盟脱退に追い込まれた。細かい立証は昔、論文で散々書いたので、興味がある方はご参照を。何が問題かをかいつまんで言うと、国際連盟脱退（正式には二年後）には何の弁護の余地もないことである。
一、軍事的に勝ちながら、外交で負けた。国際宣伝戦においては泣きたくなる。
二、別に国際連盟から追い出された訳ではないのに、勝手に出ていった。侵略国と認定されて除名されたソ連とは違うにも関わらず。というか、当時の政府当局者、リットン報告書をまじめに読んだのだろうか。
三、国際法的に一方的に正しいのにも関わらず、国際社会にそれを説得できなかった。（マニア向けに言っとくと、幣原は最初と最後はまとも。芳沢は盛り返した。）
ちなみに満洲に主権を主張するなら、同地で起きた不祥事はすべて蒋介石政権の責任で「謝罪・賠償・責任者処罰・再発防止」を行わねばならないはずだが、日本の外交史家でこれを主張する人は寡聞にして聞かない。
四、事変勃発以前の外務省の怠慢。交戦相手の張学良軍閥など今の金正日とやっていることはまったく同じである。「抗議をすると相手が困るから」と、何もしなかった。日中友好が大事だったらしい。
さて、この時の首相と外相は誰でしょう？昭和十六年の東条首相や東郷外相には汗牛充棟な批評があるが、斎藤実首相と内田康哉外相の失態についての批判はあまり聞かない。
昭和八年の大日本帝国は、東アジアの大国である。米国もソ連も日本相手に戦争をする意思も能力もないのである。中華民国に至っては軍隊の数が多いだけで、鎧袖一触できてしまったのである。
それにも関わらず、常任理事国を務める国際連盟から脱退してしまったのである。逆に今の日本が中華人民共和国を国際連合から追い出すなど、思いもよるまい。それと同じことである。
これを失態と言わずして何と言おうか。（この項、続く）
たしかにリットン報告書はある程度日本に許容される内容のものです。
国連を脱退するとはよほど日本はなぜゆねに満州国に執念を持っていたのか？
そこが問題と思います。
お初にお目にかかります。今後ともよろしくお願いします。
ちなみに満「洲」が満「州」になると意味が変わりますので、お気をつけください。どちらにしても立場性は現れますが。
リットン報告書はある程度どころか、ほぼ全面的に日本の主張を認めています。それどころか蒋介石政権をファシスト国家呼ばわりしています。「党が政府に優先する」という記述もあります。単に「自衛とは言えない」「満洲国は承認できない」と述べているだけです。
私にはなぜこれで脱退せねばならないのか、さっぱりわからない内容です。
＞倉山先生
「自衛とは言えない」「満洲国は承認できない」この２点が日本としてはどうしても引けない点だったとは言えないでしょうか。
たしかに脱退することはないと思いますが…
宛新田ひろし様
その通りです。あと些細な点で反論はしていましたが。
居座っていれば良かったのです。
ちなみに国際連盟に満洲国から関東軍を追い出す力はありません。
>倉山先生
質問が二点あります。
まず一点目は、国際連盟に満洲国から関東軍を追い出す力はないということは、当時の国際連盟に軍事制裁能力が無かったからという認識でよろしいでしょうか？
そして２点目は、もし仮に国際連盟を脱退せずに満洲国に関東軍を居座らせた場合、国際社会はどのような反応を見せたと思われますか？
倉山先生の見解をお聞かせください。
回答一 その認識で良いです。国際連盟にも英国にも米国にもソ連にもありません。英米が満洲問題で軍事同盟を結んで、中華民国の為に日本と戦う、などありえないですから。スターリンだってできないから、ああいう反応になった訳で。
回答二 エチオピア紛争のイタリアと冬戦争のソ連への対応が参考になるでしょう。侵略国と認定するくらいが関の山でしょう。経済制裁にも踏み切れなかったでしょうね。F・ローズベルトすらギリギリまで引き伸ばしたのですから。
結論。当時の日本人政府当局者は意味不明な脅迫観念にさいなまれていた。というか、内田外相とか斎藤首相って、国際政治のイロハがわかっていないのである。連盟への敵愾心を煽りまくっていた朝日新聞と同程度である。この人たちが専門家であるとの前提がおかしいのである。
あえて挑発的な書き方をしましょう。所詮、上司の顔色と組織の論理だけで出世したような小役人に政治はできない。
日本が最善を尽くしても
中国軍国主義の暴走は支那のせい。
日本がコミンテルン排除しても
中国のコミンテルンは、日貨排斥坑日テロで暴走。
越南で人権侵害と自由を奪い、博愛の精神が欠如した軍国主義フランス。
インドで無抵抗非暴力のインド人を武力弾圧する法の精神を理解していないファシズムのイギリス
先住民族をゲットーに隔離し、黒人に公民権認めない人種差別国家アメリカ。
日本の周りが悪く、日本に間違いは無い。
自由と正義の枢軸国が、悪の連合に負けた。
戦争の勝ち負けは、正義に関係ない。
日本の正義に逆らった連合国は反省するべき。